コンテンツにスキップする
Subscriber Only

ソニー:MGM買収で基本合意、現金と債務継承で約5300億円(3)

ソニーは14日、米投資会社など3社と共 同で、映画制作大手メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)を買収するこ とで基本合意したと発表した。MGMの債務継承分も含めた買収総額は約5300 億円に上る見通し。ソニーは映画事業を強化し、オンライン配信の普及加速や次 世代DVD(デジタル多用途ディスク)をめぐる規格争いでの主導権獲得を目指 す。

発表によると、ソニー連合はMGM株式を1株当たり12ドル、総額28億 5000万ドル(約3100億円)の現金で取得する。これはMGMの13日終値 (11.55ドル)とほぼ同水準。各社の出資比率などは公表していない。このほか、 MGMの債務も引き継ぐ。MGMが7月29日の決算発表で公表した6月末現在の 負債額は20億ドル(約2200億円)だった。ソニー広報センターの坂口恵氏によ ると、同社として今回の買収に必要な資金は手当て済みという。

これに先立ち、MGMは基本合意に伴い13日に1億5000万ドルの保証金 を受け取ったことを明らかにした。MGM経営陣は9月27日までに取締役会に諮 る方針。メディア最大手の米タイム・ワーナーがMGMに対する買収案を取り下 げたことで、ソニーのグループが唯一のMGM買収候補となった。

今回、MGMと合意したのは米国ソニーのほか、プロビデンス・エクイテ ィ・パートナーズ、テキサス・パシフィック・グループ、クレディ・スイス・フ ァースト・ボストン傘下のDLJマーチャント・バンキング・パートナーズ。

3社とは別に、ケーブルテレビ最大手の米コムキャストが買収後のMGMに 少額出資する可能性がある。複数の関係者によると、投資額は3億ドルの見込み。 またコムキャストは見たい映像を見たい時に端末に呼び出せるビデオ・オン・デ マンドサービスなど向けに、ソニーやMGMが持つ映画やテレビ番組の供給を受 けることでも合意している。

「良い組み合わせ」

ソニーはMGMの買収により、ジェームズ・ボンドの007シリーズやシルベ スター・スタローン主演の「ロッキー」シリーズ、「羊たちの沈黙」をはじめと する有力作品を含む映画の権利を取得、作品群は約2倍の8000タイトルに上る という。ソニーの映画子会社ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントの最近 のヒット作は「スパイダーマン」シリーズやジョディー・フォスター主演の「パ ニックルーム」など。MGMには映画に加え、1万時間分のテレビ番組の資産も ある。

サンダース・モリス・ハリス社のメディア・娯楽アナリスト、デービッド・ ミラー氏は買収の発表前に、「良い組み合わせだ」として、「保有する映画が多 ければ、コスト削減につながる」と話していた。

今回の買収により、ソニーはまず、劇場収入を上回るようになっているDV Dやビデオ化されたソフトの販売・レンタル事業を強化できる。ソニーによると、 最大市場である米国の昨年の業界全体のDVD・ビデオ販売・レンタルからの売 り上げは220億ドルと、劇場収入の約2倍に上ったという。MGMの2003年の DVD・ビデオソフト販売高は約10億5000万ドル(約1150億円)と、総売上 高(18億8000万ドル)の半分以上を占めた。

同時に、ソニーは映画のオンライン配信など新規の販路拡大の加速を狙う。 ソニーのハワード・ストリンガー副会長は4月のインタビューで、音楽配信では 他社に先行を許したものの、「映像部門では決して同じことを繰り返してはなら ない」と語っている。

米調査大手ガートナー・リサーチ社のジェームズ・ブランショー副社長は、 買収がソニーにとって、配信網を拡大できるという点でプラスだと評価。すでに 一大市場に成長したDVD販売用に加えて、将来のビデオ・オン・デマンドサー ビスの拡大に備えて「MGMの作品群を取得することは、それらが世界の競合他 社の手に渡らないようにすることでもあり、非常に重要なことだ」と語った。同 副社長はソニーのコムキャスト向け映画・番組供給の契約なども、「非常に面白 い」と評価している。さらに、MGMは自社ブランドのテレビチャンネルも放送 しており、世界100カ国・地域で視聴可能という。

次世代大容量DVDの規格争いでも、ハリウッドの映画産業の賛同を得るこ とが重要との見方から、優位に立てる可能性が期待される。ソニーは松下電器産 業など日米欧韓13社で「ブルーレイ・ディスク」規格を推奨しており、東芝・N EC陣営が提唱する「HD DVD」規格と対抗している。野村証券金融経済研 究所の片山栄一アナリストは、「映画事業だけでみた場合、ほぼ妥当な判断だっ た」としたうえで、「それ以上に大きなメリットは、激しい競争を続けている次 世代DVDにある」と分析。ブルーレイ陣営は「コンテンツ企業の取り込みで大 きなプラスの効果が期待できる」との見方を示した。

タイム・ワーナーは撤回

MGMの買収に名乗りを上げていたタイム・ワーナーのリチャード・パーソ ンズ最高経営責任者(CEO)は、提案を取り下げた理由について「当社の資本 力を有効に活用する価格条件に達しなかった」と述べた。フェデレーテッド・イ ンベスターズのメディア担当アナリスト、アンジェラ・コーラー氏は、タイム・ ワーナーの決定について「財政面での規律を示したことは重要な出来事だ」と指 摘、「MGMは成長にとってプラスだが、決定的な買収案件ではない」と話して いた。

MGMの74%を保有する米資産家カーク・カーコリアン氏がMGMを売却 するのはこれが3回目。2001年には、MGMとソニーの合併を模索したこともあ った。同氏は1970年にMGMを買収。1986年に一度売却したが、1948年以前 の映画の権利以外を買い戻した。その後イタリアの資産家に同社を売却した後、 1996年に現金13億ドルで買い戻している。

ソニーの投資パートナーであるテキサス・パシフィックは米テキサス州の富 豪であるバス家の投資アドバイザーを務めたこともあるデービッド・ボンダーマ ン氏が1993年に設立。昨年は53億ドルの資金を集め、買収ファンドを設定した。 同社はコンチネンタル航空やファーストフードのバーガーキングなど、経営難に 陥った有力ブランドへの投資実績を持つ。

同様にMGM買収に参加しているプロビデンス・エクイティは通信やメディ ア関連企業に投資している。同社は1991年に設立された。現在は28億ドルのフ ァンドの投資先を検討している。

メディア業界再編

ソニーによるMGM買収は、メディア会社間の数十億ドル規模の大型買収と して過去1年で3件目となる。メディア界の大物ルパート・マードック氏が経営 する豪メディア会社ニューズ・コープは2003年12月、66億ドルで米最大の衛 星テレビ「ディレクTV」の経営権を取得。さらに米総合電機ゼネラル・エレク トリック(GE)傘下の米テレビ放送局NBCは5月に、仏ビベンディ・ユニバ ーサルの米メディア資産を140億ドルで買収し、NBCユニバーサルに衣替えし た。ケーブルテレビ最大手の米コムキャストは2月に娯楽大手米ウォルト・ディ ズニーに541億ドル相当の敵対的買収案を提示したが、その後取り下げていた。

ソニーとMGMの案件では、JPモルガン、シティグループとクレディ・ス イス・ファースト・ボストンがソニー連合のアドバイザーを務めた。

ソニーの株価は午後2時半近くなって下げ足を速めると、一時は前日比80 円(2%)安の3870円まで下げた。14日終値は同60円(1.5%)安の3890 円となった。

--共同取材:Alex Armitage, Chitra Smayaji, Jonathan Berr, Adam Steinhauer, Dan Lonkevich, Greg Chang     Editor:Murotani

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE