武藤日銀副総裁:量的緩和解除まだ判断するのは早い-CPI受け(4)

(第3段落以降に一問一答などを追加します)

【記者:日高正裕】

2月2日(ブルームバーグ):日本銀行の武藤敏郎副総裁は2日午後、松山市 内で会見し、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の前年比が昨年12 月にプラス0.1%となり、3カ月連続でゼロ%以上となったことについて「まだ わたしは(量的緩和政策の解除を)判断をするのは早いと思う。引き続き状況の 推移を見ていく必要があると考えている」と述べた。

日銀は「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が安定的にゼロ%以上となる まで量的緩和政策を続ける」と約束している。武藤副総裁は量的緩和の解除につ いては「展望リポートの見通しに沿って経済が進展すると仮定すると、2006年度 にかけて金融政策の変更の可能性が次第に高まっていく」と繰り返した。

量的緩和解除後、どの時点で金利を引き上げるのかについては「やはりデー タが揃っていないと言うべきだろう」と指摘。そのうえで「これから毎月出てく る経済、物価のデータ、金融情勢に依存するということであって、今しばらく状 況を観察する」と述べた。

インフレ目標には慎重

武藤副総裁は昨年12月27日の一部経済紙とのインタビューで、量的緩和政 策の解除後の市場との対話について「量的緩和政策が持っている時間軸の効果は なくなる。それに代わる道しるべが必要だ」と述べた。武藤副総裁はこの発言に ついて「特に道しるべの中身について、現時点で予断を持っているということで はない」と語った。

インフレターゲッティング(目標)政策については「金融政策が目指すべき 物価上昇率が何%かというのが重要なファクターになるが、そういうことがなか なか明確に決めがたい」と指摘。「わたし自身は現時点で申し上げれば、インフ レターゲッティングについては検討すべき多くの課題があるのではないか」と述 べ、導入には慎重な見方を示した。

武藤副総裁はそのうえで「透明性向上に必要な施策が何なのか、今後の金融 情勢等も踏まえながら、模索していく」と語った。

長期金利は名目成長率を上回る

福井俊彦総裁は1月23日の会見で、透明性向上の手段について「どんなもの が出てくるのかというぐらいで楽しみに待っていて頂きたい」と述べた。武藤副 総裁はこの発言について「わたし自身は特段思い当たるふしはない。総裁がどの ようにお考えになっているか、わたしが解説する立場にはない」と述べた。

長期金利の動向については「基本的には、将来の経済、及び物価に対する市 場の見方が反映される。そのうえで債券を保有することに伴うさまざまなリスク、 いわばリスクプレミアムが上乗せされる形で市場において決まると理解してい る」と指摘。

そのうえで、長期金利と名目成長率の関係について「長い目で見れば、長期 金利が名目成長率より高い水準となる傾向があると言ってよいのではないか。も ちろん、ある時期をとったり、外国の例をとると、長期金利が名目成長率を下回 っていることもないことはないので、常にそうだとは言うつもりはないが、ごく 一般論としてはそれが基本であると思っている」と語った。

地域にも回復に広がり

景気については「マクロ全体でみると、内需、外需ともにバランスのある回 復が続いているので、地域にも次第に広がりを持っていることが最近の新たな展 開だと思っている」と述べた。

武藤副総裁はさらに「先月、日銀支店長会議が開かれたが、そこでもレベル は地域によって相当ばらつきがあるが、いずれの地域においても景況感に改善の 動きが見られることが報告された」と指摘。

そのうえで「日銀として金融政策運営にあたり、地域経済の状況をいかに把 握するかは大事な点だ。昨年4月から地域経済報告が作成されている。そういう 地域の実情を踏まえながら、金融政策運営をやっていきたい」と語った。

主な一問一答は次の通り。

――昨年12月27日の一部経済紙とのインタビューで、量的緩和政策の解除後の市 場との対話について「量的緩和政策が持っている時間軸の効果はなくなる。それ に代わる道しるべが必要だ」と述べられた。「道しるべ」について具体的なイメ ージがあればうかがいたい。

「中央銀行としては、金融政策の透明性を高めることが説明責任を果す観点 からも、金融政策の有効性を高める観点からも重要な課題だ。中央銀行は金融市 場や金融機関の行動を通じて政策を行うので、透明性の向上が重要だと思ってい る」

「今後、展望リポートの見通しに沿って経済が進展すると仮定すると、2006 年度にかけて金融政策の変更の可能性が次第に高まっていくことは申し上げてい る通りだが、そういう状況の中でどのような透明性向上のための対応をしていく かについて、われわれとしては市場との対話という観点から重要だという基本認 識を、道しるべという言葉を使って申し上げたかった」

「具体的にどういう枠組みが透明性を向上するのかということになると、講 演でも述べたが、中央銀行を取り巻く環境によっても違う。国によっても違う。 さまざまなバリエーションが存在している。そういう中で、よく言われるフォワ ード・ルッキング・ランゲージという、言葉や文章というやり方が良いのか、何 らかの数値的なものがあり得るのかというのは、これからの検討課題と申し上げ た。それは今でも変わっていない」

「特に道しるべの中身について、現時点で予断を持っているということでは ない。インフレターゲッティングについて申し上げると、確かにそういう議論が あるのは事実だし、一言でインフレターゲッティングといってもかなり幅のある ものだと理解している」

「現時点で政策運営の柔軟性をどのように確保していくのか、それから金融 政策が目指すべき物価上昇率が何%かというのが重要なファクターになるが、そ ういうことがなかなか明確に決めがたいと言うか、検討すべき課題がたくさんあ るということであり、わたし自身は現時点で申し上げれば、インフレターゲッテ ィングについては検討すべき多くの課題があるのではないかなと思っている」

「現在でも日銀は透明性向上にそれなりの努力をしているとわたしは思って いる。いわゆる展望リポートを半期ごとに公表し、3カ月ごとに中間評価を行う のは透明性向上の1つの大きなやり方だと思っている。透明性向上に必要な施策 が何なのか、今後の金融情勢等も踏まえながら、模索していくということだろう と思っている」

――総裁が1月23日の会見で道しるべについて「皆さんも心にゆとりを持って、 どんなものが出てくるのかというぐらいで楽しみに待っていて頂きたい」と述べ たが、その点について何らかのイメージがあるのか、それともまったく抽象的な ものなのか、見解をうかがいたい。

「楽しみにしていただきたいという総裁の言葉については、わたし自身は特 段思い当たるふしはない。総裁がどのようにお考えになっているか、わたしが解 説する立場にはない」と述べた。

――最近、政府と与党の間で、成長率と長期金利の関係について意見が分かれてい るが、この点について見解をうかがいたい。

「今まで経済財政諮問会議において、財政再建のために公的債務残高の対G DP比で引き下げる必要があるという議論があり、そういう文脈の中で長期金利 は名目成長率を下回ることが期待できるのかどうかという議論があったと理解し ている」

「そもそも長期金利がどのように決まるのかについては、多少の意見の広が りがあるのかもしれないが、わたしは基本的には将来の経済、及び物価に対する 市場の見方が反映される。そのうえで債券を保有することに伴うさまざまなリス ク、いわばリスクプレミアムが上乗せされる形で市場において決まると理解して いる」

「そういうことなので、長い目で見れば、長期金利が名目成長率より高い水 準となる傾向があると言ってよいのではないか。もちろん、ある時期をとったり、 外国の例をとると、長期金利が名目成長率を下回っていることもないことはない ので、常にそうだとは言うつもりはないが、ごく一般論としてはそれが基本であ ると思っている」

「わが国の場合、戦後の高度成長とか規制金利時代を除いて、国債市場が整 備され金利形成が自由に行われるようになった1980年代以降でみると、長期金利 は名目金利を幾分上回って推移していると言ってよいのではないか、というのが わたしの理解だ」

――コアCPIは3カ月連続でゼロ%以上になったが、既に量的緩和解除の条件を 満たしたと言えるのか。あるいは3つの条件の第1条件は満たしたと言えるのか。

「確かに昨年10月にゼロ%、11、12月にプラス0.1%の上昇となったが、こ れをもって条件が満たされたかと言うことであれば、今申し上げたようなデータ なので、まだわたしは判断をするのは早いと思う。引き続き状況の推移を見てい く必要があると考えている」

「それから、第1項目は達成されたとか、第2項目は達成されていないとか、 ばらばらにして判断するのは適当でないので、条件を全体で考えていくとわたし は思っている。第2条件は達成されたが、第1条件がまだであるとか、第1条件 が達成されたが、第2条件はまだであるということではなく、全体をみて条件を 達成したかどうか判断するのが自然な判断ではないかと思っている」

――講演で、量的緩和解除後の「金利水準や時間的経路は、まさに経済・物価の展 開や金融情勢に大きく依存する」と述べられた。経済情勢が上振れれば、比較的 速やかに利上げを行う可能性があるのか。また、経済情勢が想定の範囲内ならば、 ゼロ金利を半年から1年といった比較的長期間続ける可能性もあるのか。

「中間評価では上振れて推移すると評価していることとの関係で言えば、確 かに経済全体についてはそういう評価をしているが、消費者物価指数については だいたい展望リポートに沿った展開だと評価しており、この点については特に上 振れたとはわれわれは考えていない」

「そういうことを前提として、量的緩和後、ゼロ金利がどのくらい続くのか、 あるいはどのくらいの時点で経済、物価情勢に見合ったということで金利が引き 上げられていくのかについては、今の展望リポート、及び中間評価の段階で、そ の質問に答えるのは、やはりデータが揃っていないと言うべきだろう」

「講演にあるように、まさに経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存する。 これから毎月出てくる経済、物価のデータ、金融情勢に依存するということであ って、今しばらく状況を観察するということだ」

「そこから先は『経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあ って、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、 引き続き極めて緩和的な金融環境を維持していける』という部分にすべて集約さ れている」

――地方によって景気に格差があることをどのように金融政策に反映させていく か、見解をうかがいたい。

「マクロ全体でみると、内需、外需ともにバランスのある回復が続いている ので、地域にも次第に広がりを持っていることが最近の新たな展開だと思ってい る。先月、日銀支店長会議が開かれたが、そこでもレベルは地域によって相当ば らつきがあるが、いずれの地域においてもこの回復局面で初めてのことだが、景 況感に改善の動きが見られることが報告された」

「日銀として金融政策運営にあたり、地域経済の状況をいかに把握するかは 大事な点だと思っている。昨年4月から地域経済報告が作成されている。そうい う地域の実情を踏まえながら、金融政策運営をやっていきたいと思っている」