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石油各社:製油所の機能強化や活用相次ぐ-重軽格差、需要構造の変化

国内石油会社が製油所機能の強化に取り組 んでいる。原油の油種間格差の拡大、重油の需要減少といった環境にさらされ るなか、割安な重質原油を処理できる重質油分解装置の増強・活用や石油化学 装置の設置を進める。

石油業界関係者は、石油の用途が最終的に「輸送用燃料、石油化学用、潤 滑油の3つに収れんしていく」(ジャパンエナジーの荒川健治専務)と受け止 めており、各社は付加価値の低いC重油の生産比率を抑制する一方で、石化や 電力といった高付加価値事業にシフトする戦略だ。

原油の重軽格差

原油市場では昨年9月以降、軽質原油と重質原油の価格差が開いたままと なっている。その背景にあるのが、ガソリンや軽油といった白油への需要シフ ト。世界的に製油所能力が限界に近づいていることもあり、白油を作りやすい 軽質原油への引き合いが強い一方、重質原油は相対的に割安となっている。

油種間格差の代表例がサウジアラビア産のアラビアン・ライトとアラビア ン・ヘビーの価格差。価格差が急拡大した昨年9月から現時点までの平均価格 差はバレル当たり4.85ドル。2000年から04年8月までの価格差は1.36ド ルだった。現在の重軽格差をAPI格差(原油の性状を示す指標の格差=5.5 ポイント)で割った比率(重軽格差/API格差)は0.88ドル。

重質油分解装置はフル稼働

原油格差を受けて、重質油分解装置はフル稼働している。ジャパンエナジ ーの荒川専務は、重質油分解装置を備えた水島製油所(岡山県倉敷市)につい て「重軽格差が開くほど競争力が付く」と語る。同製油所は、低採算のアスフ ァルト分を分解し、軽油などの中間留分やコークスを生産している。重軽格差 /API格差が0.5-0.6ドルで推移すれば、仮に重質油分解装置を建設(300 億円)しても2-3年でコストを回収できるという。

AOCホールディングス傘下の富士石油では、袖ヶ浦製油所(千葉県袖ヶ 浦市)の重質油分解装置(ユリカ)が活躍。04年度決算では「前年度比で70 億-80億円も相対的にコストが低下した」(AOCHDのIRグループ、関川 宏一シニアマネジャー)。富士石油の関彦次郎・生産管理部長によると、原油 や製品の価格水準に左右されるものの、重軽格差が1.5ドル以上であれば重質 原油の処理が有利になるとしており、現状では製油所運営として「ユリカを最 優先で稼動させている」(関氏)。この装置は副産物として石油ピッチを約44 万トン生産し、外部に約36万トンを出荷。住友金属工業(18万トン)など鉄 鋼各社が原料炭の代替品として使用している。

今後の課題-鹿島、イラク、根岸製油所など

ジャパンエナジーは、水島製油所の重質油分解装置を増強する一方、鹿島 製油所(茨城県鹿島郡)の高度化が今後の課題。鹿島製油所は東京電力やコン ビナートへの重油供給などを目的としてきたが、東電に限らず、電力各社は重 油の使用を減らしているのが現状。製油所としても「重油分などを分解して白 油化したほうが有利」(荒川専務)であることから、需要家の動向を踏まえな がらボトムレス化を推進する考えだ。

富士石油は、ユリカの予備装置(反応塔1系列)を持っているが、川下の 処理施設が能力いっぱいの状態。こうしたなかでAOCHDは、イラク石油省 との技術協力交渉に際して、同国産原油の軽質化事業を提案した。関川シニア マネジャーによると、ユリカを活用することで重質原油(API25度前後)を API40度程度に引き上げる。

もっとも会社によって対応は様々だ。同じく重質油処理装置を保有してい る新日本石油は6月、仙台製油所(宮城県仙台市)に本格的な石化設備(連続 触媒再生方式、CCR)を設置すると発表。これは原料よりも最終製品に着目 した戦略で、仙台製油所の使用原油は今後軽質化するものの、付加価値の高い 石化製品を本格生産することで、収益力を強化する。新日石は、石化製品の増 産計画を打ち出しており「根岸や水島製油所などの古いCCRを新しいのに変 えるのが今後の課題」(小林俊和常務)としている。

資源ブーム-重軽格差の解消に時間も

設備増強は日本だけの現象ではなく、資源高騰をきっかけとして世界各地 で資源開発や生産設備の増強計画が相次いでいる。この結果、プラント建設ま でにかかる時間は、従来の20カ月から30-35カ月程度に伸びているとされ、 設備増強が計画通りに進むとは限らない。重質油処理装置にしても、付帯設備 を考慮すると700億-800億円程度かかるとみられており、簡単には決断でき ない。

実際、新日本石油の小林常務は、仙台製油所の増強に際しては、プラント メーカーが繁忙なことに加えて「資材高はネック」と指摘する。設備増強の遅 れによって重質原油への対応が進まなければ、重軽格差は解消しにくくなる。 石油業界は長年にわたって設備投資を控えていたこともあり「原油の価格差は ある程度継続する」(荒川専務)公算が大といえそうだ。

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