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自動車日本勢の展望:トヨタがGMを抜く勢い-国内は二極化で火花

自動車業界の2006年は、ゼネラル・モー ターズ(GM)など米大手が業績不振に悩むなか、日本勢が一段と評価される 年になりそうだ。特にトヨタグループは生産台数でGMを抜き、世界トップに 躍り出る勢いだ。証券各社も自動車業界の注目銘柄としてトヨタを挙げる。一 方、大きな成長が見込めない国内市場では、高級車と低価格車という2極化が 進みそう。日系メーカー同士でも、し烈なパイ争いが繰り広げられる。

日本勢、ガソリン高を味方に

トヨタ、ホンダなどにとって営業利益の約7割を稼ぎ出す米国市場はまさ に主戦場。06年の米国販売計画はトヨタが05年の実績見込みと比べ10%増の 246万台、ホンダが同4%増の151万台を見込む。日産自は公表していないが、 欧米の競合他社と比べて日本勢の伸び率は大きいとみられ、「特にトヨタの 10%増はかなり強気」(クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券の遠藤 功治アナリスト)。

06年の米自動車需要は05年の実績見込み(1680万台)からやや下振れす る見込み。米国ホンダの近藤広一社長は「ガソリン価格の高騰や金利上昇を考 慮すると1650万台くらいになる」とみている。スタンダード・アンド・プア ーズ(S&P)のアナリスト、スコット・スプリンゼン氏も「GMの不振は業 界としてプラスの要因になり得ず、他社が潤うことも考えにくい」と話す。G Mなどの販売不振により需要全体も弱含むとの声もあり、良くて横ばいとの見 方が主流だ。

ガソリン高を背景に、需要構造にも変化が出ている。燃費効率の悪いピッ クアップトラックやSUV(多目的スポーツ車)などライトトラックと呼ばれ る大型車の販売が低迷。一方、燃費の良さから小型車の人気が高まっている。 大型車離れは一時的な現象で、ガソリン価格が落ち着けば、市場特性からも中 期的には需要が回復するとの見方が一般的ではあるが、大型車はGMなど米ビ ッグスリーの、小型車は日系メーカーの得意とするところ。最近の燃費に対す る関心の高まりは日本勢に明らかに追い風となっている。

05年9月に発売したホンダの新型「シビック」などは堅調な売れ行き。06 年も日本勢は小型車市場に積極投入する。トヨタは「ヴィッツ」の輸出を開始。 ホンダは「フィット」、日産自は「ティーダ」(現地名:ヴァーサ)と主力の コンパクトカーで攻勢をかける。ホンダは高級車ブランド「アキュラ」でも小 型SUV(多目的スポーツ車)「RD-X」を発売する予定。

分かれる明暗

足元の販売状況を見れば明暗は一目瞭然だ。11月の米販売台数はトヨタが 前年同月比10%増、ホンダが同11%増。これに対し、GMが7.5%減、フォー ド・モーターは15%減。UBS証券の中西孝樹アナリストは「厳しい市場環境 のなかでも、日本車の販売は驚くほど好調」と指摘。ビッグスリーの地位低下 は続いており、「代わってアジアブランドの存在感が大幅に高まり、勢いを増 している」との見方を示す。

ライトトラック系車種の比率が高まった日産自は3.9%減。トヨタがハイ ブリッド車「プリウス」や若者向けブランド「サイオン」のモデル、ホンダが 「シビック」などと小型車で好調を維持する一方、日産自はピックアップトラ ック「タイタン」など大型車が2ケタ減となり、足を引っ張った格好だ。

GMは北米9工場を含む12拠点の閉鎖など大規模なリストラ策に踏み切 る。フォードも工場閉鎖や人員削減などが一部で報じられており、ともに復活 を目指す。ただ、「日本、ドイツの車には非常に品質が良いというイメージが あり、GMの車はマイナスのイメージを引きずっている」(S&Pのスプリン ゼン氏)との声もあり、リストラだけでは販売不振の根本的な解決にはならな い。両社とも再建の足取りは不透明で、競争力を取り戻すには時間がかかりそ うだ。

自動車関連データ調査会社、エドマンズ・ドット・コムのボブ・クリルコ 副社長はアジア大手メーカーが最終的に米市場で主導権を握ると見ており、そ れに向かって「着々と進んでいる」とみる。トヨタが掲げる06年のグループ 生産計画は前年比10%増の906万台。これはGMの04年の生産実績(約909 万台)と肩を並べる水準。トヨタがGMを抜いて世界生産台数トップの座に躍 り出るのは秒読み段階に入ったと言える。

二極化が進む国内市場

一方、「世界で一番競争が厳しい市場」(日産自のカルロス・ゴーン社 長)と言われる国内では、日系メーカー同士が今まで以上に激しく火花を散ら しそうだ。日本自動車工業会の06年の国内自動車需要見通しは、05年実績見 込みと比べ0.5%増の593万台。微増ながら4年連続でプラスを維持すると想 定するが、ここ数年600万台弱の水準が続いており、大きな成長が見込みにく い。

さらには需要構造の変化も鮮明になりつつある。ガソリン高などにより、 燃費効率と低価格を兼ね備えた軽自動車や小型車の需要が好調。片や、景気回 復に伴う富裕層の広がりなどを背景に、高級車市場も脚光を浴び始めている。

日産自のゴーン社長は「国内需要が軽自動車や小型車に移っており、中型 セダンなどの車種を多く扱う日産自にとっては好ましいトレンドではない」と 話す。こうした市場環境の変化に対応するため、日産自は06年、国内販売体 制の再編・立て直しに乗り出す。ホンダも、低収益かつ販売不振のため同社に とって最大のアキレス腱となっていた国内販売にメスを入れる。

国内販売体制の立て直し

ホンダは06年春、約20年ぶりに販売体制を抜本的に見直し、現在の3系 列を1本化する。新型軽自動車の発売にタイミングを合わせる形だ。一方、北 米で展開する高級車ブランド「アキュラ」も08年秋からスタートさせる。福 井威夫社長は「総台数は変わらなくても、需要構造は変わってきている」と分 析。「日本市場はある程度、二極化が進む可能性がある。それに挑戦していく 必要がある」とアキュラの国内展開を決断した背景を語る。

日産自は06年7月に販売統括会社を新設。全店舗の半分、約1300店を運 営する国内52の連結販売会社を実質的に経営統合し、資産管理などを新会社 に一本化する。日産自主導で店舗を集約し、空白地域への出店を進めて消費者 の利便性を高める。昨年後半に新車を連続投入した反動で、05年10月、11月 は約2割減に落ち込んでいるが、「1-3月は回復する」(ゴーン社長)と予 想。高級車ブランド「インフィニティ」も08年3月期以降に国内に導入する 予定だ。

一方、国内シェアの約半分を占め、首位を走り続けるトヨタは現在、5つ の販売系列を展開しており、国内販売を盛り上げる。04年に小型車や若者・女 性向けの新生「ネッツ」店をすでに始動。高級車分野では「レクサス」の国内 展開を05年8月から開始している。

トヨタは成長株

日本勢のなかでも特に動向が注目されるのは、あらゆる車種区分で国内ト ップシェアを誇るトヨタだ。そのトヨタもホンダの「フィット」、日産自の 「キューブ」など強豪がひしめく小型車市場でのシェアには不満を持つ。登録 車(排気量660㏄超)で4分の1を超える同市場で、トヨタのシェアは42%程 度。大中型SUV市場(「ランドクルーザー」など)の83%、大型セダン市場 (「セルシオ」など)の80%と比べるとはるかに低い。

トヨタの一丸陽一郎専務は「もっと小型車のシェアを高めなくては」と 鼻息が荒い。小型車ではダイハツとの連携で効率的な商品開発を進めており、 軽はダイハツに一任するなど、商品ラインアップ強化へ手綱を緩めることはな い。

06年は05年に発売した「GS」などレクサス3車種がフルに寄与するう え、旗艦車種「LS(現セルシオ)」の発売も控える。主力車種「カローラ」 と「カムリ」、ミニバン「エスティマ」のフルモデルチェンジ(全面改良)な ど高収益モデルの投入も多い。国内はもとより、世界中での販売増加が見込ま れ、タイを中心としたIMV(新興市場向け戦略車)プロジェクトの進展、富 士重工業との資本・業務提携による効果も期待されている。

トヨタはUBS証券、日興シティグループ証券、クレディ・スイス・ファ ースト・ボストン証券などの買い推奨銘柄トップ。目標株価は3社とも7000 円に設定。05年は6120円で取引を終えた。日興シティグループ証券の松島憲 之アナリストは、トヨタに注目する理由として「07年3月期以降の増益率が市 場のコンセンサスを上回る」ためとしている。

歴代社長在任中の株価上昇率

トヨタの渡辺捷昭社長は、トヨタを「常に世界一良いものを、世界一早く、 世界一安く作りたいという考え方を持っている集団」、そして「世界一の販売 とサービスも持っているという欲の深いところを常に追求している集団」と表 現し、トップの座に安住せず、常に前進する姿勢を貫く。

トヨタ自動車工業とトヨタ自動車販売の2社が統合した、いわゆる工販合 併以降の歴代社長と株価の関係をみると、豊田章一郎氏(1982年7月1日=就 任日、以下同)が83%、豊田達郎氏(92年9月25日)が34%、奥田碩氏(95 年8月25日)が99%、張富士夫氏(99年6月25日)が5.3%。経済情勢や在 任期間の長さを無視して単純に比較すれば、奥田時代の上昇率がトップ。

渡辺社長が05年6月23日に就任してから05年の最終取引日まで、半年 間で株価は約55%上昇した。日経平均株価は約5年3カ月ぶりに1万6000円 台に乗せるなど相場全体も好調だ。渡辺社長時代に株価がどこまで上がるかも 関心を呼びそうだ。

自動車各社の業績は05年年央以降の円安基調も幸いし、上方修正の傾向 にある。みずほ証券では「05年度は設備投資や研究開発投資の負担が重くのし かかり、売上高の伸びに対して増益率は低いが、これは今後の成長力を高める もの」(熊谷五郎シニアストラテジスト)と指摘。PER(株価収益率)も市 場平均を大きく下回っていると評価し、「業績から見ても、バリュエーション から見ても魅力的」(同)として注目セクターに挙げている。

-- 共同取材:Bill Koenig、藤村奈央子 Editor:Taniai

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