三菱UFJ:M&Aスペシャリストの中村氏を証券の取締役に抜擢(3)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(F G)は、モルガン・スタンレー証券でM&A(企業の合併・買収)部門の責任者 を務めた中村昌義氏(51)をグループの三菱UFJ証券の取締役に抜擢した。国 際的な案件も手がけてきた中村氏の起用で、M&Aアドバイザリーなどを中心に 投資銀行部門を強化し、外資系証券などとの競争に臨む狙いだ。

中村氏は、株式・債券の引き受けやM&A助言などの投資銀行業務を統括す る投資銀行部門長として6月から採用する。三菱UFJ証の五味康昌会長が17 日、電話インタビューで明らかにした。また、中村氏は取締役常務執行役員に就 任する予定だ。

ストラテジックな提案を強化へ

三菱UFJ証の五味会長は、「銀行系が投資銀行業務を行うには限界がある。 特にブルーチップ企業もからむクロスボーダー案件で3大証券や外資とストラテ ジックな提案力で競合するには十分な経験を積んだバンカーが必要だ」と、中村 氏の起用について述べた。

また、五味会長は、かつて銀行が企業に融資し、大株主という立場から優位 に案件を獲得できたが、企業が銀行に頼らずに資金調達するようになり、自らも 属する銀行系の優位性は崩れつつあるとの認識を示した。そのうえで、「ストラ テジックな提案力を磨いて投資銀行業務を強化することで、MUFGのグローバ ルトップ5入りを目指したい」と強調した。

MUFGは2005年10月に三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホー ルディングスが経営統合して誕生、総資産(約200兆円)では世界最大の金融グ ループ。しかし、景気回復局面にもかかわらず、貸し出しや利ざやの改善が遅れ るなど中核の銀行業務の収益は伸び悩んでおり、グループとして投資銀行業務の 強化が急務となっている。

ただ、中村氏が取締役に就く三菱UFJ証の業務領域となる投資銀行分野で は、米ゴールドマン・サックスや、モルガン・スタンレーなどとの競争が激しい。 三菱UFJは、06年に入ってからのM&Aアドバイザリー・ランキングで13位、 株式と株式関連デリバティブの引き受けでは8位にとどまっている。

戦略的M&Aに実績

ブルームバーグ・データによれば、三菱UFJの05年のM&Aアドバイザ リー・ランキングは、野村ホールディングス、メリルリンチに次いで第3位だっ た。4位にはモルガン・スタンレーがつけている。三菱UFJ証の五味会長は、 中村氏の獲得に1年間を費やしたという。

野村証券金融経済研究所の守山啓輔アナリストは、銀行の投資銀行業務につ いて、「三菱UFJなどの国内銀行は外資系に対してプロポーザル(提案)の質 や意思決定のスピード、グローバルなネットワークという点で遅れをとっている。 今回の経験のあるバンカーの採用はそれを補おうという積極的な姿勢の現われ だ」と評価している。

中村氏は1977年に慶大経済学部を卒業後、旧三菱銀行に入行。その後はリ ーマン・ブラザーズに入り、15年の勤務のなかで投資銀行部門の責任者などを 務めた。モルガン・スタンレーには1999年から2003年まで勤務した。

モルガン・スタンレーで中村氏は、02年の川崎製鉄とNKKの経営統合 (現在のJFEホールディングス)のほか、同年の日産自動車による仏ルノー株 式取得の案件など戦略的な案件で重要な役割を担ってきた。

中村氏は02年のソニーによるアイワ買収や、NTTドコモによる地域子会 社8社の完全子会社化、2000年の独ダイムラー・クライスラーによる三菱自動 車工業株式の取得なども手がけた。

三菱UFJ証券は17日、6月から名古屋、大阪、札幌、仙台の各支店に 「投資銀行部」を新設するほか、本社の投資銀行本部の機能をこれまでより拡充 するなどの組織改正を発表した。

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