米財務省、中国を「為替操作国」に認定しない公算も-10日に為替報告

米財務省は10日午後4時(日本時間11日 午前5時)、半年に1回の為替報告を発表する。米ブッシュ政権は、中国を「為 替操作国」には認定しない一方で、同国の輸出主導型の経済政策に対する批判 する公算がある。

為替ストラテジストやロビイスト、アナリストらは、為替報告には、過小 評価された人民元が中国の輸出を後押しすることで、世界経済をゆがめている との指摘が盛り込まれるとみている。

財務省の東アジア政策担当副ディレクターを務めた経歴を持つカーネギー 国際平和基金(CEIP)のシニア・アソシエート、アルバート・ケイデル氏 (ワシントン在勤)は「財務省は、抑えた表現で真剣に中国に脅しをかけてく る公算があるが、名指しすることはないと思う」と語った。

予測されるこうした米政府のアプローチには、中国政府に為替制度の柔軟 性向上を求めると同時に、米国内の保護主義的圧力をかわす狙いがある。人民 元が昨年7月の切り上げ以降、対ドルで1.3%上昇したことについて、スノー米 財務長官は不十分との見方を示している。

米議会の中には、中国は輸出拡大に向け自国通貨の価値を抑制していると の批判が広がっている。中国の国内総生産(GDP)に占める輸出の割合は約 34%。中国は輸出をけん引役にGDPが過去10年で倍増し、世界4位の経済大 国になった。

米貿易赤字は昨年、過去最大の7260億ドルを記録し、衣料や玩具、テレビ など中国からの輸入が占める割合は28%だった。

財務省は、中国を為替操作国に認定しないことにより、中国人民銀行の周 小川総裁など当局者の影響力を強め、為替制度の柔軟性向上に消極的な中国国 内の強硬派との闘いを有利に進めたい考えだと、専門家は指摘する。

バンク・オブ・ニューヨークの上級為替ストラテジスト、マイケル・ウー ルフォーク氏(ニューヨーク在勤)は「中国を為替操作国に認定するようなあ からさまな行動は、主導権を握っている様子を誇示したい中国の強硬派の反感 を買うだけだ」と語った。

逆効果リスク

一方で逆効果を生むリスクもある。中国の当局者は同国を名指しで批判し ないことを米国の弱さと受け止め、人民元の上昇は停滞しかねない。米議員の 間でも、財務省の方針にはまったく成果がみられないとして、保護主義的色彩 の強い法案を推し進める動きが広がる公算もある。

国際通貨基金(IMF)の元幹部で、現在は国際経済研究所(IIE)に 所属するモリス・ゴールドスタイン氏(ワシントン在勤)は「財務省は、一般 市民、議会そして中国人の信認を得る必要がある」と指摘。「中国を名指しに しなければ、信認を失うことになる」と語った。

全米製造業者協会(NAM)のフランク・バーゴ副会長は、これまで中国 を為替操作国に認定する可能性を繰り返し表明してきた財務省がしり込みすれ ば、議会の批判を浴びるとの見方だ。600を超えるNAMメンバーは、中国を為 替操作国に認定するよう求める書簡を財務省に送付している。

財務省が最後に為替操作国に認定したのは1994年の中国で、それ以前には 台湾と韓国を認定したこともある。

認定そのものには、PR効果以上の価値はほとんどない。財務省が特定の 国のルール違反を認定した場合、1988年に制定された法律によると、米政府当 局は「不公正な優位性の排除に向け」、対象国との間で為替相場の調整に向け た協議を行わなければならない。

財務省はだからこそ、11月の中間選挙を前に保護主義的な圧力が高まるリ スクを避け、中国の認定を見合わせるだろうと、ブラウン・ブラザーズ・ハリ マンの為替ストラテジー担当グローバル責任者、マーク・チャンドラー氏(ニ ューヨーク在勤)はみる。

上海時間9日午後3時半(日本時間同4時半)、人民元は1ドル=8.005元 (ブルームバーグの集計データ)。香港で取引されている人民元先物(NDF) 1年物は7.67元。