ゼロ金利解除の次の一手はいつか、2000年の二の舞避けられるか=解説

日本銀行が14日、5年4カ月ぶりにゼロ 金利政策を解除した。1999年2月に始めた1回目のゼロ金利を解除したのが 2000年8月。IT(情報技術)バブル崩壊による世界的な景気の失速で、半年 後の2001年3月、日銀はそれまで否定してきた量的緩和政策の実施に追い込ま れた。今回も米経済の失速懸念がくすぶる中、日銀は二の舞を避けることができ るのか。

今回のゼロ金利解除は、日銀が昨年10月の展望リポートで量的緩和解除後 のプロセスについて「極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済・物価情勢 に見合った金利水準に調整していく」と明記した時点からの既定路線だった。市 場関係者はこのとき、日銀のメッセージを気にもとめなかったが、量的緩和が今 年3月、予想より早く解除された段階で、ようやく日銀の本気を悟った。

量的緩和解除に続き、ゼロ金利解除も予想の中では最短のタイミングで行わ れた。これを予感させたのは、福井俊彦総裁が先月20日の講演で発した「早め に、小刻みに、ゆっくりと政策対応していく」という発言。その後、5月の連休 後に急落した株価が反発したことに加え、3日発表された日銀企業短期経済観測 調査(短観)で、設備投資計画が予想を上回ったことが決め手となった。

追加利上げはいつか

次の一手を測る上で、福井俊彦総裁のブルームバーグ・ニュースとのインタ ビュー(6月1日配信)が参考になる。「最初のステップが早ければ、2回目以 降の判断にはむしろ幅が出てくると考えるのが普通だ」、「ゼロ金利からスター トして金利を上げていくときは、1ステップ踏んだら、金利引き上げの重みが企 業、あるいは景気全体にとってどれくらいのものなのか、事後の経済の動きの中 できちんと測りながら、次のステップを踏まなければならない」。

追加利上げについて、市場が現在織り込んでいる「今年度中にあと1回、多 くて2回あるかどうか」という見方に対して、政策委員の多くはそれほど違和感 がない、と口をそろえる。年内で言えばもう1回あるかどうか、といったところ だが、これはもちろん、今後の経済・物価情勢次第で変わってくる。実際、エコ ノミストの間では、景気の先行きについて見方が分かれている。

「実質金利は大幅なマイナスで金融緩和が続くので、設備投資が過熱化する リスクは依然高い」(JPモルガン証券の菅野雅明調査部長)。「秋口から米経 済の減速が鮮明化するため日銀はしばらく利上げを中断する」(BNPパリバ証 券の河野龍太郎チーフエコノミスト)。景気が日銀の想定から上振れれば利上げ ペースは速まるし、不透明感が強まれば次の利上げは当分お預けとなる。

米経済の失速リスク

ある日銀幹部はゼロ金利解除に先立ち、米経済がインフレと景気後退が同時 進行するスタグフレーションに陥る可能性について、3月に示した「第2の柱」 のリスクに相当する、という見方を示していた。日銀は量的緩和解除と同時に公 表した新しい金融政策の枠組みで、「発生の確率は必ずしも大きくないものの、 発生した場合は経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因」を点 検すると表明した。2000年8月のゼロ金利解除の反省を踏まえた考え方だ。

設備投資の過熱のリスクについては、実現してもさほど大きな影響はない、 というのがこの幹部の見方だった。両方のリスクをてんびんにかければ、もう少 し情勢を見守るという選択肢はあり得たし、9人の政策委員にとって、下振れリ スクを頭の片隅に抱えながらの決定だったはず。最終的に彼らの背中を押したの は、万が一、米経済失速という下振れリスクが顕在化しても、日本経済は2000 -2001年当時のようにぜい弱ではない、という確信だったに違いない。

「村上ファンド」問題の余震が続いており、福井総裁が辞任に追い込まれる のではないか、といった憶測が絶えない。しかし、日銀総裁が負うべき責任は、 物価安定の下で持続的な成長が実現するかどうか、という結果に対してであり、 それを見極めずに辞めるのは、それこそ無責任とのそしりを受けかねない。

すべては解除後の経済情勢の行方に

日銀が2001年3月、さんざん否定してきた量的緩和政策に踏み切ったの は、当時の速水優総裁が政府の反対を押し切ってゼロ金利解除を強行した後、見 通しに反して景気が失速したことに対する責任を逃れるためだった、という見方 がいまだに市場関係者の間では根強い。日銀が今回も見通しを誤り、景気が失速 して再びゼロ金利に舞い戻るようなことになれば、福井総裁は結果責任を取らざ るを得ないだろう。

逆に、日銀の見通しが正しく、今後も息の長い景気回復が続けば、「村上フ ァンド」問題で傷ついた日銀の信認はいずれ回復し、福井総裁自身の汚名を雪 (そそ)ぐことにもつながる。すべては、今後の経済情勢・物価情勢にかかって いると言ってよい。

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