【潮目を読む】小売株のPER水準切り上げ本格化―歴史の教訓は?

伊勢丹やイオンの株価が昨年来の高値圏で 堅調に推移するなか、株式市場関係者の間で、小売株の株価収益率(PER)の 水準訂正が本格化したとの声が聞かれ始めた。TOPIX小売株指数は2004年 の年初から4.2%上昇。TOPIXの上昇率を1ポイント以上上回って推移して いる。

ING証券調査部の柳平孝シニアアナリストは、このところの小売株の上昇 について、「経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)の改善によって、今後 半年から1年間は消費環境の好転が見込まれる。株価は既に来期以降の収益改善 を織り込むかたちで上昇し始めたのではないか」と分析している。

柳平氏がしばらくは景気回復期が続くとみる根拠は、鉱工業生産がプラスで 推移していることだ。「鉱工業生産の回復により、就業者数と所定外労働時間の 改善が続くと考えられる」のだという。

「上場企業に勤める世帯で消費改善」

実際、直近の数字をみると、鉱工業生産(季節調整済み前期比)が03年7 -9月(1.3%増)と同10-12月(3.7%増)の2四半期連続でプラスを継続。 輸出、設備投資の増加などを背景に伸びている。

また、製造業の就業者数(原数値)は03年10月以降、前月比プラスを継続 しているほか、製造業の所定外労働時間(残業時間)は前年水準を8%程度上回 って推移していて、雇用環境は改善の兆しがみえる。

みずほ証券エクイティ部の酒井祐輔課長は「昨年あたりから給与所得の二極 化が進んでおり、上場企業やそれに類する企業に勤める世帯の消費マインドが改 善している」と分析。高級品の取り扱いが多い百貨店銘柄に株式市場でも注目が 集まり始めているという。

デジタル一辺倒にあらず

内閣府が18日に発表した2003年10-12月期の実質GDP(国内総生産) は前期比1.7%増(年率換算7.0%成長)と約13年ぶりの高成長を示し、市場関 係者の間でポジティブ・サプライズ(良い驚き)となった。

1.7%の成長のうち、内需が1.3%のプラス寄与となり、成長率を押し上げ た。消費は同0.8%の増加。液晶テレビ、DVDなどのデジタル家電の伸びに加 えて、ゲーム機・玩具、家庭用器具、海外旅行、冠婚葬祭などが増えた。

デジタル家電の好調ばかりが強調されている昨今だが、供給側統計を詳細に 分析すると、「娯楽関連サービス、外食向け支出が増加に転じるなど、個人消費 の底堅さがマインドの堅調にも反映し始めており、必ずしもデジタル家電一辺倒 ではない面もうかがえる」(三菱証券・経済調査部の戸内修自シニアエコノミス ト)との声も出ている。

バークレイズ・キャピタル証券の山崎衛チーフエコノミストは、2004年度 を通じて景気が拡大し、実質GDPもプラス成長を続けると予想。「上期は主に 輸出と設備投資がけん引、下期は消費の伸びも加速して、GDPは実質、名目と もに加速する」とみている。

日本総合研究所は20日、10-12月GDP発表を受けて、同総研の経済成長 率の見通しを改定した。03年度は実質でプラス3.0%成長(従来はプラス

2.4%)、04年度はプラス2.5%成長(同プラス2.0%成長)と予想。それぞれ 上方修正した。個人消費は03年度、04年度ともに1.5%増と見込んだ。改定前 の予想数値は、03年度が0.9%増、04年度が1.1%増だった。

歴史の教訓

柳平氏は、90年代以降、3回あった景気回復期の小売株の動きに注目。セ ブン-イレブン・ジャパンとイトーヨーカ堂を除外した小売主要51社の平均PE R(修正PERと呼び換え)が鉱工業生産指数に連動していることを示した。

過去3回の景気回復局面では、日銀の金融緩和政策とあいまって、流動性相 場が形成され、3回とも修正PERが切り上がったのだという。「PERはボト ムから平均16ポイント上昇した」(柳平氏)と言い、今回の景気回復局面でも それを当てはめると、2003年2月につけたボトム(PER15倍)から、16ポイ ント上昇して、PER31倍まで評価し直される可能性もあるのだという。

ただこうした見方に対して、UFJつばさ証券の折見世記チーフ・ストラテ ジストは「株式相場を見渡すと、小売株より成長性が高くて財務内容も良い銘柄 がPER10倍台で放置されている現状がある。小売株がPER30倍まで評価さ れるのなら、株価はいまの2倍にならないとおかしい」と反論。

「デフレ下ではPERは切り下がっていくもの。インフレモデルがまったく 通用しない経済構造になってしまったことを認識しないといけない」(折見氏) という。果たして、どちらの説に軍配が上がるか?

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