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野村HD:M&Aバンカーを増強へ―05年ランキング10兆円で首位(3)

野村ホールディングスはM&A(企業の買 収・合併)業務の専門要員を増強する。2005年の日本企業が関わる助言ランキン グでは、経営統合により三菱UFJフィナンシャル・グループが誕生した案件を 含め、取り扱い総額でトップとなり、史上初の10兆円規模を記録した。今後は国 際的なM&A案件の獲得も視野に体制を強化する。

野村証券の木村賢治・企業情報部長兼再生プロジェクト室長は、日本国内の 要員を06年中には1-2割増の約120人体制とする考えを明らかにした。欧州や 米国の拠点でも要員を拡充していく。一方、300億ドル(約3兆5000億円)の三 菱UFJ案件や医薬品業界再編の代表案件を手がけてランキング2位に食い込ん だ米メリルリンチや、同3位の三菱UFJ証券も内外で採用を拡大する方針だ。

「時間を買う動き」が加速

ブルームバーグ・データによれば、05年の公表ベースの案件総額は約1435 億ドル(約16兆9000億円)と前年比で64%拡大した。世界のM&A市場全体に 占めるシェアは5.6%だった。産業再生機構の斉藤淳社長は、06年も収益力向上 を目指す日本企業の旺盛な企業買収意欲に加え、海外企業からの敵対的買収に対 する防衛を意識した経営統合など、M&A業務は拡大するとみている。

また、再生機構の斉藤社長は、日本企業のM&Aについて「世の中の変化に 合わそうとする動きでM&Aはもっと活性化するだろう。ものすごいスピードと 多様化の時代に入っている」と述べ、06年は一段と広がりを見せるとみている。 さらに、「日本でも既存企業をできるだけ安く買い、ビジネスモデルに組み込む 『時間を買う』形の本当のM&Aが定着してきた」と分析する。

野村は05年、127案件を手がけた。メリルは20案件。新たな買収提案者の 出現や株主提案による「買収合戦」といった環境の変化を背景に、手数料収入も 増加したとみられる。野村の木村部長は、三菱UFJの案件について「訴訟など もありチャレンジングなディールだった。統合発表後、海外投資家向けに直ちに IRミーティングを開く準備も含め、仕事は多岐にわたった」と振り返る。

三共プレミアム

三菱UFJの案件では、三井住友フィナンシャルグループが当時の三菱東京 フィナンシャル・グループに対抗し、株主価値をより高められるとしてUFJに 経営統合を提案。また、この案件では三菱東京がUFJに統合を持ちかける前に、 UFJ信託銀行の買収でUFJ側と合意していた住友信託銀行が、三菱東京とU FJ間の買収交渉の差し止めを求める訴訟を起こした。

05年のM&A市場では、元通産官僚の村上世彰氏が率い、約3500億円の資 金を運用する「村上ファンド」の動きも、投資家の利益拡大につながった。三共 による第一製薬の買収案件では、三共株を取得した村上ファンドが、内外の製薬 会社が高い価格で三共を買収する可能性があり、買う側より買われる立場になる ほうが株主のメリットは大きいなどとして、第一製薬との経営統合に反対した。

村上ファンドの提案は結局、三共の株主総会で否決された。この案件で第一 側のアドバイザーを務めたメリルリンチ日本証券の山田寛人・M&A担当マネー ジング・ディレクターは「M&Aは企業にとって人生のように生き方を決める大 切なものになってきている」という。そのため「フィー(手数料)にも高度な提 案内容が反映されている」と述べ、専門性が求められるM&A業務が収益源とし て育ってきているとの認識を示した。

海外進出案件が増加へ

メリルが米当局に提出した報告によると、メリルは三菱UFJ案件でのUF J側の助言業務で12億4000万円を稼いだ。野村とメリルは総額約35億ドル(約 4100億円)の花王によるカネボウ化粧品買収なども担当した。メリルの山田氏は、 「日本のM&Aは変化しており、TOBを含め大きな案件が出てきそうだが、そ こに絡んでプレゼンスをあげたい」と強調。06年は外資である強みも生かし、日 本企業が海外企業を買収するクロスボーダー案件も積極的に手がけていく。

三菱UFJ証券は、案件数で最多の133件、総額約433億ドル(約5兆円) を手がけた。このほか、モルガン・スタンレーは約367億ドル(4兆3000億円) 相当を手がけ、JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなどをおさえ て4位となった。05年に日本企業が関わったM&A案件は1762件と、04年の 1128件から56%増加した。

独走する野村を含めトップ3のM&A担当者は、06年も業務を拡大できると 自信を示す。M&Aの活発化が予想されるなか、メリルは現在約30人の陣容をさ らに拡大する。また、日本に約120人のほか、ニューヨーク、ロンドン、香港、 上海など海外にも約30人を擁する三菱UFJ証券も採用を拡大する方針だ。

三菱UFJ証券の大都保幸・執行役員は「われわれはすでに10数件程度のク ロスボーダー案件にとりかかっており、今後は中国などで、日本のテクノロジー、 バイオ、石油・電力などのエネルギー企業による外国企業買収などを見届けるこ とができるだろう」と06年を見通している。大都氏は「三菱UFJという銀行グ ループのネットワークを活用してピッチをかける」と積極的だ。

野村HDの29日終値は前日比5円(0.2%)安の2285円、三菱UFJ証券が 同24円(1.6%)高の1499円。

○2005年の日本企業が関わるM&Aアドバイザリー・ランキング
                                         取り扱い総額       案件数
 1.      野村HD                           80,774           127
 2.     メリルリンチ                        47,408            20
 3.      三菱UFJ                         43,348           133
 4.  モルガン・スタンレー                   36,724            17
 5.     JPモルガン                        34,830            10
 6.      ラザード                           29,800             5
 7.      KPMG                           28,426            45
 8. ゴールドマン・サックス                  14,119            23
 9.    シティグループ                       12,163            27
10.     大和SMBC                        10,606            90
注)12月29日現在。出典:ブルームバーグ・データ、金額単位:米100万ドル

--共同取材:下土井 京子 Editor:Asai

日向 貴彦 Takahiko Hyuga (813)3201-7498 thyuga@bloomberg.ne 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 浅井 秀樹 Hideki Asai (813)3201-8380 hasai@bloomberg.net Ben Richardson at (852) 2977-6467 or brichardson8@bloomberg.net

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