セブンイレブン1万店到達(2)トップランナーゆえの苦しみ-死角

1店1店の質を高めることに経営課題を絞 り込み、このほど1万店体制を構築したセブンーイレブン・ジャパン。「ライ バルは変化する顧客のニーズだ」(セブンイレブンの鈴木敏文会長)と言い切 る同社に死角はないのか。同業他社の経営幹部や小売業界を担当する証券アナ リストらに意見を聞いた。

国内流通大手、イオングループのコンビニエンスストア子会社「ミニスト ップ」で会長を務める陶山勝氏は、セブンイレブンに死角があるとすれば、 「いま強いことが最大の弱さ」だと指摘する。その理由として同氏は「(企業 が)大きくなると、落ちていく以外に道はない」(陶山会長)からだと言う。

陶山氏は「米ウォルマートや、英テスコの国際競争力は日本の小売業とは 比べものにならないほど高い」とみており、流通外資の相次ぐ日本進出で、業 界環境が劇変すると予想する。親会社イオンの岡田元也社長は、「コンビニ業 界内でのシェア争いに気を取られていると、他の業態にバクッと食われてしま う」とすら指摘している。

コンビニエンスストアは経営構造上、安売りができない。コンビニ店舗で 上がった粗利益は、本部(約4割)と加盟店(約6割)で分け合う仕組みにな っているため、値引き販売を多用すると加盟店の利益が削られ、フランチャイ ズ・ビジネスの根幹が揺らぐからだ。「同じ商品である限り、消費者は安いも のを選ぶ」(陶山会長)のは必然だ。外資系小売業の低価格戦略にセブンイレ ブンがどう対抗していくのか。

セブンイレブンがメーカーと協力して高付加価値商品の開発に取り組んで いることもリスクをはらむ。「コンビニはしょせん、コンビニでしかない。チ ェーン名で店を選んだことは一度もない」(週5日はコンビニを利用するとい う東京都在住の村井大亮さん、29歳・フリーター)という声もあるように消費 者のスタンスは様々。「僕らは単に一番近くにある店を使うだけ。そもそもコ ンビニに良質な商品を望んでいるわけではない」(村井氏)とする指摘をセブ ンイレブンはどう受け止めるのか。小売り関係者も注目している。

少子高齢化

ファミリーマートの上田準二社長は、コンビニ業界がなかなか60代以上の シニア世代をヘビーユーザー化(来店頻度の高い顧客)できないことを憂慮し ている。「(2002年3月の)社長就任直後からジェネレーション・マーケティ ング(世代別販売戦略)と言い続けているが、シニア世代の利用頻度が十分あ がらない」(上田社長)と言う。コンビニの顧客層は年々拡大し続けているも のの、高齢者の胃袋は一般に小さくなり、食欲も減退していく。2006年以降に 人口の減少が始まると見込まれる日本では、総需要そのものが縮小していく懸 念が浮上している。

需要の減少に加えて、店舗の運営に携わる加盟店主らの高齢化も気になる。 若いころに比べて熱意が落ちてしまった年配の加盟店主は、廃棄ロスを恐れて 発注を抑制する傾向が強い。発注量の減少は売り上げの減少に直結、売り場の 活気は次第に失せていく。

後継者問題と権限委譲

創業後30年間、陣頭指揮を執ってきた鈴木敏文会長も70歳を超えた。ポ スト鈴木をめぐる後継者問題もセブンイレブンの成長に大きな影を落とす。 「与えられた課題を1つ1つこなしてきた人材と、課題そのものを見つけ出す 人材は本質的に異なる」(ING証券の柳平孝シニアアナリスト)ためだ。

鈴木会長の経営思想は今後も脈々と受け継がれるとの見方もあるが、「改 革はすべてトップダウンでやらなければいけない」と公言してきた鈴木会長は、 セブンイレブンをトップダウン型の経営組織に仕立ててしまった。同組織を途 中から受け継ぎ、新たな成長のレールを敷くのは簡単なことではない。

加えて、1店1店の収益を重視する同社が、最近、地域密着型の商品開発 や、地域の状況に応じた店舗運営を志向し始めたことも将来的なリスクだと認 識されている。地域別、顧客層別の店舗運営が進めば進むほど、加盟店間の格 差も拡大。多様化や分権化が進展していく。「分権化の過程で経営の軸がぶれ てしまう恐れもある」(柳平アナリスト)。

セブンイレブンが出店していない地域に新規参入を続ける場合、「インフ ラを構築したり、地域限定商品を開発したりするための固定投資が膨らみ、バ リューチェーン(協力事業者)全体としての効率が犠牲になる可能性もある」 (野村証券金融研究所の正田雅史アナリスト)。本来は「都心型の業態」(正 田アナリスト)というコンビニが、食品スーパーやドラッグストアのひしめく 地方の郊外でどれだけ顧客をひきつけることができるのか、現段階では予想し にくい。

FC適正化へ法規制の動き

あまりに不均衡なコンビニ本部と加盟店の関係を是正しようという動きが 広がっている。2001年11月には経済法研究者ら5人が共同で「フランチャイ ズ(FC)取引の適正化に関する法律案要綱」を策定。法案成立に向けて加盟 店主らの意見集約を図っている。

加えて、国会でもFC適正化を求める質疑が相次いだ。その急先鋒と目さ れる民主党の金田誠一・衆議院議員(北海道比例、当選3回)は、「コンビニ は既に飽和状態にある。出店した分だけ古い店が潰れているのが実情だ」との 見方を示したうえで、「本部が加盟店を食いものにしている現状を国として見 過ごしていてはいけない」と強調する。

金田議員は、米国のFC関係法や、カナダ、韓国、オーストラリアの法規 制状況を説明しながら、「日本としても第三者機関を設置したうえで、本部と 加盟店の商取引が公正かを監視する必要がある。少なくとも加盟店主がコンビ ニ経営を辞めたくなったら、無条件で解約できるような仕組みを法制化した い」と法案成立に意欲を燃やす。

流通アナリストからも、「本部がもうけ過ぎではないかとの批判にこたえ ていくためにも、セブンイレブンが率先してフランチャイジーに利益を還元し ていかざるを得ない」(プリモリサーチ・ジャパンの鈴木孝之シニアアナリス ト)との声が挙がっている。

東京 鷺池 秀樹 Hideki Sagiike --* 03-3201-8293 hsagiike@bloomberg.net Editor:Ozawa

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