福井日銀総裁:当座預金残高削減後もしばらくはゼロ金利が続く(8)

日本銀行の福井俊彦総裁は9日午後、定例記 者会見で、量的緩和解除後の金融政策運営について「(当座預金残高を)削減し ていく過程は基本的にゼロ。その後も恐らくしばらくゼロで、その後に極めて低 い金利、さらには経済物価の情勢に見合った金利水準へ調整(する)。それがど の期間、どれくらいかということは、まったく今後の経済物価情勢次第で、オー プンだ」と述べた。

日銀は同日開いた金融政策決定会合で、5年間続いた量的緩和政策を解除し、 無担保コール翌日物金利を操作目標とする伝統的な金融政策に復帰することを決 定した。

福井総裁は「量的緩和そのものも、きわめて大幅な(金融引き締めが遅れ る)ビハインド・ザ・カーブな金融政策だ。量的緩和の枠組みを脱出して、ゼロ 金利からスタートする。消費者物価指数がプラスの領域に動き、実質経済成長率 がかなりプラスを出している状況のもとで、これはかなりビハインド・ザ・カー ブからスタートしている。金融政策との組み合わせで、緩和のし過ぎのリスクは 中長期的にあるということを指摘しているのはフェアだ」と述べた。

福井総裁はさらに、ゼロ金利について「経済物価情勢に見合った金利水準と いうところから言うと、かなり離れた状況にあるのではないか」と言明。そのう えで「これから相当時間をかけて(経済物価情勢に見合った金利水準との)ギャ ップを埋めていく」と語った。

バブルのリスクにも保険かけた政策運営

福井総裁は、今後、重視すべきリスクについて「例えば、発生の確率は大き くなくても、バブルやデフレスパイラルが発生した場合は大きな影響を与える」 と指摘。そのうえで「それぞれのリスクを点検し、保険をかけた金融政策運営を しなければならない」と述べた。

福井総裁はまた、政府からは議決延期の請求は出なかったことを明らかにし たうえで、「政府と日銀の間に経済物価の情勢判断をめぐり、今ほど相違がない ことが過去にないくらい一致している」と言明。この日の決定についても「反対 を押し切ったという感じは全くない」と語った。

小泉純一郎首相が6日の参院予算委員会で「まだデフレを脱却したと言えな い状況」と指摘。そのうえで「今の経済、景気、物価状況をどうみるのかは極め て重要な影響を経済に与える。慎重に考えていただきたい」と述べたことについ ても、「小泉首相の見解に(日銀と)相違がないと思って聞いていた」と語った。

3月期末は30兆円前後で推移

福井総裁は、現在1兆2000億円行っている中長期国債の買い入れについて 「いずれ縮減過程に入らざるを得ないのは当然のことだ」と述べる一方で、縮減 については「いの一番に着手しなければならない必要性はない」と述べた。さら に、将来的に縮減する場合でも「市場にショックウェーブが起こらないよう適切 に臨む」と語った。

現在「30兆-35兆円程度」の当座預金残高については、「3月月内は削減 ペースは極めて緩やかだろう。恐らく30兆円前後で推移する可能性が強い」と 述べた。さらに、所要準備まで削減するのにかかる期間については「常識的に言 えば、3カ月ぐらいで吸収できる」としながらも、「幅をもって対処したい」と 述べた。

政策運営は先見的で総合判断に

福井総裁はまた、同日公表した「新たな金融政策運営の枠組みの導入」につ いて、公表分は「全員一致」だったことを明らかにした。各委員は中長期的な物 価安定の範囲として、消費者物価指数の前年比「0-2%程度」との見方で一致 した。ただ、委員の中心値が「大勢として概ね1%の前後で分散していた」とし たことについて、福井総裁は「1%前後というよりは少し散らばりが大きかっ た」と述べた。

福井総裁は「新たな金融政策運営の枠組み」について「いわゆるインフレタ ーゲットと違い、ルールベースで運営するわけではない。長期的な物価安定の理 解を念頭において金融政策を運営する。フォワードルッキング(先見的)で総合 的な判断で行う」と述べた。

10日に物価安定の考え方の背景

福井総裁はまた、物価の安定の考え方の背景について「あらためて明日10 日にお示しする」と述べた。反対票が1人あったことについては「消費者物価に 基づく約束をまだ満たしていないという判断によるものだ」と語った。福間年勝 審議委員がこの日の会合を体調不良で欠席したことについては「恐らく短期で復 帰されるだろう。同委員の考え方は議長(福井総裁)を通じて会合に提出されて おり、議事要旨には反映される」としている。

主な一問一答は次の通り。

――超過準備が吸収されて準備額6兆円ぐらいまで近づくまでは、ゼロ金利が続 くという理解でよいか。

「所要準備額を上回る流動性が存在する限り、基本的にはゼロ金利が続く。 その状況のもとでゼロ金利以上のものがつくかどうか、これは短期金融市場の量 的金融政策が長く続いた状況のもとで、市場参加者の行動パターンがどのように 変わってくるかいうことは、完全には今の段階では読めない」

「いわゆる超過準備を盛り続けるという金融機関が存在した場合、所要準備 額よりもう少し上のところから金利が付き始めるかもしれないが、それは単に一 過性のもので、概念的には所要純額を上回る当座預金残高が存在する限りは、長 期的には0%。所要準備額までの調整が終わったらすぐゼロ金利でなくなるのか というと、そういうことを言っているわけではない」

「つまり準備を削減していく過程は基本的にゼロ。その後も恐らくしばらく ゼロで、そのあとに極めて低い金利で、さらには経済物価の情勢に見合った金利 水準への調整過程。だいたいそんなプロセスだ。それがどの期間どれくらいかと いうことは、全く今後の経済物価情勢次第で、オープンだ」

――リスク評価について、刺激効果が強まるリスクしか書かれていないが、デフ レに戻るリスクはないのか。

「量的緩和政策そのものも、きわめて大幅なビハインド・ザ・カーブな金融 政策だ。量的金融緩和の枠組みを脱出して、ゼロ金利からスタートする。消費者 物価指数がプラスの領域に動き、実質経済成長率がかなりプラスを出している状 況のもとで、これはかなりビハインド・ザ・カーブを出発点としてスタートして いるので、金融政策との組み合わせで、緩和のし過ぎのリスクは中長期的にある ということを指摘しているのはフェアだ」

「ビハインド・ザ・カーブの金融政策でも、物価上昇率に圧力がかからない 限りは、なお当面かなり緩和的な環境が維持される可能性が高いと言っている。 両面フェアに記述している。一方にウエートをかけて書いているという理解はさ れないでいただきたい」

――日本の場合、数字を出すと硬直的にとられ、柔軟性を縛るとの懸念もある。

「政策委員の認識を数字で表すとこうなる。これは金融政策の透明性と機動 性の両立を真剣に考えて出てきた知恵みたいなもので、われわれ自身が出した知 恵をわれわれ自身がうまく生かしていくことによって、懸念は払しょくできるの でないか。そのためにも(中長期的な物価安定の)理解という概念を皆様方から もきちんと報道していただきたい。参照値と同じようなものという感じで報道さ れると世の中に混乱が起こる」

「英語で言えばアンダースタンディングという言葉をわれわれ使っている。 アンダースタンディングという政策委員会で幅広く共有している。新しい概念な ので、日本だけでなく海外にも理解してもらうため、しばらく努力はいると思う が、新しい知恵がきちんと理解されれば、そういうリスクは減っていくだろう。 数字の1人歩きという心配をわれわれも持っているが、それを打ち消していく努 力をしていかなければいけない」

――金利機能は生き返ったのか、または道半ばか。

「非常に重要な質問で、量的金融緩和政策の枠組みからの脱却により、イー ルドカーブのショートエンド、オーバーナイトところ以外のところまで、何に強 い圧力をかけるという歪(ゆが)みは、一応無くなるという意味では、金利機能 を歪めている度合いは少し緩和されると思っている。しかし経済物価情勢に見合 った金利水準というところから言うと、かなり離れた状況にあるのではないか」

「これから相当時間をかけて(経済物価情勢に見合った金利水準との)ギャ ップを埋めていくということなので、本当の意味で金利機能が生きて、資源再配 分機能を本来金利が持っているキャパシティーの通り、その機能を発揮していく ということと比較していくと、極めて低い金利を続けている以上は、何がしの犠 牲は続けていることは否めない」

――新たな金融政策運営枠組みの第一の柱は、先行き1年から2年の経済・物価 情勢について最も蓋然性が高いと判断する見通しは、具体的な数値で公表される のか。数値を公表しない場合、委員の間で意見集約してとりまとめるのか。展望 リポートで消費者物価指数の位置付けとの関係は。

「経済物価情勢を点検していく場合の2つの柱は先行き1年から2年のレン ジで、経済物価情勢に基づいて最も蓋然性の高い判断する見通しを出していくが、 その見通しが物価安定のもとで持続的な成長の経路をたどっているかという価値 判断、評価を加えた点検をしっかりしたい。第2の柱は、物価安定のもとで持続 的経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって、重視すべきさま ざまリスクは何か、これも点検したい」

「これはその時にならないと具体的に分からないが、具体的にはたとえば発 生の確率は必ずしも大きくはなくても、バブルやデフレスパイラスなど、もしそ うしたものが発生した場合には、経済物価に大きな影響を与える可能性がある」

「発生確率が低くても、もし起こればコストが高い要因とか、また金融環境、 資産価格、インフレ期待など、中長期的に経済物価情勢に影響を与える要因など、 それぞれ点検をし、起こる確立が低くても、ダメージが大きい部分については、 きちんと保険をかけた金融政策をしなければならない。そういう風な点検をした い」

「これらは従来やってなかったかというとそうでもない。金融政策運営に当 たっては、経済物価情勢を点検する際に、ある程度意識していた。それを今回明 確にしたとご理解していただきたい。展望リポートではこれまでも、先行き1年 から2年の経済情勢の見通しを出してきたし、それに対し上振れ下振れ要因も申 し上げてきた。今申し上げた2つの柱による点検の内容と、それらを踏まえた金 融政策運営の考え方を整理して、今までのやり方に上乗せして公表している」

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