セブンイレブン1万店到達(3)株式市場の期待-国際展開に向けて

セブンイレブン1万店達成の意義を検証す る3回シリーズの最終回は、同社に対する株式市場関係者の見方を紹介、今後 の国際展開に向けた課題などを探る。

ING証券調査部の柳平孝シニアアナリストは、セブンイレブンの問題点 を「磐石だが成熟してしまったこと」だと分析している。柳平アナリストは 「小売りとしては日本最強であったとしても、株式市場からみると単なるキャ ッシュの塊でしかない」と厳しい見方をしている。

9月2日終値を基にした同社の連結株価収益率(PER)は約31倍。東 証1部に上場する1529銘柄の平均値はPER22倍のため、かなりの割高と言 える。「マーケットは成長率を基本に物事を評価していくところ。これだけの 規模にもなると、分母が大きくなるため、成長率が鈍化したようにみられてし まう」(クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券の佐々木泰行シニアア ナリスト)。

今の高いPERを正当化するためには、株主資本利益率(ROE)をさら に高めて、PER水準を下げていくか、一段の増配などが求められる。

ただ、セブンイレブンの株価をめぐっては、「いまの利益率が20年間継 続すると仮定するならば、現在の株価も正当化される」(佐々木アナリスト) との見方もあり、株式市場は同社が安定的で永続的な成長を実現することを予 感しているのかもしれない。

新たな成長のカギ―中国進出の可否

セブンイレブンの新たな成長のカギは国際事業だとの見方は多い。野村証 券金融研究所の正田雅史アナリストは、「米小売業最大手ウォルマートが全米 で時価総額ナンバーワンになったのは2000年ごろ。ちょうど国際的なマネジ メント体制ができつつあったころだ。セブンイレブンが時価総額を高めるため には国際戦略が重要になる」と指摘している。

セブンーイレブン・ジャパンは、中国・北京市への進出を計画している。 同社が中国現地法人の過半数株式を保有したうえで台湾企業や現地企業などと 共同で中国事業を展開する計画で、現在は中国当局の許認可を待っている状況 だ。流通業界のなかには早ければ来年にも第1号店を開設できるとの見方も浮 上している。

CSFB証券の佐々木泰行シニアアナリストは、「中国でもコンビニに対 する需要は相当高い」と述べ、セブンイレブンが中国で成功する可能性が高い と予測している。ただ佐々木アナリストは、日本のコンビニ大手「全社が中国 で成功する可能性もある」とも述べており、三菱商事系のローソンや、伊藤忠 商事系のファミリーマートなどの中国展開にも期待を寄せている。海外でイン フラを構築するノウハウに長けた商社と、セブンイレブンが協力し合うのか、 競い合うのかに注目している。

一方、野村証券の正田アナリストは、アジア主要都市の1人あたり国民総 生産(GDP)水準を基に、その経済的な発展段階を日本と比較。2008年夏の オリンピック開催地となっている北京市は、日本の60年代半ば(東京オリン ピックは1964年)に相当するとみているほか、上海が70年代半ば、ソウルが 80年代初頭、台湾が80年代後半に似ていると指摘する。正田氏はセブンイレ ブンの北京市進出について、「コンビニの展開には時期尚早だ。5年ぐらい早 すぎる」との結論を導き出したと言う。

国際ブランドとしての「セブンイレブン」

「セブンイレブン」というチェーン名は、第2次世界大戦直後の1946年 に営業時間を朝7時から深夜11時にしていたことにちなんで名づけられた。 ただ、米国セブンイレブンの沿革をたどると、1927年の米サウスランド社の設 立が同チェーンの発祥だったことが分かる。米テキサス州オーククリフの小さ な氷屋から始まった「小売り便利店」は、約76年の月日を経て、世界18カ国、 2万6000超の店舗網を構築するに至った。

セブンイレブンの生みの親としてコンビニエンスストアの礎を築いた米サ ウスランド社は、1980年代に進めた多角化の失敗により、90年代初頭に事実 上破たんした。セブンイレブンという「ブランド」のイメージ悪化を懸念した イトーヨーカ堂は91年、サウスランドの要請を受けて米国セブンイレブンの 経営権を取得、その後の経営再建を主導してきた。

一般に小売りはローカルなものだと言われるが、チェーン名や企業名など の「ブランド」は非常に重要だ。それだけに野村証券の正田アナリストは「セ ブンーイレブン・ジャパン(SEJ)の構造的な死角はエリア・フランチャイ ズだ」と指摘している。

SEJは、現在、米国本土とハワイで展開するセブンイレブンの経営を掌 握しているものの、他のエリア(国・地域)の運営には携わっていない。台湾 セブンイレブンの運営主体は統一グループ、韓国セブンイレブンは大手流通グ ループのロッテが手がけており、同じセブンイレブン「ブランド」を使用して いても、SEJの意向が反映できないのが現状だ。

幸い台湾については好業績を続けているものの、韓国のセブンイレブンは 「親会社ロッテの企業文化は日本のダイエーとよく似ていて、直営店展開、拡 大政策をとっている。そのため、昨年は大赤字だったうえ、負債も増えてい る」(正田アナリスト)。SEJが築き上げてきたセブンイレブン「ブラン ド」が、異質な文化を持つエリア・フランチャイズに左右されるリスクも内在 する。

国際化が急速に進む現代にあって、セブンイレブンが国際ブランドとして 果たして生き残っていけるのか。「(国際的な)エリア・フランチャイズ戦略 が10年後には非常に重大な経営課題になる」(正田アナリスト)かもしれな い。

東京 鷺池 秀樹 Hideki Sagiike --* 03-3201-8293 hsagiike@bloomberg.net Editor:Ozawa

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