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耐震偽造問題がJ-REIT市況に影落とす-上場延期の事態に発展

姉歯建築設計事務所による建築物の構造計 算書偽造問題が、日本版不動産投資信託(J-REIT)市況に影を落とし始め ている。最近の不動産市況の改善はJ-REITがけん引役になってきただけに、 市場では偽造問題がJ-REITを通じて不動産市況の足を引っ張りかねないと の懸念も台頭している。

国土交通省などが2日までに発表したところによると、姉歯事務所が設計に 関与した物件はマンションやホテルなど全国で206件に上り、47件でデータの 改ざんが確認された。改ざんの件数はさらに拡大する可能性があり、建築物の耐 震性に社会的な不審が広がっている。

改ざん物件の広がりを座視できなくなった投資家からは、REIT各社に問 い合わせが増え始めている。投信に債務不履行(デフォルト)の懸念が強い債券 が紛れ込むのと同じで、ファンドに組み入れた建築物が使用できなくなれば、投 資家への分配に影響も出るためだ。各社は無用な懸念を払しょくしようと懸命だ。

J-REITの中で総資産が最大の日本ビルファンド投資法人では、投資家 の問い合わせに対して「当ファンドはオフィスビル特化型ではあるが、問題にな っている設計事務所とのかかわりについては調査している。物件の購入に際して は耐震性に注意を払い、第三者機関を通じて資産査定を厳格に行っている」(山 中智・取締役運営本部長)と説明している。

資産規模で第2位のジャパンリアルエステイト投資法人も1日、姉歯事務所 とのかかわりがないと発表。地震リスクについては、期末ごとにPML(予想最 大損害額)値と呼ばれる専門的な数値まで開示して、投資家の不安を和らげよう としているという。

市場の動揺を抑えようとするREIT各社の対応にもかかわらず、「改ざん がどれだけ行われたのか実相がつかみ切れていないため、姉歯問題もREIT相 場の下げにつながっている」(新光証券エクイティ情報部の瀬川剛エクイティス トラテジスト)との指摘が出ている。

東証REIT指数は2003年3月末に1000を基準として算出が始まり、これ を底値として堅調に推移。「市場実勢より3割も高い水準で物件を買うファンド もあった」(コスモ証券エクイティ部の東健一・エクイティストラテジスト)と いうほど過熱。こうした過熱は首都圏から地方都市にも拡大し、REIT指数は 今年7月には1686まで上昇した。しかし、この夏以降は過熱感から調整局面が 続いており、証券会社によってはREITの取り扱いを見合わせているところさ えある。

今回の耐震偽造問題は、こうした調整局面にあるREIT市場を直撃した。 2日の東証REIT指数は続落し、指数を構成する25銘柄のうち、上昇したの はわずか6銘柄。値下がりは14銘柄に上った。週明け5日の取引でも同指数は 下落した。

中には、年初来安値を更新する銘柄も相次いでいる。「レジデンス系のファ ンドが影響を受けるのでは」(クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券の 大谷洋司アナリスト)との見方を裏付けるように、ジョイント・リート投資法人 やニューシティー・レジデンス投資法人といった住宅関連ファンドの下げが目立 つ。これらはすでに姉歯事務所とのかかわりがないと発表しているが、それでも 売りが先行、神経質な市場の動きを示している。

5日にはマンション開発業者のリビングコーポレーションと、REITのエ ルシーピー投資法人が偽装問題のあおりを食う形で上場を見送る事態に発展した。

市場の不安定さが強まっているのは、「建設・不動産業界の構造的な問題に 市場参加者が気づいているため」(大谷アナリスト)との指摘もある。建設会社 の破たんが相次いだ2002年ごろから、信用力を重視する大手不動産会社は、経 営基盤の強固な建設会社とだけ組む流れが定着した。信用力の低い建設会社は、 信用力の低い不動産会社としか組めなくなり、コスト削減を追求するあまり、手 抜き工事の温床となった恐れがあるという見方だ。

デフレ脱却をテーマに先週の株式市場では日経平均株価が5年ぶりに1万 5000円台を回復した。しかし、そのきっかけの一つとなったREIT市場が変 調をきたす懸念も否定できず、大谷アナリストは「REIT市場の資金循環が止 まるのが心配」と表情を曇らせている。

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