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ソフトバンク:大手総合通信会社へ急加速-ボーダフォン買収成功で

携帯電話市場へ参入を計画するソフトバンクが携 帯電話で世界最大手の英ボーダフォンと日本法人を買収する交渉に入ったことで、ソ フトバンクの参入戦略は急加速することになりそうだ。金額や株式の保有比率など買 収交渉がどのような形でまとまるのか、まだ不透明だが、既存ネットワークを一気に 手に入れることができれば、ソフトバンクにとってNTTドコモ、KDDIに次ぐ巨 大総合通信キャリアとなる。

ソフトバンクはこれまで、ADSL(非対称デジタル加入者線)事業に参入し、 「Yahoo! BB」を始めたほか、日本テレコムを買収して固定電話事業も開始。携帯電 話参入はこれに続くもので、ソフトバンクにとって携帯電話は重要なステップだ。

ソフトバンクが巨額の投資でもソロバンに合うと踏んだのは、新規参入によるゼ ロからの出発ではなく、一気に国内3位の携帯事業者の位置を確保できるということ が理由とみられる。

携帯電話の国内加入者数は現在、9000万件を超えている。1億2000万人強の日 本の人口からすれば、伸びの余地は限られている。ソフトバンクは昨年11月に総務 省から新規参入を認められたが、飽和に近づいている市場にゼロからのスタートでは、 大きなエネルギーが必要。それが買収することによって、独自の回線設備の構築とい った手間が省け、ボーダフォン日本法人の1500万人という顧客も瞬時に手に入れる ことができるというメリットは大きい。

テレコムコンサルティング会社、ユーロテクノロジー・ジャパンのゲルハルト・ ファーソル社長は「今回の合意がまとまれば孫社長はネットワーク構築のための時間 とそのための経費の大幅な削減を得たことになる。また、正式な新規参入を前に新規 顧客獲得やマーケティングのための経費も大幅に削減することができる」とも指摘し た。

投資額へのこだわり

同社は、携帯電話市場への参入で、使用する周波数として800メガヘルツ帯にこ だわっていた時期がある。そのほうが、設備投資額が安くすむためだ。同社の孫正義 社長は2004年秋、ブルームバーグのインタビューで800メガヘルツ帯の場合は 「2000億-3000億円、多くても4000億円」、1.7ギガヘルツ帯や2ギガヘルツ帯の 場合は「下手をすると1兆円に達する」と述べていた。

800メガヘルツ帯はすでにNTTドコモとKDDIが使用していたため、総務省 に周波数の割当を見直すように求め、一時、訴訟も起こしたほどだ。それも設備投資 を低く抑えたいという願いがあったためだ。

さらに、総務省から携帯電話市場への新規参入の認可を受けたあとの昨年11月、 孫社長は「せっかく利益が出ているのに携帯電話事業で無茶な先行投資は考えていな い」とし、ベンダーファイナンスを中心とした手法による設備投資で携帯事業に参入 する方針を示した。また、5年10年20年かけてゆっくり育てていきたいと語った。

それが今回は大型買収に乗り出している。日本経済新聞の報道によると、買収額 は1兆7000億-2兆円に上る見込み。ソフトバンクは買収相手企業の資産を担保に 借り入れた資金を買収に充てるLBO(レバレッジド・バイアウト)なども活用する 見通し。

三菱UFJ証券の佐分博信シニアアナリストは6日付のレポートで「ソフトバン クは同社が持つコンテンツ面やポータルでの元来の強みを活かし、インフラとコンテ ンツ・サービスの両面でFMC(固定電話と携帯電話の融合)を進めるだろう」と指 摘している。

日経によるとソフトバンクは今後、傘下のヤフー・ジャパンだけではなく米国の ヤフーを巻き込んで強みである動画配信のサービスを携帯電話にいち早く持ち込んで サービスの優位性を高めるもようだ。ネットワークの構築に時間をかけていては11 月から始まるナンバーポータビリティでドコモやKDDIに大きな遅れをとることが 致命的と判断したものとみられる。

世界の潮流

通信業界の世界的な流れは、FMCサービスであり、国内電話サービス会社のN TTグループとKDDIは、それを見据えたサービスを始めており、携帯電話事業者 のボーダフォン、固定電話が先行しているソフトバンクはそれぞれ、何らかの措置を 講ずる必要に迫られていた。

市場では、ソフトバンクによる買収交渉の報道について「新戦略はボジティブだ。 傘下の日本テレコムと国内3位の携帯電話会社を組み合すことでさまざまなサービス 展開が可能となり、NTTグループの牙城に迫るつもりだろう。2兆円とも推測され る買収劇はソフトバンクの本気を市場にも示すものだ」(独立系投資顧問のマーケッ ト・アンド・テクノロジーズ代表取締役、内山俊隆氏)と評価する声も聞かれる。

ボーダフォン

一方、ボーダフォングループは大きな曲がり角に来ている。ボーダフォンはこれ まで日本市場での拡大を目指すと言い続けてきた。05年2月にボーダフォン日本法 人の津田志郎社長(当時)とのインタビューの際に津田氏は、親会社、英ボーダフォ ンのアルン・サリーン最高経営責任者(CEO)が「日本市場には10年、20年、30 年は居続ける」と語ったことを明らかにしていた。さらに先月末、日本法人のビル・ モロー社長と津田会長は、来期の事業戦略で、メール、メッセージ機能に特化して同 業他社との差別化を図り、日本市場でシェア2位を狙う方針を打ち出したばかりだっ た。

しかし、親会社のボーダフォンは先月27日、連結売上高見通しを下方修正し、 のれん代の減損処理として最大280億ポンドを計上すると発表した。この方針転換の 要因は、ボーダフォングループの業績不振にあるようだ。

同社がグローバル戦略の変更を余儀なくされたことは、ソフトバンクにとって渡 りに船だったとも言えそうだ。しかし、昨年11月に発表したボーダフォンの決算に よると、05年4-9月期で日本法人の契約者数は、1499万1500件で前年同期と比べ 4万9200件の純減。苦しい経営状態はまだ続いている。

ボーダフォンの事業についてユーロテクノロジー・ジャパンのファーソル社長は 「ボーダフォンは世界的な戦略に目を向け過ぎて日本の顧客の要望に上手く対応でき なかったことが日本市場での失敗の要因だ。日本法人が英国の完全子会社として上場 廃止となった以降は特に英国への気配りが顕著だった」と分析する。

加えて同社長は「国内ではLOVE定額など新しい割引制度を打ち出して一定の サービスも成功しているとも言えるが、残念ながらそのため収益減につながっている ようでありスマートな戦略とはいえない」とも述べた。

茨の道

11月からのナンバーポータビリティ(契約する通信事業者を替えても、携帯電 話の番号が変えずに済むシステム)開始に備えて、ドコモやKDDIが着々とサービ ス強化で顧客囲い込み作戦を展開している。そうした中でソフトバンクが、ボーダフ ォン日本法人を引き継ぐとしても、今後、競争を勝ち抜くのは、決して容易な道では なさそうだ。

野村證券の金融経済研究所企業調査部、増野大作アナリストは、6日付のレポー トで、買収報道は「シナジー効果がなければ報道された買収額は割高」としている。 さらに、「買収後にのれんの償却費が生じる可能性が高く、自力参入した場合に比べ て当面の携帯事業の経常赤字が減少しない可能性がある」と指摘している。そして、 中期戦略が明確になるまでは、報道をポジティブに評価できないと結論付けている。

--共同取材 上野英治郎、若尾藍子  Editor: murotani

David Tweed (81)(3)3201-2494 dtweed@bloomberg.net

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