中国:政府当局者、もはや経済をコントロールできない状況か(2)

中国の政府当局者は、国内経済の動向がも はや自分たちの考え通りにならなくなっている現状に気付きつつあるようだ。

工場建設や不動産プロジェクトへ過剰投資を抑制する当局者の取り組みに もかかわらず、中国の国内総生産(GDP)成長率は10年ぶりの高水準。同国 政府は差し当たりの問題として、過熱した成長が余剰設備や資産バブルを助長 し、米国を初めとする貿易相手国との関係を悪化させることに懸念を抱いてい る。

米モルガン・スタンレーのチーフ・グローバルエコノミスト、スティーブ ン・ローチ氏は「中国の成長モデルの不均衡さは極端な状態になり、コントロ ールを失うリスクにさらされているようだ」と指摘。「中国の経済ブームが長引 けば長引くほど、危険性の高い結末の回避は難しくなる」と語った。

危険性の高い結末には、銀行ローンのデフォルト(債務不履行)やデフレ そして資産価値の急低下が含まれる可能性がある。こうしたハードランディン グは、国内の社会的不安が強まるリスクを高めるほか、韓国や台湾など隣国・ 地域にとっては輸出市場を失う可能性を意味する。

中国の景気失速のリスクは高まっていると言うリーマン・ブラザーズ・ホ ールディングスのアジア担当シニアエコノミスト、ロバート・サバラマン氏は、 7月28日のインタビューで「中国経済が急減速する確率は3割強に高まったと みている」と語った。

高成長と抑制策

中国の4-6月期の国内総生産(GDP)は前年同期比11.3%増と、GD Pの規模が現在の4分の1だった1994年以来の高成長を記録。6月の鉱工業生 産の伸び率は過去最高の19.5%だった(モルガン・スタンレー調べ)。

中国政府はこれまで、さまざまな景気抑制策を試してきた。人民銀は昨年 7月、米国からの圧力がかかるなか、人民元のドル・ペッグ(連動)制を廃止。 これまでに貸出・預金金利や預金準備率の引き上げも数回実施された。

米ロス・キャピタル・パートナーズのドン・ストラスハイム副会長は「中 国は異常に速い景気拡大ペースを抑制する方針を示しているが、実際に抑制さ れている様子は見られない」と語る。

モルガン・スタンレーによると、中国の住宅建設は前年比20%のペースで 拡大しており、今後2年以内に大規模な供給過剰に陥る恐れがある。銀行の積 極的な融資や外国資本の流入を背景に、上海総合株価指数は今年これまでに 45%上昇した。

一方で、中国政府が最終的に景気をコントロールするのは可能だとの見方 もある。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は7月27日、同国のソ ブリン格付けを引き上げるとともに「国内成長率をより持続可能な水準に引き 下げる政府の取り組みは今後も続く」との見通しを示した。

それでも、国家発展改革委員会によると、7-9月期の成長率は、10.9% だった1-6月期とほぼ変わらない水準になる見込みだ。国内消費てこ入れの 取り組みもまだ実を結んでいない。米国際経済研究所(IIE)のシニアフェ ロー、ニコラス・ラーディ氏によると、中国のGDPに占める家計支出の割合 は38%と、世界でも最低水準の部類だ。

クレディ・スイス・グループのアジア担当チーフエコノミストの陶冬氏(香 港在)は、これまでの融資抑制策の効果は「水があふれているプールからスプ ーン一杯の水をかき出す程度」にとどまっていると指摘する。

人民元建て融資残高(6月末現在)は21兆5000億元(約310兆円)と、 前年比15.2%増加。1-6月期の元建て新規融資は2兆1800億元と、人民銀の 今年1年間の目標(2兆5000億元)に迫る水準だった。

ムーディーズ・インベスターズ・サービシズによると、中国の銀行が抱え る不良債権は1兆3000億元で、帳簿に記載された額よりも8%多いという。