米経済コラム:投資家の「愚かさ」を口にする愚

どんな商売でもそうだが、仕事の 場で赤裸々な真実を語ることは賢いことではない。資産運用会社スレッドニー ドル・アセット・マネジメントのサイモン・デービーズ最高経営責任者(CE O)には、この微妙さが分かっていなかったようだ。

同氏の言動は今週、ロンドンでちょっとした波紋を起こした。金融街のバ ーではよく聞かれる話だが、通常、勤務時間中に耳にすることはない発言をし たからだ。同氏は、顧客である投資家を「愚か者」と呼んだのだ。

同氏は英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「人間は愚かな 判断をするものだ。3年前にはハイテク株を買いまくり、今は不動産市況のピ ークに大きな家を買っている」と語った。さらに、ファンドマネジャーが投資 家の愚行をあおったことは認めながらも、「火種は既にあった。われわれは水を かける代わりにちょっと油を注いだだけ。火事の元は個人投資家のどん欲さだ」 と、自分たちの責任を認めようとはしなかった。

想像に難くないことだが、この前代未聞の正直さは、平凡な市民の愚かさ を擁護するのが仕事である消費者団体の逆鱗(げきりん)に触れた。「何様だと 思っている」と消費者協会が突き上げれば、「あきれ果てた」と何人かのファン ドマネジャーがこみ上げる笑いを押し殺しながら調子を合わせる。

慌てたデービーズ氏は、こんな場合のお手本通りに、発言がねじ曲げられ 誤解されたと弁解した。本当は、お客様は一人残らず第一級の頭脳の持ち主と 信じていますというわけだ。

もちろん、同氏は恐らく、多くの投資家の知能レベルは低いと思っている し、彼の同業者の多くもそう思っているだろう。

大きな罰

この騒動について、次の3点が指摘できる。①デービーズ氏の言う通り、 投資家の大半は愚かである②ファンドマネジャーがそれを認め始めたというこ とは、彼らがひどいストレスに悩まされていることの表れである③デービーズ 氏は失言をした。

ここ10年の市場を見てきた人なら、人間の愚かさについて語ることに不自 由はしない。投資家はバブルに踊ってインターネット株や通信株をばかげた高 値にまで押し上げた挙句、相場が底を打とうとしている今、株を捨てて不動産 や債券にカネを注ぎ込んでいる。

多くのファンドマネジャーは、自分の力の及ばない出来事について大きな 罰を受けている。ストレスがたまることだろう。正しい判断力を失う者が出て くるのも無理からぬことだ。

そうではあるが、デービーズ氏の発言は愚かだった。たいていの人間は、 物を買うときに合理的な判断をしてはいない。速い車を買えば女性にもてると か、洗剤のメーカーを変えれば子供が服を汚さなくなるとか、投信を買えば金 持ちになれるとか、そういう願望を込めて買うのだ。

かなわぬ願望

しかし、車や洗剤を買うときの願望がかなわないのと同様に、投信を買っ てもウォーレン・バフェット氏のように投資で儲けて大金持ちになることはで きない。投資家がファンドマネジャーに対してせいぜい期待できることは、相 場上昇時に財産を増やしてくれ、下落時には財産の目減りを最小限に抑えてく れることくらいだ。

ただ、この事実を投資家に告げるファンドマネジャーは愚か者だ。顧客の 「どん欲さ」や「愚かさ」を口にするのはもっと愚かだ。そんなことを正直に 言ったところで得られるものは何もなく、失うものは大きい。 (マシュー・リン)

(リン氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内 容は同氏自身の見解です)

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