【米経済コラム】ルノー・日産との提携に賭ける価値あり-D・レビン

自動車最大手、米ゼネラル・モーターズ(G M)の株主は、経営陣の言い訳に耳を貸し、結果が出るのを辛抱強く待ち続け た。資産家カーク・カーコリアン氏の投資会社トラシンダが示したGMと仏ル ノー・日産自動車との提案に、株主が飛び付くのも容易に理解できる。

GMの株価は、9.9%の株を保有するトラシンダが6月30日明らかにした 提案を受け、その日8.6%上昇。昨年106億ドル(約1兆2100億円)の赤字を 計上したGMと比べれば、ルノーと日産自は好調を維持している。

カーコリアン氏とトラシンダは、GMのリック・ワゴナー最高経営責任者 (CEO)によるリストラ進展を待つことに疲れてしまった。20年余りにわた り米国での市場シェアが低下するのを目の当たりにしながら、GMは工場を閉 鎖し、投資の償却を進めた。今年もこれまでに、GMの米自動車販売台数は13% 減となり、市場シェアは1980年代初頭のおよそ半分の約24%に落ち込んだ。

提携によりGMは、日産自の小型車技術の活用が可能となる。ルノーと日 産自は、GMが行った中国とインドへの有望な投資に関心を示すかもしれない。 だがもっと重要なのは、ルノー、日産自両社のCEOを務め、収益目標とそれ を達成できなければ退任すると公言するせっかちで行動派のカルロス・ゴーン 氏の力を得られることだ。

必要な力

GMはなぜ、単にゴーン氏を雇い入れないのか?(フォードはそれを試み たが、ゴーン氏に断られた。)GMのようなずうたいが大きく動きが悪い企業で は、多くの協力部隊がいなければ、ゴーン氏はリーダーとして失敗する可能性 が高い。ゴーン氏による日産自の改革は、ルノーが日産自の株式44%を保有し て初めて可能となった。

社債価格が急落し、一部の業界関係者が破たんの可能性すら指摘するなか でも、GM首脳陣は新たな救世主が必要だとは考えていない。ワゴナーCEO は6月26日の記者会見で、業績は「非常に迅速」に回復していると述べた。

トラシンダによる支援を受ければ、ルノーと日産自は少なくともGM株の 30%を握ることができる。ワゴナーCEOと同CEOを支持する取締役には選 択肢が2つある。提案を受け入れ素早く提携を結ぶか、あるいはより良いアイ デアを提示することだ。もし、それがあればの話だが。

残念ながらGMとワゴナーCEOはこれまで、外国企業との提携では大し た成果を上げていない。イタリアのフィアットとの5年間に及ぶ提携は、解消 するためにGMが15億ユーロ(約2200億円)を支払うというさんざんな結末 となった。

確かにワゴナーCEOは、リストラを進めるため全米自動車労組(UAW) からある程度の譲歩は引き出したが、リストラのペースは依然としてゆっくり だ。ワゴナーCEOは、ストライキを回避するため、そうすることが必要だと している。

株価水準

GMの株価は現在、トラシンダがGMへの17億ドル出資を発表した2005 年5月の水準とほぼ同じだ。だが、これはルノー・日産自との提携、もしくは 別の対応策への期待を織り込んだもので、もしワゴナーCEOら取締役会が何 もしなければ、株価は現在の約30ドルから20ドルに向けて下落する可能性が 高い。

89歳のカーコリアン氏とトラシンダが、GM取締役会が提案への反対を表 明した場合、どう出るのかは全く分からないが、過去を振り返れば、カーコリ アン氏は受け身とならざるを得ないだろう。

かつて米クライスラーの筆頭株主だったカーコリアン氏は、1995年にはク ライスラーの上場廃止を訴えた。独ダイムラーベンツとの合併に賛成した同氏 は、その後、ダイムラークライスラーを相手取り訴訟を起こしたが敗訴。株主 は「対等合併」だと信じ込まされ、欺かれたというのが同氏の主張だった。

こうした混乱は、今回はないはずだ。ルノーと日産自はしっかりしており、 対照的にGMは資金難に苦しんでいる。GM取締役会は状況を注意深く考慮し、 ワゴナーCEOが対応策を打ち出すことができるよう時間稼ぎに出る公算があ るのは疑いようがない。GMの未来が数週間以内により明確になると想像する ことは難しい。 (ドロン・レビン)

(ドロン・レビン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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