投資ファンド:M&A頭打ち、再生案件一巡-御三家「資金回収」も(3)

日本企業関連のM&A(合併・買収)で、投資 ファンドが関与した案件が頭打ちになっている。上半期は件数、全体に占める比率 ともに減少した。日本市場でのM&A規模自体は拡大が続いているが、ファンドが 得意とする企業の再生案件が一巡しており、実績が伸びていない。

M&A専門誌発行のレコフによると、プライベートエクイティファンド(PE) を中心とする投資ファンドが携わったM&Aは1-6月で161件、全体の11%だっ た。前年同期比で2件、2ポイント減った。この比率は2004年に14%に跳ね上がり、 2005年も13%と高水準が続いた。2003年は8.6%、2002年は2.4%だった。

投資ファンド関与のM&Aが減っているのは、企業のリストラに伴うM&Aが 2005年までで峠を越えたのが背景。日本の景気も回復して経営者は自信を取り戻し ており、追加リストラの実施も少なくなっている。

過去に投資した案件の資金回収(イグジット)も始まっている。投資ファンド 御三家(ユニゾン・キャピタル、MKS、アドバンテッジ)の1社ユニゾンは3日、 2003年5月に取得した東ハト全株式53%を山崎製パンに売却すると発表した。

学生援護会(東京・新宿)とインテリジェンスは1日に合併した。学生援護会 株の9割程度を保有していた米投資ファンド最大手カーライル・グループはこれに 先立ち持ち株を一部売却、投資を回収している。

独立系M&Aアドバイザリーファーム(助言会社)GCAの福谷尚久シニアデ ィレクターは、投資ファンド関与案件の減少について「再生案件一巡のほか、小規 模なPEの設立が増えて主要PEが手がけにくい案件を獲得する動きが出ており、 こうした案件が表面化しないのも要因ではないか」と指摘している。

「キャッシュマウンテン」

投資ファンドの代名詞にもなった村上ファンド元代表の村上世彰被告は、逮捕 直前の6月5日の会見で、阪神電気鉄道の保有株売却により「うちのファンド自体 は情けないことにキャッシュマウンテンになってしまう」と述べた。

プロ中のプロを自認した村上被告がインサイダー取引違反という初歩的なミス を犯したのも、資金規模に比べて投資案件が少なく収益確保を焦ったのが背景との 見方もある。

カーライルは7日、日本での買収ファンド第2弾の募集を完了して国内最大規 模となる2156億円が集まったと発表した。日本の代表者の安達保氏は、競争激化や 各種制度改革など環境が大きく変化して企業経営者はより事業構造変革を迫られる と前置きして「PEが変革において果たしうる役割はこれまで以上に重要になると 考えている」とコメントした。

とはいえ、日本経済が確実に回復を続けるなかで企業経営者は前向きの構造改 革に傾斜している。実際に再生案件も減っており、投資ファンドが関与できるM& A案件はしばらく大幅には増えそうにはない。拡大してきたM&Aでの投資ファン ドの影響力はいったん沈静化している。

「キャッシュマウンテン」(資金過多)状態の投資ファンドは、ファンド同士 や事業会社とコンソーシアム(連合体)を組むといった方法でM&A案件に取り組 んでいくことになりそうだ。投資ファンド間の競争が激しくなることは、事業会社 にとってはより良質のM&Aを享受できることにつながる。

金額・件数ともに過去最高、日本企業目立つ

レコフ集計によると、1-6月合計のM&A総額は7兆3163億円と前年同期比 で15%増加、案件は1409件と同9.8%増加していずれも過去最高になった。投資フ ァンド関与の案件が減るなか、相対的に国内企業が主体となって海外企業を買収す る案件(IN-OUT)が増えている。

金額トップはソフトバンクによるボーダフォン日本法人の買収(1兆9172億円)、 2位は東芝による米ウエスチングハウス買収(6210億円)、3位は日本板硝子によ る英ピルキントン買収(6160億円)、続いて阪急ホールディングスによる阪神電気 鉄道買収、三井住友フィナンシャルグループによるSMBCフレンド証券買収とな っている。

阪神電株は、前日比5円(0.6%)安の819円(午後1時21分)。