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【経済コラム】今年の投資銀行業界、明暗分けた米国と欧州-M・リン

今年は投資銀行の業績が強弱まちまちだ。 背景にあるのは、株式相場の伸び悩み、年後半になってからのM&A(企業の 合併・買収)の活発化、散発的な新規株式公開(IPO)といった今年の特徴 だろう。

そんな投資銀行業界も、注意深く見ると、一定の傾向が浮かび上がってく る。大手米銀の方が大手欧州銀よりはるかに好調という傾向だ。この状態が続 けば、今年は投資銀行業界における欧州勢の攻勢にピリオドが打たれることに なる。欧州勢は数十億ドル規模の投資に見合うだけの収益を回収できなかっ た。

具体的な数字を見てみよう。

米大手証券ゴールドマン・サックスが先週発表した9-11月期決算は前年 同期比で23%の増益。リーマン・ブラザーズは同22%の増益だった。調査会社 トムソン・ファイナンシャルがまとめたアナリスト予想によれば、米国の大手 投資銀行の通期決算は過去最高益を記録するとみられている。

一方、欧州の投資銀行を取り巻く環境は米国勢に比べ厳しい。

スイス銀行2位クレディ・スイス・グループは再編を続けている。今月に は、証券部門のクレディ・スイス・ファースト・ボストン(CSFB)と小 口・富裕層向けの銀行部門を統合すると発表。人員削減や戦略商品への経営資 源集中を強いられることになる。

ドイツ銀行

ドイツ銀行は今月、ドイツ国内で全体の7%に相当する1920人の人員削減 を発表した。独アリアンツの証券部門、ドレスナー・クラインオート・ワッサ ースタインもコスト削減のため、年末までに240人を削減する方針を明らかに している。

富裕層投資家向け資産運用で世界最大手、スイスのUBSも今年は業績が 振るわなかった。同社が先月発表した7-9月期決算は1%の減益。プライベ ートバンキング部門の利益も悪化した。

大西洋を挟んで明暗を分けている米国と欧州の投資銀行。欧州勢の事業再 編に対する評価も低下気味だ。調査会社クレジットサイツのアナリスト、サイ モン・アダムソン氏は、クレディ・スイスを例に挙げ、「顧客別の事業分割や 特定商品への資源集中を、革命的な戦略と言うことはできない」と指摘する。

欧州勢のM&A

4年前、業界の勢力図は全く異なっていた。欧州勢の間では、業界トップ の座を目指した数十万ドル規模のM&Aが相次いでいた。

クレディ・スイスは2000年、ドナルドソン・ラフキン・アンド・ジェンレ ットを130億ドルで買収。UBSも同じ年、ペイン・ウェバーを約160億ドルで 買収した。1999年にはドイツ銀行がバンカース・トラストを90億ドルで買収し ている。独ドレスナー銀行は95年にクライン・オート・ベンソン・グループを 10億ポンドで買収。さらに2000年には、ワッサースタイン・ペレラを16億ドル で手に入れた。

欧州勢にも強みはある。ドイツ銀行は債券トレーディングで世界有数。U BSも株式発行の引き受け業務でランキング上位に位置している。ブルームバ ーグのデータによると、ロスチャイルドは、今年発表されたM&Aの仲介業務 ランキングで世界7位だ。ただ、総合的な投資銀行業務となると、欧州勢にか つての勢いはなく、米国勢に後れを取っているのが現状だ。

失敗は何か

欧州勢はなぜ、大規模な投資に対する見返りをほとんど得られなかったの だろう。

第1の理由には、米銀が抱える国内市場の規模が巨大であることが挙げら れる。欧州勢が太刀打ちするのは非常に困難だ。その結果、ゴールドマン・サ ックスなど米国勢の多くは、大規模なM&Aをすることなく世界の主要プレー ヤーの座を維持することができる。これに対して、欧州勢は海外事業の拡大や M&Aによる規模の拡大を強いられる。経営戦略のなかでM&Aほど難しい選 択はない。国際的なM&Aとなればその難しさは倍増する。

第2の理由は、ニューヨークが国際金融業界の拠点である点だ。欧州の金 融センターはロンドンのシティーだが、今やここは米国の拠点も同然だ。この ため米銀は、常に本拠地での勝負が可能。欧州勢は常にアウエーでのゲームを 戦わなければならない。

ただ、欧州勢が再び盛り返す可能性を完全に否定するのは間違いだ。30年 前は、欧州勢に飛行機作りの未来はないという見方が優勢だったかもしれない が、現在はシェア争いに苦戦しているのは欧州エアバスよりも米ボーイングの 方だ。

それでも現在の投資銀行業界を見る限り、米国勢が優勢なことに揺るぎは ない。この勢力図に変化が出るまでには数年を要するかもしれない。

(マシュー・リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。この コラムの内容は同氏自身の見解です)

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