5月FOMC議事録:次回金利決定で確信持てず-市場関係者コメント

米連邦準備制度理事会(FRB)が31日 に公開した連邦公開市場委員会(FOMC、5月10日開催)議事録によると、 メンバーはフェデラルファンド(FF)金利誘導目標をさらにどの程度引き上 げるべきかについて確信が持てなかった一方、「やっかいな」インフレ期待は 後退する可能性があると判断していた。市場関係者らのコメントは以下の通り。

◎米リーマン・ブラザーズの米国担当チーフエコノミスト、イーサン・ハリス 氏:

「FOMCはまだ今後の方向性についてはっきりしていない。債券市場に若 干の動揺を与えかねないが、この議事録のなかで鍵を握っているのは、FOMC がどの程度利上げを実施するのか、その上げ幅に触れている部分だ。FOMCは その幅について、利上げ休止から0.5ポイントの引き上げまで言及している。F OMCが利上げ幅についてこのような選択肢を考えていたとは誰も想像していな かっただろう。おそらく市場関係者の間では利上げ休止か25ベーシスポイント の引き上げを考えていたとみている。0.5ポイントのFF金利引き上げまで協議 していたという事実は、周囲が予想していたよりもよりタカ派だと思っている」

「米連邦準備制度にとっては非常に複雑な状況のなかで金融政策が運営され ている。連邦準備制度は、景気減速をどの程度真剣に受け止めるのかはっきりし ていない」

「連邦準備制度はインフレ加速をどの程度真剣に受け止めるのかはっきりと していない」

◎米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のマネジン グディレクター、ポール・マカリー氏: ○債券市場について:

「5月10日のFOMC会合以来、債券市場にはかなり根本的な変化があっ たと思われる」

「同会合後に、世界の市場ではリスクからの逃避が起こり、米国債相場は 幾分回復した」

○議事録について:

「議事録は一段の引き締めの脅威を示唆している」

「経済見通しは弱めの内容だ」

「今回の議事録のなかで最もタカ(物価)派的な部分は、インフレ連動米 国債(TIPS)市場がインフレ期待の動向を示唆していると仮定した上で、 インフレ期待に注目している点だ」

当局は「反応を示すものとして、TIPS市場の役割をより重視するよう になっている」

○市場の反応について:

「米国債市場が引き締め観測を歓迎しているかどうかは分からない」

「債券市場にとって、フェデラルファンド(FF)金利5.25%を歓迎する のは難しい」

「イールドカーブ(利回り曲線)には、それを吸収するだけのリスクプレ ミアム(上乗せ金利)は織り込まれていない。従って、債券市場の反応は関連 市場の動きに対する反応だと思われる」

「米連邦準備制度が先を見通し、将来起こるであろうことの予想に基づい て現時点で政策を決定するのは賢明なことだと思う」

「これは、金融当局にとっても市場にとっても、より難しいことだ」

○追加利上げの可能性を計るために注目すべき指標について:

当局の行動を予想する上での重要指標は住宅価格と雇用だが、それに加え て「恐らく最も重要なのは、新興市場(エマージング・マーケット)株の動向 だろう」

◎クレディ・スイス・ホールディングスUSAの金利戦略責任者、ドミニク・コ ンスタム氏:

「議事録は、4月にバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が議 会証言で利上げ休止を示唆したころによって、失われた当局への信認を取り戻 すための手段の1つとなっている」

「市場は、毎回のFOMCで利上げをする現在の政策を信頼していない。 それを続けることは不可能だ。現時点では、市場が金融当局を先導している。 連邦準備制度かバーナンキ議長が市場を先導する構図が望ましい」

「FOMCメンバーはインフレについての協議に相当な時間を費やしたよ うだ。このことから、当局はインフレについてより大きく懸念していると類推 することができる」

「より重要なのは、信頼性の欠如という点で市場が提起している懸念に対 して、当局が明らかに反応していることだ。メンバーらは、インフレリスクに ついて極めて詳細に協議し、インフレをどう見るかについて、すべての点をも れなく検討している」

「バーナンキ議長の証言と利上げ休止の可能性に対する市場の反応を振り 返って、FOMCメンバーは若干驚いていたように見受けられる」

この日公表された議事録のなかで、「メンバーは議長発言の意味合いを弱め、 当初のダメージを修復しようとしている」

◎ニューヨーク大学スターン経営大学院のロバート・エングル教授(金融学): ○インフレについて:

「将来のインフレリスクが存在する。これは実際に、数年前から目にして きたものだ。米国は多額の財政赤字や経常赤字を抱えている。エネルギー価格 の高騰は比較的最近のことだが、以前から到来を予想していたインフレはまだ 来ていない」

「金融市場はこうした長期的リスクをよそに、ボラティリティ(変動性) が極めて低い状態で進んでいる。これはリスクが短期的ではなく、長期的なも のだからだと思う」

「今問われているのは、長期的なものが短期的なものになるのがいつかと いう問題であり、われわれが今見ているのはこれだと思う」

○米金融政策について:

「当局も同じ理由から、追加利上げの是非を決めかねている。こうしたリ スクが短期的なものか、依然として遠くにあるものか分からない」

○株式市場のリスクについて:

「投資家は市場があまり動かないと感じているし、これまでのところ市場 は動いていない。このため、投資家は価値増大のための方法に注目している。 ヘッジファンドが普及し、投資家が商品などに投資している理由はこれだ」

「そのニュースが市場を大きく動かし始めれば、レバレッジをかけたすべ てのポジションが大きく動くと推論できる」

◎RBSグリニッチ・キャピタル・マーケッツの主任エコノミスト、スティーブ ン・スタンレー氏:

議事録の中には、市場「参加者の誰もがよりどころとする部分が何かしら ある」

「FOMC内部の見解の幅は、市場の見解の幅と一致している。景気が減 速すると思う人も多いし、非常に懸念している人も多い」

◎三菱東京UFJ銀行の勝藤史郎チーフエコノミスト(ニューヨーク在勤): ○議事録について:

「議事録からは経済よりもインフレリスクのほうに重きが置かれているとの 印象を受けた。経済はシナリオ通りでダウンサイドの材料ではないと判断してい るようだ」

「5月のFOMC声明で景気とインフレの両にらみから、物価一本に絞られ ていたことからも、インフレ議論に重点が置かれていることが示唆された。今回 の議事録でそのことを確認した」

「住宅市場は予想以上の減速材料ととらえられており、その点には意外感が あった。住宅着工や販売などの指標は落ち方も大きいが、月間の数字はかなり振 れが大きいので、傾向をつかみにくい」

○インフレについて:

「5月のFOMC以降に発表された、消費者物価指数(CPI)や個人消費 支出(PCE)などのインフレ指標をみても、コアインフレが当局の想定以上に 上昇していることの証跡となっている。次回も利上げを実施する方向にあるのは ほぼ確実だ」

「今回、利上げのオーバーシュート懸念が言及されなかったことを考慮する と、インフレ抑制を優先課題とみるメンバーが多いことを示唆した」

○利上げ見通しと債券利回りについて:

「6月のFOMCでフェデラルファンド(FF)金利誘導目標が5.25%に 引き上げられる可能性は高く、8月にも5.5%までの利上げを見ている」

「FF金利で5.5%であれば、経済が大きく失速する可能性は低い。ただ、 当局が8月にそのカードを出すかどうかは、7月の経済指標の内容次第だ」

「10年債利回りは5%半ばを目指す展開を予想する。これは5.25%の利上 げを織り込み、さらに8月の追加利上げの一部を反映した上で妥当な水準だと考 える」