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株主総会あす集中日:存在感増す個人投資家-企業にも変化の兆し(4)

企業経営者と投資家が直接議論する年1回の 機会、株主総会の開催が29日に集中日を迎える。警察庁によると全国で約1680 社の企業がいっせいに総会の開催を予定している。株式持ち合い解消の進展を背 景に個人投資家や機関投資家が企業経営について積極的に物言う傾向が強まって いる。これを受けて企業の総会対応にも変化の兆しがみられ始めた。

警察庁のまとめによると、集中日に総会を開催するのは昨年に比べて160社 減少した。企業側が個人投資家の意向に配慮する形で1998年以降は開催日の分散 化が進んでいる。警察庁は29日に1560社の要請に応じて約4520人警察官を各会 場などに派遣、株主総会で不正行為がないか目を光らせる。

東証発表によると29日に総会を開催する上場企業は1120社。3月期決算企 業の64%に当たる。主な企業は大林組、清水建設、花王、三共、武田薬品工業、 フジテレビジョン、三菱電機、松下電器産業、パイオニア、ファナック、三菱自 動車工業、任天堂、三菱東京フィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャ ルグループ、三井不動産、三菱地所、NTTなど。

今回の総会の特徴について、大和総研の堀内勇世・制度調査部次長は「株主 が総会に参加、物言う株主として議案を提出したり反対票を投じたりすることが 増えている」と述べた。そのうえで、こうした傾向が今後も強まっていき、その 影響で「企業側が株主の信頼を得る場として株主総会が存在することになる」と 予想、儀式的な側面が強かった総会が変化する可能性を指摘した。

日産自動車、NTTドコモ、ソニー

23日に総会を開催した日産自動車は、配当を順次引き上げて2007年度に年 40円と2003年度実績(19円)に比べ倍増させると発表した。個人投資家の増配 要望に応える。株価はその後の2日間で7%上昇した。18日に総会を開催したN TTドコモも、個人の相次ぐ増配要望を受け2004年度に500円多い年2000円へ の増配とその後の配当も配当性向などを考慮する方針を示した。

22日に総会を開催したソニーは、株主が毎回議案としている役員報酬の個別 開示について「総額表示で十分」という見解を繰り返したが、同時に株主の声に 押される形で、その方針や方法を取締役会などで継続的に議論していることも強 調した。この議案は3年連続で否決されたが賛成票は31.2%に達し、ソニーも何 らかの対応を迫られ始めている。

インターネット証券大手のマネックス証券は26日の土曜日、松井証券は27 日の日曜日に総会を開催した。両社ともにより多くの個人投資家に総会へ足を運 んでもらうため平日の総会開催を上場以来避けている。

全国の証券取引所が調査した「株式分布状況」(2004年3月末)によると、 個人株主は3400万人と前年比で23万人増加、8年連続で過去最高を更新した。 個人持ち株比率は20.5%。値上がり益確保の売りや外国人投資家の台頭(持ち株 比率は21.8%と過去最高)で、個人の比率は0.1ポイント低下した。それでも個 人、外国人の持ち株比率が上昇基調で一大勢力になっていることに変わりはない。

一方で保有株式の売却を進めている長銀・都銀・地銀は5.9%、生命保険は

5.7%、損害保険は2.4%と過去最低を更新している。いわゆる総会屋への対策と して総会を集中日に開く企業も少なくなり、個人投資家が総会に出席して声を上 げやすい環境が整ってきている。

地方公務員共済組合連合会、厚生年金基金連合会

株主としては日本の機関投資家の存在も見逃せない。運用額が12兆円を超え る地方公務員共済組合連合会は、株主総会での議決権行使を今回の総会から本格 化させる。特に取締役の選任に際しては「3年連続赤字で改善見込のない企業に ついては再任に反対する」(菅俊一・事務局長)方針だ。

この取締役選任に関するほか、役員報酬・賞与、利益(損失)処分案、資本 政策や株主提案といった面で一定の指針を作成、投資先企業の経営をチェックす る。具体的な個々の企業への対応については、こうしたガイドラインを示して実 質的な判断は運用会社に任せている。

その運用会社も株主権行使に積極姿勢を見せ始めている。山本平・コメルツ 投信投資顧問社長は、「理想として議決権行使に積極的に参加したい」と述べた。 同時に日本株で200社強に投資しており、こうした企業の株主権を個々に分析す るのはコスト的に難しいとして「現時点では議決権に積極的に参加していない」 とも語った。

数多くの投資企業の収益、財務を分析、議案を精査して総会で正否を投じる ことができる豊富な人的・資金的資源を持っている運用会社は多くはない。それ でも運用成績が厳しく問われる機関投資家が総会で物言うケースが増えているの は確かだ。

その代表格である厚生年金基金連合会は今回の総会で、投資企業の議案の3 割弱に反対票を投じている。議決権を保有する6月総会企業数は1286社で6233 議案あり、うち28%に当たる1743議案に反対票を投じる。ただ、企業業績が急 回復して業績基準で反対票を投じる企業が減ったことなどから、この比率は昨年 実績(43%)に比べて大きく低下した。

それでも退職慰労金の支給では58%の議案に反対する。収益が不振な企業を 中心に株主として支給に賛成しないという意向を明確にする。また、取締役の選 任でも51%の議案に反対する。

ソフトバンク、三菱自動車

452万人にも達する顧客情報漏洩が表面化したソフトバンクは24日、株主総 会を開催した。昨年を上回る1369人の株主を前に孫正義社長は情報漏洩について 「真摯(しんし)に受け止め、深く反省する」と陳謝した。総会ではむしろ情報 漏洩時の記者会見での孫社長の十分な対応を評価する声もあった。総会後の経営 説明会では孫社長の演説に会場から満場の拍手が沸き起こる場面があり、孫社長 はひとまず総会という機会を通じて株主の信頼を回復した格好だ。

経営再建中の乳業大手、雪印乳業は28日、北海道札幌市内で定時株主総会を 開催した。総会の会場では株主から早く配当してほしいとの要望が寄せられた。 これに対して高野瀬忠明社長は、再建計画を進めて2007年3月期には復配したい との意向を強調したという。

機関投資家に比べて機動的に動ける個人投資家の株主総会での存在感は増し ている。29日には相次いでリコール隠しが露呈し、信頼が地に落ちている三菱自 動車が、品川の本社ビル内で株主総会を開催する。総会終了後には岡﨑洋一郎会 長らの記者会見も予定されている。

三菱自の株価は先週初に157円まで下落、上場来安値を更新して株主離れが 進んでいる。こうしたなかで株主総会の機会を活用して投資家、株主の信頼を回 復させることができるかどうか――。三菱自は東京三菱銀行、三菱商事、三菱重 工業という3社を中心とするグループ企業の支援を受けて建て直しを目指してい る。同時に自動車という消費財を作っている点から経営再建に個人の支持は欠か せない。がけっぷちに立つ三菱自は、株主総会の場が企業再生に向けた試金石に なっている。

日産自動車の株価終値は、前日と同じ1211円。

--共同取材 小松恭郎、曽宮一恵、柿崎元子 Editor :Murotani

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