三菱UFJメリル、名古屋の富裕層狙う、PB強化で営業員も倍増(3)

米大手証券メリルリンチは日本の富裕層向け 資産運用サービスで、名古屋地域の営業を強化する方針を明らかにした。東京や大 阪に次ぐ預金量を抱える都市で、金融資産1億円以上の顧客開拓を急ぎ、1500兆 円の個人金融資産をめぐる野村ホールディングスやUBSとの競争に臨む。

メリルと三菱UFJフィナンシャル・グループとの合弁で、富裕層を専門とす る三菱UFJメリルリンチPB証券の花井秀敏チーフ・アドミニストレイティブ・ オフィサー(執行役員、メリル出身)は、名古屋支店で顧客開拓に力を入れるため 営業員を年内にも20人体制へと倍増するとともに、拠点もトヨタ自動車が社屋と して入る新築ビルの「ミッドランドスクエア」に移転する考えを示した。

多くが多額の貯金持つ地域

メリルなどの調査によると、日本には1億円以上の金融資産を持つ富裕層が 134万人いる。経営破たんした旧山一証券の営業網を引き継いだメリルは、徐々に 富裕層向けに傾斜してきたが、5月1日の合弁会社の新たなスタートを機に、三菱 東京UFJ銀行からの顧客紹介により富裕層へのアプローチを一段と強める。

中京大学大学院の水谷研治教授(MBAビジネスイノベーション研究科長) は、「名古屋は多くの人が多額の貯金を持っている地域だ。それは金がないこと を恥じる文化と、一生懸命に働けば豊かになれるという勤勉さからなる。中小企 業のオーナーや医師、弁護士などは資産運用の専門家を求めている」という。

三菱UFJメリル証は、名古屋の増員だけでなく、支店も移設して顧客にアピ ールする。トヨタなどが開発中で、1000億円以上の価値を有するJR名古屋駅東 口前の複合商業施設、ミッドランドスクエアに入る計画だ。中心の高層ビルは地上 47階建・247メートルと新たなランドマーク的存在でホールや会議室も備える。

名古屋に強い基盤

全国銀行協会によれば、名古屋市の銀行などの預金量は約17兆7000億円と東 京都区部、大阪市に次ぐ第3の都市。野村証券も富裕層向け業務を強化するため、 名古屋への出店も含めて年度内に国内支店を20店舗程度増やす方針だ。一方、ス イスのUBSも大阪に拠点を置く計画など主要都市を中心に競争は激しさを増して いる。

三菱東京UFJ銀行の前身で名古屋を地盤とする旧東海銀行の元専務である水 谷氏は、「三菱UFJはこの地域で圧倒的な強さを持つため、メリルが提携により ビジネスを展開するのは賢明で、これまで東海地域で独自に取り組んできた野村と 競争していける」とみている。また、「ものづくり産業や自動車産業が好調で名古 屋の経済は成長し続けている」という。

メリルは、旧山一証券の33店舗と約2000人の人員を引き継ぎ、1998年に日 本のリテール業務に本格進出した。しかし、バブル崩壊後の市場環境の悪化などで 30店舗、約1800人の削減を迫られ、2002年3月期決算では599億円の赤字を計上。 リストラを進めながら富裕層向けに特化してきた。

世界の有力金融機関同士の提携

メリルは時価総額で世界最大の投資銀行、一方のMUFGは総資産で世界最大 の銀行グループ。三菱UFJメリルPB証券は、この2つの世界有数の金融機関同 士による折半会社だ。富裕層向け強化に舵を切ったメリルと、総合金融サービスの 1つとして顧客サービスを充実したいMUFGの思惑が一致した。

メリル出身の花井氏と、同社の元副会長で新会社のCEOを務める岡林淳二氏 らは04年8月、当時の東京三菱銀行の担当執行役員と富裕層ビジネスでの提携に ついて検討を開始した。花井、岡林の両氏は約1カ月後にアジア太平洋部門の会長 であるレイムンド・ユー氏の多忙なスケジュールの合間を縫い、提携の実現に向け た説明のため急きょシンガポールに飛んだ。

ユー氏との会議当日の9月2日午前1時ごろにリッツ・カールトンホテルに テェックインした花井氏は、明け方の4時ごろまでかけて資料を作成。2時間半 の説明の末、前向きな返事をもらって帰国した。花井氏は「ユー氏には、アメリ カ西海岸とヨーロッパの出張の合間のたった1日をわれわれの『夢物語』に割い てもらい、とても感謝している」と当時を振り返る。

花井氏は「日本人は証券会社より銀行の方が好きなようだ。今回の提携により、 銀行の強い信頼を後ろ盾に、われわれの持つ最先端の金融サービスを提供してい く」と強調した。また、「名古屋に厚い顧客基盤を持つ三菱UFJと組む優位性を 発揮しながら、学校や宗教法人などの公益法人への営業も強化していく」という。

MUFGの株価終値は前日比1万円(0.7%)高の155万円。

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