東京電力:あすで全原発停止、夏前に順次再開か-柏崎6号機有力(2)

原子力発電所のトラブル隠しが昨年 夏に表面化した東京電力は、あす福島第一原発6号機を停止させ、保有する全 17基の原発の稼働がすべて止まる。検査報告の偽装発覚による行政処分や他の 原発の再検査により、総発電出力の約3割を担う原発のすべての発電量を失う ことになる。

東京電力は原発の自主点検記録で国への報告義務を怠った「不適切な取り 扱い」があったと昨年8月29日に発表した。これによる国の処分や追加検査で 原発を順次、停止している。3月末までにすでに16基を止め、残る福島第一6 号機も15日に停止する。原発の発電出力は1730万キロワット(kW)と、東京 電力の総出力(6037万kW)の約29%を占めている。

この不祥事で当時の南直哉社長、榎本聡明副社長、荒木浩会長、平岩外四、 那須翔の両相談役がいずれも引責辞任、原発への国民の信頼を失墜させ、国の 原子力政策に影を落とすなど、巻き起こした影響は小さくなかった。

原発の代わりに停止火力発電所を再稼働させて電力供給力を補うため、燃 料費を含めて1400億円の追加コストが発生する。このため、2003年3月期の下 期は連結純損益が279億円の赤字に陥る。ブルームバーグ・ニュースが集計し たアナリスト6人の中央値は240億円の赤字、冬の寒さで電力販売が伸びたこ とで赤字額はやや縮小すると予想している。決算発表は5月20日の予定。

柏崎刈羽6号機きょう稼働前試験

今後は原発の再稼働時期が焦点になる。東京電力は各原発の点検を急ぎ、 その安全性を立地点である福島県と新潟県に説明していく。再稼働に向けて一 日も早く地元の理解、了解を得る意向だ。需要期の夏には火力発電所の試運転 電力を活用、他電力が緊急で電力を供給しても820万-850 万kWの電力が足り ず、「原発10基程度を運転させる必要がある」(勝俣恒久社長)。

国も同様の姿勢で平沼赳夫・経済産業相は、東京電力の供給区域である関 東地域で「絶対に停電が起きないように、さらに努力をしていきたい」と強調 し、場合によって福島県や新潟県に直接、足を運ぶ用意があることを示した。

みずほ証券の角田樹哉アナリストは、東京電力の地元説明が続くなかで「原 発再稼働に向けた環境が整いつつある」と分析、アナリストの間でも「電力需 要期の夏までには順次、10基程度の原発が立ち上がっているとの見方が一般的」 と述べた。

実際の再稼働に際しては、個別号機ごとに立ち上がっていく公算が大きい。 原発で問題になっている2つの設備である原子炉圧力容器内の炉心隔壁(シュ ラウド)と再循環系配管について、柏崎刈羽6号機はシュラウド対策を済ませ、 原子炉の型として再循環系配管は備えていない。新潟県知事も個別号機ごとに 住民の了解を取ることも1つの選択肢といったことを示唆している。

再稼働の時期については、稼働の前提になる格納容器漏えい率検査(リー クテスト)の実施日が1つのかぎになる。柏崎刈羽6号機のほか、福島第一3 号機、福島第二1号機はこのリークテストの実施がいったん延期されたが、う ち柏崎刈羽6号機は14日からテストが始まる。

東京電力は柏崎刈羽6号機のテストをインターネットのホームページで公 開する。原発の再稼働はまずこの柏崎刈羽6号機が有力で、続いて福島第一3 号機、福島第二1号機も候補になる。

東京電力はまず、こうしたテストを実施したうえで個別号機を設備として 安全な状態にもっていき、地元の理解を得られ次第、個別に再稼働させていく 方針だ。経済産業省にも供給計画の修正計画を提出する。

原発の再稼働が軌道に乗れば、高水準を計画している重油・原油、液化天 然ガス(LNG)の調達量も減らすことが可能になり、コスト減を通じて収益 押し上げ要因になる。

東京電力の11日株価終値は、前日比15円(0.6%)高の2380円。社債(償 還期限2012年4月26日、利率1.49%)の終値気配は106円62銭、利回りは

0.71%、同年限の国債との利回り格差(スプレッド)は11.0ベーシスポイント で、この格差は昨年秋の7ポイント台から拡大している。

        【東電原発17基の稼働とシュラウド、再循環系の現状】
         (●停止中、○運転中、*はリークテストが延期)

発電所   シュラウド 再循環系        備    考
<<福島第一>>
1号機●  対策済み  対策済み(行政処分で11月30日まで停止)
2号機●  対策済み  対策済み(定期検査中、3月31日に停止)
3号機●*対策済み  対策済み(定期検査中、昨年7月18日に停止)
4号機●  ひびあり  対策済み(定期検査中、昨年9月16日に停止)
5号機●  対策済み  対策済み(定期検査中、2月11日に停止)
6号機○  点検予定  対策済み(4月15日停止予定)
<<福島第二>>
1号機●*ひびなし  ひびなし(定期検査中、1月7日に停止)
2号機●  ひびあり  ひびあり(停止中、昨年9月3日に停止)
3号機●  ひびあり  ひびあり(定期検査中、昨年9月16日に停止)
4号機●  ひびあり  ひびあり(定期検査中、昨年10月13日に停止)
<<柏崎刈羽>>
1号機●  ひびあり  ひびあり(定期検査中、昨年9月3日に停止)
2号機●  ひびあり  ひびあり(定期検査中、昨年9月20日に停止)
3号機●  ひびあり  ひびあり(定期検査中、昨年8月10日に停止)
4号機●  ひびなし  ひびあり(定期検査中、1月7日に停止)
5号機●  点検予定  点検中  (定期検査中、3月1日に停止)
6号機●  対策済み  配管なし(定期検査中、1月27日に停止)
7号機●  点検予定  配管なし(停止中、3月29日に停止)

【東京電力の業績予想】(単位:百万円、-は赤字)

<<前期(2003年3月期)>>

売上高 営業利益 経常利益 純損益 平 均 4863150 434500 213816 132450 (会社予想) 4870000 430000 210000 128000 下期算出 2412296 65343 -36338 -23428 (会社予想) 2419146 60843 -40154 -27878 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 阿部氏 4900000 450000 220000 134000 河内氏 4798900 430000 209900 129700 橋本氏 4820000 410000 210000 128000 宇高氏 4900000 437000 202000 140000 須田氏 4870000 430000 210000 128000 角田氏 4890000 450000 231000 135000

<<今期(2004年3月期)>> 平 均 4876500 484533 267566 166283 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 阿部氏 5010000 500000 300000 188000 河内氏 4883000 409200 195400 120700 橋本氏 4770000 500000 300000 180000 宇高氏 4935000 510000 250000 170000 須田氏 4800000 470000 250000 150000 角田氏 4861000 518000 310000 189000 *T (阿部氏は大和総研の阿部聖史アナリスト、河内氏はみずほインベスターズ証 券の河内宏文アナリスト、橋本氏は野村証券の橋本尚人アナリスト、宇高氏は 三菱証券の宇高忠俊アナリスト、須田氏は水戸証券の須田高アナリスト、角田 氏はみずほ証券の角田樹哉アナリスト)

東京 上野 英治郎 Eijiro Ueno --* (03) 3201-8841 e.ueno@bloomberg.net Editor : Abe

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