商品相場にバブル懸念-代替燃料企業がグーグルの上昇率上回る(2)

米カリフォルニア州でエタノール生産施設の 建設を目指す化学品メーカー、パシフィック・エタノールはまだ製造段階に入っ ていない上、赤字を抱えているにもかかわらず、ナスダック市場で時価総額12億 ドル(約1320億円)を誇る。ドイツの太陽熱発電技術開発会社、ソーラーワール ドの第1四半期(1-3月)決算では、総売上高1億600万ドルのうち太陽電池 パネルの売上高は2100万ドルを下回った。一方、同社の株価の過去1年間の上昇 率は367%と、インターネット検索エンジン最大手、米グーグルのほぼ5倍に達し ている。

商品相場の活況は5年目に突入し、これまでに相場が経験したことのない段 階に達しつつある。ロイター・ジェフリーズCRB指数は、過去50年余りでこれ ほど長期にわたって上昇したことはない。過去5年間で、銅相場は4倍、金相場 は3倍以上、原油相場は2倍に上昇している。20の株式銘柄をカバーするモルガ ン・スタンレー商品関連指数は過去1年間で58%上昇している。

ニューヨークの原油相場をはじめ、ロシアの鉱山会社の株価からタイで取引 される粗糖に至るまで、投機筋主導による商品相場高騰は行き過ぎであると市場 関係者はみている。『投機バブル 根拠なき熱狂』の著者であるエコノミストで、 米エール大学のロバート・シラー教授は、商品市場が1990年代のテクノロジー株 のバブル期に似た状況になっていると指摘する。

シラー教授はインタビューで「当時と同様の現象が起こっている。活況な相 場は、投機的バブルの可能性を含んでいる。筋書きがなければ投機的なバブルは 生まれ得ない」との見方を示した。

米シティ・グループのトム・フィッツパトリック氏(ニューヨーク在勤)や ジョン・ノイス(ロンドン在勤)氏らアナリストは、4月21日に付けた1バレル 当たり75.35ドルが原油相場のピークだった可能性があるとの見方を示した。ま た、フレデリック・ラセール氏ら仏銀ソシエテ・ジェネラルのアナリストは先週、 原油相場が下落に向かう「転換点」に達した可能性があると指摘した。

ヘンダーソン・グローバル・インベスターズで1250億ドルの運用に携わる経 済・戦略担当ディレクター、トニー・ドルフィン氏は「投機的なバブルが形成さ れつつある」と指摘。「一部の投資家にとっては、現時点で商品市場から資金を 引き揚げ、相場調整後に戻るのが賢明かもしれない」との見方を示した。

「熱狂した相場状況」

商品の生産・消費企業はともに商品相場がいずれ下落するとみている。世界 最大の銅生産会社、チリの国営銅公社(コデルコ)の戦略部門バイスプレジデン ト、ホアン・エドアルド・エレラ氏は「相場はかなり熱狂した状態にある。この ような相場水準は長続きしそうもない。最近では、相場高騰はだれにとってもプ ラスよりマイナスの影響の方が大きくなっている」と語る。

清涼飲料ボトラー最大手の米コカ・コーラ・エンタープライゼズのウィリア ム・ダグラス最高財務責任者(CFO)は、同社がアルミニウム価格の上昇を抑 制するため供給業者と協力し「非常に懸命に」努力していることを明らかにした。

CIBCワールド・マーケッツ(トロント)のチーフ・テクニカル・ストラ テジスト、ラリー・バーマン氏は、相場が過大評価される兆しとして標準的な水 準を上回る相場予想を挙げる。米ゴールドマン・サックス・グループのアナリス トらは2005年3月、原油相場がいずれ1バレル当たり105ドルに達するとの見通 しを示し、この予想が相場急騰につながった。

この時の相場見通しは、オンライン小売り最大手アマゾン・ドット・コム株 が400ドルに達すると1998年後半に予想した元アナリストのヘンリー・ブロジェ ット氏の見通しを連想させると、一部アナリストは指摘する。同社株は上昇した ものの、その後2年間で80%急落し、テクノロジー株のバブル終えんの前兆とな った。

チューリップ・バブル

商品相場は、オランダでの植物ウイルス発生の影響などによりチューリップ の球根価格が急騰した1634-37年に歴史的なバブル期を迎えた。チューリップの 球根価格が暴落するまでの間、しま模様のあるチューリップを咲かせるトルコ産 の球根の需要が西欧諸国で高まり、大量に輸出された。

野村インターナショナル(ロンドン)の欧州金利戦略部門責任者、チャール ズ・ディーベル氏は「わたしは、商品市場の現状を言い表すのにバブルという言 葉は使わない。バブルという言葉は、相場が現実から乖離(かいり)している状 態を示唆するが、商品相場の高騰には中国の需要という要因があり、この要因は 当分無くなりそうにない」との見方を示した。

企業評価

ヘッジファンド運用会社マン・グループの理事長で金属取引部門を率いるフ レッド・デムラー氏(ニューヨーク在勤)は、今日の商品生産企業と1990年代の テクノロジー企業の評価を比較した。

光ファイバー機器メーカーの米シカモア・ネットワークスの2000年8月時点 の株価収益率(PER)は2875、ネットワーク機器最大手の米シスコシステムズ の同年のPERは219、インターネット・ルーター(経路制御装置)世界2位の米 ジュニパー・ネットワークスは273だった。

デムラー氏は、米ドル相場の上昇が大半の商品相場の下落につながる可能性 を指摘。「下落が始まれば、すべての商品相場が調整局面に入るだろう」との見 方を示した。

ブルームバーグの金属・鉱業指数は過去5年間で2倍以上に上昇している。 銅相場は先週、過去最高値の1トン当たり8800ドルに達し、ニッケルと亜鉛も最 高値を更新、アルミニウムは17年ぶりの高値を付けた。

米投資信託会社レッグ・メーソンのビル・ミラー氏は、投資家向け季刊誌で、 銅相場は確実に下落するとの見通しを示すとともに、現時点から商品相場への投 資を始めるのは「意を決した楽観主義者だ」とし、「銅相場は、下落するかどう かではなく、いつ下落するかの問題だ」との見方を示している。