IPO“106連勝”主役は個人のネット取引、初値数倍にバブルの様相も

今週はIPO(新規公開)銘柄の初値動向に注目が 集まった。しかし、関係者の多くは、新興市場があまりに過熱気味、と警鐘を鳴らして いる。その原因は、インターネット取引の活発化と個人投資家の旺盛な投資意欲にある ようで、まさに、“バブル”の様相を示している側面が強い。

今週、株式の新規公開に踏み切ったのは5社、いずれもジャスダック市場に上場し た。全銘柄が公募価格を上回り、これで「公募割れなし」の連続記録は106と伸びた。 市場関係者はこれを“106連勝”と囃しているものの、中には公募価格を何倍も上回る 初値をつけたものもある。

今週上場を果たした5社とその初値をみると、8日に上場したのが発光ダイオード (LED)を利用した工業用照明装置開発・製造のシーシーエス(6669)で、初値130 万円で、公募価格の4.1倍。9日はマンション開発、分譲販売の明豊エンタープライズ (8927)で、初値は9300円と同3.1倍。

10日には2社が上場。移動体通信用のソフトウエアやネットワークのセック (3741)の初値は1万2000円で同6.2倍、また、アスファルト・コンクリート構造物の 切断、孔あけ工事の第一カッター興業(1716)の初値は1530円で同2倍。11日はベア リングや工業機械部品を製造するヒーハイスト精工(6433)で初値は1100円と同1.5倍 となった。

セックの初値が公募価格の6倍超となったことについて、エイチ・エス証券の市場 調査室長、落合冨太郎氏は「明らかに行き過ぎ」ときっぱり。松井証券社長室の渡辺将 志部長は「個人投資家のインターネットを使ったIPO銘柄に対する申し込みは今年1 月には1銘柄当り5000人程度だった。しかし、6月には、平均すると、1銘柄当たり1 万人と、ほぼ倍増した」ことにも原因があるとみている。

主幹事証券にも責任の一端

だが、それだけではない。独立系投資顧問のアセットアライブ代表取締役、下川勝 彦氏は「初値6倍超の水準まで達すると、投資側の行き過ぎとも言える一方で、値付し た幹事会社にも一定の責任が生じるのではないか」と、行き過ぎた相場の責任は幹事証 券にもあるとの見解だ。

ワールド日栄フロンティア証券投資調査室の藤井知明課長も「2000年以降の新規上 場の初値では、セックの6倍超は最高倍率。現在の相場状況を考えると、この高値を維 持することは難しいだろう」。セックが翌営業日にいきなりストップ安となったことを 踏まえ「やはり値付けは大切だ」。

そのうえで、藤井氏は「初値から何割下落した銘柄と、投資家に覚えられることは、 会社側の株式公開の意図とは正反対のものとなり、ネガティブな印象を植え付けること になりかねない」とも付け加えた。アセットアライブの下川氏も「株式の基本はあくま で長期保有。最近のIPO銘柄のように短期で資金を回転させる動きはあまり評価は出 来ない」と指摘する。

今後の動向について、髙木証券投資調査部長の関口健二氏は「個人投資家を中心に 短期で資金を動かす向きが多くなっており、初値を付けた翌日に売られるような局面が 当面は続くだろう」との見通しを示した。

初値を付けた直後に一転、翌日には売り優勢となる相場状況について、一部にはネ ットを通じた個人投資家による株式売買が原因ではないかとの見方に対して、松井証券 の渡辺氏は「意外にも、ネット利用の個人投資家はIPOの銘柄を保有するとのデータ がある」と述べ、ネット普及が必ずしも原因ではない、と反論。「むしろ対面販売の営 業マンが個人を中心に資金回転に伴う手数料稼ぎと顧客の利益確定を狙ってIPO銘柄 の売りを勧めているようだ」とも述べた。

今月は18日から残り4件のIPOが実施される予定。

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