村上ファンドの狙いは何か、日清紡に対抗で新日本無線にTOB

最近、日本で最も注目される投資家の一人、村 上世彰氏が代表を務める投資会社エム・エイ・シーが21日、新日本無線に対する公 開買い付け(TOB)を発表した。「敵対的なTOBにはしない」と村上氏は明言す るものの、既に当事者間で合意が成立している日清紡の新日本無線に対するTOBに 割って入った形だけに、村上氏の狙いは鮮明になっていない。

村上氏が率いる通称、村上ファンドがTOBを仕掛けるのは珍しい。村上ファン ドは数多くの投資を手がけてきたが、TOBは過去6年間で2度目だ。村上氏自身は 前日の会見で「自分が過去にリサーチをかけて、良いと判断した会社がようやく売り に出た。株価は割安で投資価値はある」と、TOBに踏み切った理由を強調した。同 氏は夏に新日本無線の株式の買い取りについて日本無線に打診しているが断られたと いう経緯もあった。

新日本無線の買収に執念を燃やす同氏だが、「新日本無線と日本無線の経営陣の 要求には株主価値向上に資する限りにおいてすべて受け入れる」と発言。さらに「フ ェア(公正)で、株主のために断れないような公開買い付けの条件を出そうと考えた。 話し合いはすべて公開でやってもいい」とも述べ、企業に要求を突きつけるこれまで の「もの言う」投資家とは違った、ソフト路線を全面に出しているのが特徴だ。

多様性求める動き

これに対して市場では、村上氏の行動の真意について、「従来のやり方だけでは ファンドのパフォーマンスを上げることが難しくなっており、収益獲得のための多様 性を求めた動きの一環ではないか」(野村証券投資情報部の品田民治氏)との見方が 有力だ。

村上氏は会見で「世の中は変わった、法務省と経済産業省がルールを作った」と 力説。上場企業でもいったん売りに出たら価格で決まるのが原則だといい、「フェア に売買ができるようになったはずだ」と述べた。これについてもエイチ・エス証券市 場調査室長の落合冨太郎氏は「理屈はいろいろあっても本質的にはファンドの性質上、 金をもうけることが狙いであり、そのことから目を離すと見えるものがみえなくな る」と指摘した。

村上ファンドは、新日本無線の株式を1株当り900円で11月21日から12月15 日まで買い付けを行う。日清紡のTOBは840円で村上氏は900円と60円の差があ る。村上ファンドが新日本無線に対し、買い付け額で日清紡に10億円以上の差をつ けており、提示条件を日本無線の経営陣は喜んで受け入れるはずであり、そうなるの が筋、というのが村上氏の理屈だ。

市場でも「投資価値があるならばファンドとして業務を遂行するだけであり、村 上氏の主張と行動になんら不可解な点はない」(独立系投資顧問のアセットアライブ 代表取締役、下川勝彦氏)と理解を示す声もある。

欧米並みのTOB時代到来

欧米ではTOBは頻繁に行われている。日本でもTOBのルールは整ってきて、 企業そのものがフェアな形での買収の対象になる時代に入ってきた。

時代の変化を背に理屈で推し進めようとするというのが村上氏の姿勢だが、それ には下川氏も「彼が描くこうあるべきだとする市場と現実の日本の市場との差は厳然 としてあり、合理的な理屈がそのまま通ると考えると、つまずく恐れがあるだろう」 と警告している。

いずれにしても、新日本無線をめぐって競合するTOBの行方は予断を許さない。 村上ファンドの買い付け価格は日清紡のそれを60円上回っているものの、今後日清 紡が価格を引き上げる可能もある。村上氏は21日に日本無線の経営陣と22日には新 日本無線の経営陣とそれぞれ会談し、TOBに対する考えを説明しているが、日清紡、 日本無線、そして新日本無線が今後村上ファンドにどう対応するのか注目が集まる。

新日本無線の株価終値は前日比74円(7.9%)高の1013円。