【米経済コラム】ゴールドマンはストーンズに匹敵-メリルはマドンナ

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投資銀行にはビジネスのやり方や、ライ バルにどう意識されているかなどに、それぞれのキャラクターが反映される。 ロックバンドもそのキャラクターを自分たちの音楽、そして周囲とのかかわり 方を通して表現する。投資銀行をミュージシャンに例えてみた。

1)ゴールドマン・サックス・グループ=ローリング・ストーンズ

ゴールドマンは投資銀行の殿堂のなかでも一種変わったポジションにある。 株式時価総額トップの証券会社であるゴールドマンはライバルたちに好かれる こともなく、誰もが傲慢な企業だとみている。社員の激務を厭わない並外れた 労働意欲と比類なき収益力は、嫉妬と羨望を同じ程度に集めている。

ゴールドマンはアイルランド出身のロックバンド、U2にも近い。U2の ファンは熱心だが、ファンであることを認めるのはあまりかっこよくないと思 っている。貧困削減を訴えるボーカルのボノが各国首脳やローマ法王と肩を並 べながら、バンドとしての活動を大事にするのは難しい。

しかしながらU2は、ゴールドマンのように「長期的に貪欲たれ」との目 標を掲げることは決してないだろう。だからゴールドマンはローリング・スト ーンズなのだ。ミック・ジャガーとキース・リチャーズがお金にうるさいとし ても、これをとがめる者はいない。

2)シティグループ=オジー・オズボーン

1980年代のソロモン・ブラザーズを描いたマイケル・ルイスの著書「ラ イアーズ・ポーカー」では、トレーダーとして成功するには毎朝、熊(ベア= 弱気)の尻を噛み切るほどでなくてはならないとの記述がある。まさにオジ ー・オズボーンにぴったりの世界だ。オジーはステージでのパフォーマンスで、 死んだこうもりの頭を噛みちぎったことで有名だ。ただこの時オジーは、ゴム 製のおもちゃだと勘違いしていた。

ソロモンは今ではシティグループ帝国の中の一地域となってしまった。オ ジーは現在、音楽専門ケーブルテレビのMTVの番組に一家で登場したことで これまでより有名になった。シティもオジーも、優雅に年齢を重ねつつあると は言いがたい。シティは世界中で様々な問題で当局から槍玉に挙げられた。カ ルト的なハードロック・バンド、ブラック・サバスのリードボーカルだったオ ジー・オズボーンとお似合いだ。

3)ドイツ銀行=フリートウッド・マック

ドイツ唯一の世界的銀行、ドイツ銀行をバンドに例えるならばまず、ドイ ツで唯一世界的に知られたバンドであるクラフトワークが挙げられよう。テク ノロジーを重視する姿勢や、秘密主義、かつゲルマン的で感情をあまり表に出 さないところなど、共通点は多い。

しかしながら、他の特徴に目をむけると異なるバンドが浮かび上がってく る。莫大な資金を稼ぎ出せる能力。長年にわたる内輪もめと、意思疎通の遮断。 そしてイメージチェンジがなんとしてでも必要なこと。フリートウッド・マッ クだ。

4)JPモルガン=レディオヘッド

JPモルガン・チェースの経営幹部らはかつて、同社が250人もの博士号 取得者を確保していることや、一風変わったデリバティブ(金融派生商品)戦 略、独自の算出モデルを活用し、世界の金融市場のなかでもやや奇抜な一角で 利益を上げていることを自慢にしていた。頭脳明晰との見方もできるが、この まま続けるにはもう一度大ヒットを飛ばさなくてはならない。REMにも近い といえよう。しかしレディオヘッドの方がちょっとだけ勝っている。

5)バークレイズ・キャピタル=オアシス

バークレイズの資本市場部門を担うバークレイズ・キャピタルは、90年 代の混乱期を経て、ここ数年で焦点をある程度絞り、いまや若干肥大化し、自 己満足の気配が感じられるレッド・ホット・チリ・ペッパーズに例えられる。 いや、もしくはキーンかもしれない。いずれもどこからともなく登場しただけ でなく、バークレイズの場合は株式事業、キーンの場合はギターという重要要 素を欠いている。

もっとぴったりなのはオアシスだ。鼻持ちならない横柄な態度で知られる オアシスは米国市場での大成功を収めるは至らなかったものの、全盛期を過ぎ てもなおはっとさせる音楽性を垣間見せる。またバークレイズは恐らく必要な 人数の2倍もの人材を抱えており、2人兄弟で構成するオアシスとも共通する。 ノエルとリアムのギャラガー兄弟のうち、バークレイズのボブ・ダイアモンド 社長に当てはまるのはどちらだろう。

6)モルガン・スタンレー=コールドプレイ

大真面目。育ちの良さ。恵まれた経済的環境。形だけとの疑念はファンで さえもぬぐえないが、トップチャートでは常連。モルガン・スタンレーとコー ルドプレイはまさに似合いのカップルだ。

7)メリルリンチ=マドンナ

メリルリンチもマドンナも80年代にピークを迎え、90年代以降は何度も 人気巻き返しを図ろうとしたもののぱっとしない。デビッド・ボウイは新しい 流れにすぐ飛びつくことで、新鮮さを維持してきたが、メリルとマドンナは、 ブリトニー・スピアーズになりきろうとしているホイットニー・ヒューストン のようにも思われる。

8)HSBC=アイドルバンド(特定せず)

ガンズ・アンド・ローゼズはかれこれ10年ほど前からアルバム「チャイニ ーズ・デモクラシー」をリリースする計画だった。一部の曲はステージで演奏 されたり、海賊版で出回ったりしたが、正式なアルバム発売には至っていない。 HSBCもアジアの投資銀行業務で確立した基盤をバネに、真の意味でグロー バルな投資銀行に跳躍する意気込みをかなり昔から見せていた。

しかしHSBCはそれよりも、レコード会社に仕込まれたアイドルバンド と同じなのかもしれない。アイドルバンドの場合、実際に観客の前に立つミュ ージシャンの稼ぎは形だけで、利益の多くはマネジメントが上前をはねていく。 仮にロビー・ウィリアムスのような逸材が登場しようと、あまりにも多くのな かで頭角を現すことはできない。

9)UBS=フィル・コリンズ

UBSも、元ジェネシスのドラマーでシンガーのフィル・コリンズも、資 金に恵まれ、スイスに本拠地を置き、とやかく批判されることがないのは同じ だ。年中日焼けし、ごつい金の時計を身にまとうような金持ちの男たちはUB Sを取引銀行として選び、フィル・コリンズの「夜の囁き」を一番好きな曲に 選ぶ。

10)コメルツ銀行=デイヴィッド・ハッセルホフ

コメルツ銀行も、テレビシリーズ「ナイトライダー」、「ベイ・ウォッ チ」に出演したシンガー、デイヴィッド・ハッセルホフもドイツでかなりの成 功を収めた。その理由は科学的に解明されていない。

(マーク・ギルバート氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)