【経済コラム】米GM、切り札はトヨタとの提携か-D・レビン(2)

米ゼネラル・モーターズ(GM)のリック・ ワゴナー最高経営責任者(CEO)は、時間も選択肢も残り少なく苦境に立た されている。

影響力の大きな株主から世界的な提携の検討を求められたワゴナーCE Oは、自分の仕事を奪われかねない状況にある。こんな窮地に置かれたワゴナ ーCEOは、自動車業界の勝ち組とされるトヨタ自動車による救済について少 なくとも検討するかもしれないと考えられる。

ワゴナーCEOは表向き、仏ルノー・日産自動車連合への参加を求めるG Mの大株主カーク・カーコリアン氏の提案を検討することに合意したが、実際 のところ、同CEOら経営陣は慎重な姿勢で、恐らくメリットよりもデメリッ トの方が多いと主張してくるだろう。同CEOが反対する最大の理由は、日 産・ルノー連合がGMに20%出資した後、経営に大きな影響力を及ぼす可能 性があり、自らの再建計画の現実的価値を失わせてしまいかねないことにある。

ルノー・日産連合とGMとの提携は、経営再建の専門家として高く評価さ れるカルロス・ゴーン氏が2社を率いているだけに、表面的には悪い考えとは 言えない。ワゴナーCEOは、昨年発表した自らの戦略について、時間をかけ れば確実に成果を上げると説得することは難しい。労組からは多少の譲歩を引 き出したが、数字は依然不透明だ。長期にわたりGMに注目している人々は、 ますます疑念を強めており、ライバル企業や株主、取引先、金融機関も疑問視 している。

駆け引き

ワゴナー氏がこの駆け引きを続けるには、ゴーン氏に代わる新たな創造的 選択肢を見いだす必要がある。一つの可能性は、トヨタ自動車との戦略的提携 だ。トヨタは製造技術やビジネスの洞察力などの面で自動車業界の世界的リー ダーと認められており、売上高ナンバーワンの座をGMから奪うのも近いとさ れている。

ワゴナーCEOなら容易にトヨタの張富士夫会長に連絡し、「張さん、困 っているので助けてほしい。ゴーン氏を阻止するため当社との何らかの提携案 を検討してもらえないだろうか」と聞くことができよう。トヨタに関する書籍 を執筆したミシガン大学のジェフ・ライカー教授(工学)は、トヨタはこうし た要請を受ければ、「検討するはずだ」と指摘する。

トヨタにとっては友好的なベースでGMに15-20%出資するのは比較的 安い買い物だし、日産を阻止するには十分な規模だ。この程度の出資では、G Mが抱える多額の年金債務などの問題にトヨタがとらわれることはなく、米反 トラスト法(独禁法)当局の審査も通るだろう。GMはトヨタに米国の遊休工 場を提供する可能性もある。トヨタの株式時価総額は1893億ドルに対し、G Mは167億ドルだ。

トヨタとGM

大型のM&A(企業の合併・買収)を避けているトヨタはすでに、GMと 小規模なプロジェクトで協力しているほか、GMが保有していた富士重工業株 を取得している。ただGMには問題点が相当ある。米国では労使問題や、不透 明な会計処理をめぐる政府の調査、市場シェアの低下、ジャンク級(投機級) の格付け、経営の肥大化といった問題に見舞われている。

しかしトヨタにとっては、万が一GMが経営破たんすれば、米国の消費者 や政治家から激しい反発が予想されるため、同社との提携はこうした不安に対 する予防措置として役立つかもしれない。トヨタはまた、GMとゴーン氏との 提携が大変な市場競争を招く可能性もあるため、守りの観点からこれを阻止す る価値を考える必要がある。

トヨタと関係会社は2010年までに販売台数を1030万台と、06年度の885 万台から拡大する計画だ。日産・ルノー連合の05年販売台数は613万台、G Mの05年販売台数は917万台だった。

ワゴナーCEOはゴーン氏と提携するのか否かをどう検討していくかが 極めて重要になってくるだろう。カーコリアン氏とアドバイザーのジェロー ム・ヨーク氏は、検討は取締役会の小委員会の場でコンサルティング会社の支 援を受けながら行われるべきだと考えている。

カーコリアン氏と投資会社トラシンダはまた、もう一つの可能性として、 ヨーク氏がひそかに進めている独自調査にスポットライトを当てようとする かもしれない。こうした調査は法的な位置付けなどはないが、マスコミや投資 家の間に独り歩きする可能性があり、GMの経営陣は守勢に立たざるを得なく なるだろう。

カーコリアン氏とトラシンダはこれまでのところ、自分たちに共感してい る大口の機関投資家の名前を特定していない。だが、時間が経過してもGMの 業績に十分な改善が見られなければ、投資家はワゴナーCEOの計画が成功す る裏付けを要求してくるだろう。

すぐに報告すべき良いニュースがないのなら、ワゴナーCEOはトヨタの 張会長に電話すべきだろう。トヨタは思いがけない白馬の騎士になるかもしれ ないし、最悪でも「ノー」と言われるだけなのだから。 (ドロン・レビン)

(ドロン・レビン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)