ヘッジファンドが欧州企業揺るがす-運用成績向上へ経営に介入

養護施設経営の仏メディデップが6月21 日にパリのホテルで開催した年次株主総会でのこと。同社経営陣に怒る株主の 中にヘッジファンドマネジャー、マシュー・デュビック氏(32)の姿があった。 彼らは同社のジャンクロード・マリアン監査役会会長(当時、66)に最後通告 を突きつけた-辞任しなければ、株主投票で解任の議決をする。

デュビック氏は、マリアン会長がメディデップと競合する仏オルペアの経 営に携わっていることを問題にした。同会長は株主総会の会場をいったん去る と、20分後に再び現れ、辞任を発表した。拍手喝さいが起きた。

ロンドンを拠点とするメロンHBV欧州スペシャル・シチュエーション ズ・ファンドを主宰するデュビック氏は、「われわれがほかの株主らと一緒に 行動しなければ、事態は変わらないだろうと感じていた」と振り返る。

デュビック氏は行動する株主となったいわば新世代ヘッジファンドマネジ ャーのひとりで、こうしたファンド運用者がこのところ欧州で台頭している。 今年に入り、ドイツ取引所、世界最大の食品メーカー、スイスのネスレや石油 大手ロイヤル・ダッチ・シェルなどを含む10社以上の欧州企業の経営陣がこう した投資家の影響を受けた。

コーポレートガバナンス(企業の支配・統治)のコンサルタント、デービ ス・グローバル・アドバイザーズ(ボストン)のスティーブン・デービス社長 は、「ヘッジファンドは行動すれば結果につながるという事実に目覚めており、 行動路線に速いペースで走っている。さらに欧州では、これまで市場圧力にさ らされず、株価動向の芳しくない企業が数多くある」と述べた。

またとない好機

ヘッジファンドにとっては、現在はまたとない好機と言える。業界の運用 資産は2001年以降、2倍以上に膨らんで1兆ドル(111兆円)となり、その運 用成績の向上に熱心だからだ。ヘッジファンド・リサーチ(シカゴ)によれば、 今年1-6月期の業界の平均運用成績はプラス1.9%にすぎなかった。

テーラー(コネチカット州グリニッジ)のトーマス・テーラー代表によれ ば、行動するヘッジファンドは全世界に現在約90あり、3年前の40から増え た。その多くがデュビック氏のように30代が主宰するファンドだという。

ニューヨークを拠点とする弁護士、ソフィー・レリアス氏はこの傾向につ いて、「彼らは若くて貪欲」と指摘。「既に出来上がった組織の一部に組み込 まれていないので、変な私欲もない。運用成績を上げることだけが目的だ」と 述べた。

イナゴの大群

一方、こうしたヘッジファンドの新しく行動的なスタンスは、ファンドの 利益が最優先で企業の雇用や長期的な福利厚生を後回しにするとの懸念も欧州 では増えている。

例えば、チルドレンズ・インベストメント・ファンド・マネジメントを2003 年にロンドンで立ち上げたクリストファー・ホーン氏(38)。同氏は今年、ほ かの株主らと、ドイツ取引所がロンドン証券取引所(LSE)に提示した23億 ドル相当の買収案に対して、高過ぎるとしてこれを阻止。この騒ぎで、ドイツ 取引所のウェルナー・ザイフェルト最高経営責任者(CEO、当時)、ロルフ・ ブロイヤー監査役会会長(当時)とほか3人の役員が同取引所を去った。

これを受け、ドイツ取引所の株価は上昇したものの、ドイツ政界はヘッジ ファンドを非難。社会民主党のフランツ・ミュンテフェリング党首はホーン氏 らを、「すべてを破壊して去ってしまうイナゴの大群のようだ」と表現した。

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