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村上ファンド:TOBは連敗、株主や役員賛同なく-投資家は利益(4)

TBS株取引で百億円超の利益をあげたとみら れる村上世彰氏率いる投資ファンドが、株式公開買い付け(TOB)では連敗して いる。新日本無線の経営権をめぐるTOB合戦で日清紡に負けたことが9日判明し た。対象企業の株主や経営陣の賛同が得られずに株式を集められない。

日清紡はこの日、発行済み株式の過半数の応募があり、新日本無線へのTOB が成立したと発表した。11月8日に1株840円でTOBをすると発表、村上ファン ドがその後1株900円を提示(950円に引き上げ)したことで1株880円に価格を 上げていた。筆頭株主で株式の過半数を握る日本無線が持ち株の大半を応募した。

村上ファンドのTOBは新日本無線株の50%超取得が条件で、対抗TOBは失 敗に終わった。村上氏がM&A(合併・買収)手法としてTOBを使ったのは意外 に少なくデビュー戦の昭栄以来だが、いずれも目的を達成できなかった。西武鉄道 に提案していたTOBも、構想の段階で会社側から不採用の通知を受けている。

楽天が経営統合を求めたTBSの株式売買で村上ファンドは、数カ月で百億円 規模の利益を稼いだ。9月に取得、10月に売却したと仮定して試算すると利益は 130億円前後。実際は3月末にすでに1%強を保有しており、利益はもっと大きい。

株主や経営陣の賛同なく

株式市場参加者が最も動向を注目し、株価への影響力も大きいその村上ファン ドがTOBでは連戦連敗なのは、提案に対して経営陣、従業員や株主の理解が得ら れないのが背景。今回の新日本無線では日本無線が日清紡のTOBに応じ、昭栄で は株主のキヤノンや芙蓉グループが静観した。いずれのケースでも経営陣は村上フ ァンドに反対の意を表明している。

M&Aに精通している長島・大野・常松法律事務所の井上広樹・弁護士は「対 象会社が反対の意を表明した敵対的TOBは実現が難しく、日本で成功した例はな いのではないか」と指摘した。

NTTが買収を目指していた国際デジタル通信(IDC)に、英ケーブル・ア ンド・ワイヤレス(C&W)がTOBをかけた99年の案件では、C&Wが最終的に 競り勝った。これが日本初の敵対的TOBで、成功例とも言われるが、IDCは自 身の意思を明確に示しておらず、敵対的買収とは言い難い。

期間や価格、株数を含む条件を事前に開示して開始するTOBは、売り手の株 主に選択の余地が大きい。特に大株主は価格以外にその後の取引関係といった諸要 件を踏まえ総合的に売却先を決める。日本無線が株主代表訴訟のリスクを犯してま で売却額で14億円少ない日清紡のTOBに応じたのは、この総合判断が背景にある。

村上ファンド「驚天動地な決定」と非難

村上ファンドは、日本無線が日清紡のTOBに応じる意思表明をした8日、 「日本無線取締役会の決定はまさに驚天動地」とコメントして強く非難した。「株 主の利益を無視した裏切り行為であり、絶対に許されない」として、取締役の責任 追及を含めて徹底的に戦う姿勢も強調している。

日本無線の株主は明確な機会損失を被ることになり、今後も日本無線の取締役 会には納得いく説明を求める方針だ。

さらにこの日の日清紡のTOB結果を踏まえて「応募したのは日本無線を含む 株主4人で99.9%の株主は見送った。こうしたTOBに応じた日本無線にあらため て憤りを感じる」と強く批判した。

これまで村上ファンドは水面下で株式を買い集め、大量保有報告書(5%ルール 報告書)の基準に従って情報を開示するケースが多かった。最近ではTBSや阪神 電気鉄道が一例。この手法は成功を収めておりTBSでは利益を実現、阪神電鉄で は巨額の含み益を確保している。

市場取引で売り手が重視するのは基本的に価格。村上ファンドが買いの主体で も、売り手にはみえない。阪神電鉄株の保有過程では株式、転換社債型新株予約権 付社債(CB)と阪神百貨店株を取得した。CBは株式に転換、阪神百株は阪神電 鉄との株式交換で最終的に阪神電鉄株を保有するという「離れ業」を駆使できた。

TOB傾斜、投資家全体は利益享受

その村上氏はTOBに傾斜する姿勢を示し始めた。新日本無線についての記者 会見で11月21日、TOBについて「これからむちゃくちゃ積極的にしていきた い」と強調した。経済産業省や法務省の制度整備が進んだことで「自由に買値を提 示できる、そういう時代になってきた」とその背景を強調した。

TOBは開示基準が厳しい分、買い取り株数を示して予定に届かなかったら全 部を買い付けないといった条件付けや買い取り上限を示すことが可能。このため 「TOBに成功はあっても、失敗はない」とM&A関係者の間で言われることがあ る。今回の村上ファンドも、諸手続きにかかった費用を除けば損失が出ているわけ ではない。

これまでの市場での株式買い集めの手法は、開示基準が緩い半面で買い取り額 や株数がマーケット環境に左右されやすい。現在の開示基準については現状よりも 厳しくする方向で金融庁が検討を進めており、投資ファンドにとってはより早い情 報開示を求められて投資にとっては不利になる可能性がある。

こうしたなかで村上ファンドは、TOBと市場での取得という2つの手法をケ ースバイケースで駆使しながらM&Aを進めていくことになる。仮にTOBなどが 成功しなくても村上ファンドが企業にモノ言う姿勢を示すこと自体で企業に緊張感 が生じ、企業価値向上を常に念頭に置く経営者も増える。今回の新日本無線のよう に株価も反応することで投資家全体の利益にもつながる。

村上氏の新日本無線へのTOB期限は12月15日。現在の成立条件は株式過半 数だが、条件を改定することは可能。成立条件を緩和すれば、新日本無線の投資家 は1株につき950円と日清紡より70円、率にして8%高い価格で株式を売却できる。

村上ファンドは8日、阪神電鉄株についての大量保有報告書を財務省に提出し た。株式を買い増して持ち株比率を42.36%と2.59ポイント引き上げた。これを受 けて阪神電鉄株は一時7%の上昇となり、2カ月ぶりの高値を付けている。

新日本無線株の終値は、前日比14円(1.6%)安の867円。

【村上ファンドの主なM&A、株主提案銘柄】 時期(年)対象企業 株式取得の手法や提案内容など 結果など ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2005 新日本無線 TOBで株式過半数取得 2005 阪神電気鉄道 株式取得、筆頭株主としてタイガース上場提案 2005 三共 株式取得、第一製薬との経営統合反対-三共が総会で否決 2005 大阪証券取引所 株式取得して年間配当2万円-大証が9000円へ配当上げ 2005 西武鉄道 1株1000円以上でTOB表明-西武は12月21日に総会 2004 ニッポン放送 株式取得して大株主として社外取締役選任 2002 東京スタイル 株式9.3%保有で配当・自己株取得を株主提案 2000 昭栄 TOBで経営権取得-株主キヤノンや昭栄が反対して失敗

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