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日野社長:米市場シェア10%-中国で初のエンジン生産、年3万基

トヨタ自動車グループのトラックメーカー、 日野自動車の蛇川忠暉社長はこのほど同社本社(東京都日野市)で、ブルームバ ーグ・ニュースとのインタビューに応じ、海外の最重点地域として位置付けてい る米国市場で、低燃費の新型車種の投入などを図り、4-7トン級の中型トラッ ク市場でのシェアを現在の1%弱から2010年には10%に引き上げたいとの考え を示した。

また、中国市場については、年3万基の規模を視野に入れ、2005年にも同 社としては初のエンジンの現地生産に乗り出す方向で検討していることを明らか にした。

米国で燃費が10-15%良い新型トラック-開発費回収期間を短縮

蛇川社長は、トヨタなど日本の乗用車は、米国市場でここまでの地位を築く のに20年かかったとしながらも、「ダンピングすることなく品質で評価されて いる」と指摘。トラック業界も乗用車の歴史にならい、米国での展開は商品力で 勝負するとの考えを示した。

また、「中国では品質が良いと分かっていてもなかなか経済的に買えないと いう現実があるが、米国では中国と比べて豊かなため、トラックの品質に対して 対価を払ってくれるかもしれない」と述べ、より高い収益性が見込める米国市場 を最重点地域とすることを強調した。

日野自は現在、米国でボンネットのない「キャブオーバー」型の中型トラッ クのみを販売しており、年間実績2000台。今回、現地で主流となっているボン ネットのある「コンベンショナル」型の中型トラックを開発し、今年の秋に発売 する。競合車種に比べて燃費が10-15%良いのが特徴だ。原価低減も図り、一 般的に7年はかかる開発費の回収期間を5年に短縮したいとしている。

日本より厳しい米国の排ガス規制は商機

米国では07年に日本よりさらに厳しいディーゼル排ガス規制が施行される 予定で、蛇川社長は「大きなチャンス。日野のトラックが低燃費で故障しにくい などメンテナビリティに優れている点をアピールし、4-7トンクラスのトラッ クで2010年にはシェア10%を目指す」と意気込む。

同社はすでに、米国市場の生産・販売を強化するため、年内にも米国に初の 生産拠点を設置するほか、米リース販売大手のペンスキー・オートモーティブ・ グループとも提携し、営業担当役員をペンスキーから受け入れることなどを発表 している。

蛇川社長によれば、今まではペンスキーでは複数のメーカーのトラックを併 売していたが、今後は日野トラックだけを売る専任のセールスマンも置く。同社 長は「ペンスキーは、日野の商品力を高く評価してくれている」と述べ、販売網 の拡大が難しい米国において、ペンスキーの販売力が大きな役割を果たすことに 期待を寄せる。

中国で初のエンジン生産-高まる高性能トラック需要

一方、中国市場については、エンジン事業の拡大を急いでいると説明。05 年にも大型トラック向けエンジンの現地生産に乗り出すことを検討しており、 「極めて謙虚な見積もり」としながらも、年3万基を生産したいとの意向を語っ た。

3万基のうち、1万5000基は、現地の大手トラックメーカーへ供給。残り の1万5000基は、06年に現地生産を開始する日野ブランドの完成車に搭載した い考え。生産拠点の立地条件などをできるだけ早く決定し、エンジン供給先との 交渉を年内にも開始する。

中国では、08年に北京オリンピック、10年に上海万博など大イベントが控 えている。高速道路も予想以上のスピードで整備されているため、高性能なトラ ックの需要が高まっている。蛇川社長は「中国製では高速道路を走れるパワーを 持っておらず、環境対応も近い将来、求められる。そこに日野のチャンスがあり、 エンジンはできるだけ早く、05年にはなんとしてもとりかかりたい」としてい る。

蛇川社長はまた、小型トラック向けエンジン5000基を日本から輸出するか、 またはノックダウン(CKD)方式で生産することも検討中であることを明らか にした。2010年には中国でのトラック販売を2万台見込む。

東南アジアの市場てこ入れ-部品調達比率は最高60%にアップ

ただ、蛇川社長は中国市場は保有・販売台数面で世界一となるポテンシャル があるとしながらも、「価格面や政治面でのリスクは大きい」とみており、タイ、 インドネシア、マレーシアなどの東南アジア地域へのてこ入れもあわせて強化す る。「東南アジアは少なくともこれまでは“日本の庭”だったが、欧州勢が乗り 込んできた。販売力が弱いので、現地部品を採用して原価を下げ、マージンを高 めたい」と述べ、部品の現地調達率を現在の20%前後から50-60%に高めると している。

国内では完成車で“日野ブランド”をアピール

一方、国内では、10月から施行される政府の「新短期規制」など排出ガス 規制の強化に伴い、買い替え需要が増加している。蛇川社長は「特に東京都条例 は強い刺激になっている」と好調ぶりを語る。日野自によると、5月の大・中型 トラックの新車販売台数は前年同月比56%増と8カ月連続でプラス。規制を実 施している東京、埼玉、千葉、神奈川の1都・3県の南関東地区での販売台数は 同2.1倍だった。

小型トラックも好調だ。羽村工場(東京都羽村市)では9日から「デュト ロ」などの組み立てラインの勤務を、従来の1交代から2交代にし、生産量を5 割増加できる体制に整えた。同社が小型トラックの組み立てラインを二直制にす るのは初めてのこと。

蛇川社長は「地方自治体による規制が南関東圏だけでなく、関西や東海地区 など全国に広まれば、もっと販売拡大が期待できる」と説明した。ただ、05年 に始まる政府の「新長期規制」までは買い替えが進むが、その後は需要が一巡す るとの見方が一般的なため、蛇川社長は「保有台数が読めない」と語る。

こうしたなか、日野はシャーシー(台車)、荷台などの基本設計から開発、 生産まで一貫して行い、“日野ブランド”を打ち出した完成車を売ることなどで 競合車種との差別化を図る。蛇川社長はメーカー同士で「同じものを作って叩き 合うのは悲劇だ」とし、乗用車のように、今後トラックもブランドなどで差別化 していく必要性を強調した。

また、「日本でどういう競争をしているかが大切。日本というシビアな市場 で評価してもらえて、初めて海外で戦える。日本の延長線上に中国があり、米国 がある」と述べた。

新光証券の北山信次アナリストは、「日本市場が買い替え需要の後に縮小し ていくなかで、海外展開は生き残るために避けて通れない。中国は、いすゞ自動 車など日本の競合メーカーと比べてスタートダッシュが遅れた感は否めないが、 エンジンの生産規模などは勝算があってはじき出した数字だろうし、積極的に海 外に取り組むことは評価できる」とし、「あとは、米国市場を含めて、どれだけ 日野のトラックが現地で受け入れられるかどうかがカギだ」との見方を示した。

日野自の株価の午前終値は前週末比変わらずの542円。

東京 白木 真紀 Maki Shiraki --* (03)3201-7644 mshiraki1@bloomberg.net Editor:Hinoki

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