訂正:コンビニ名古屋の陣:Xデーは11月―セブンがサークルに攻勢

「3年後には顕著なドミナント(高密 度集中出店)化を実現したい。年度内に60―70店の出店を行う」――。“不言 実行を良し”とするセブンイレブンとしてはめずらしく、工藤健社長が愛知県 進出の詳細を11日明らかにした。

1店あたりの1日平均売上高(平均日販)が他チェーンより10万円以上も 高いセブンイレブンが、年間100店ペースで中京圏に大量出店していくという のだからコンビニ業界への影響は大きい。同地域での各チェーンの浮き沈みが、 全国規模での店舗運営に波及する可能性もあるためだ。セブンイレブンの進出 戦略と、迎え撃つ側の戦略を探った。

「Xデーは11月」

工藤社長によると、7月にも、豊橋など愛知県の東部地区(国道1号線沿 いが中心)への出店を行う計画で、11月中に愛知県内の弁当工場・共同配送セ ンター(愛知県日進市)を本格稼動させる考え。「Xデー(最初の名古屋市内へ の出店日)は11月」。一気に名古屋市内への出店を進める計画だ。

証券アナリストの間では、11日に公表された出店計画について、予想の範 囲内だったとの見方が多い。昨秋の中間決算発表時に、愛知進出意向が既に示 されていたためだ。

今年3月以降に、セブンイレブンが浜松市や名古屋市で行った加盟店主(オ ーナー)募集の説明会などをキャッチ、その規模などから、ある程度初年度出 店数が50店以上になると予測できたという。

「傷口が深くなる」

ただあらためて、業界環境を見直すと、「中京3県で、ほとんどの収益を上 げているサークルケイ・ジャパンは特に、(セブンイレブンの参入で)平均日販 が削られると傷口が深くなる。サークルKがどれだけ日販を確保できるかが今 年のカギになる」(国際証券エクイティ調査部の金森淳一アナリスト)との声も 聞かれる。

サークルKは、サンクスアンドアソシエイツと2001年7月に共同持ち株会 社「シーアンドエス(C&S)」を設立。サークルKが中京圏でセブンイレブン の攻勢に押されるようならば、「C&Sの中長期成長にも影響が出る。株価にも ネガティブに働くだろう」(金森アナリスト)というのだ。

業界4位のC&Sに対する投資家の関心低下により、業界の再編機運が高 まる可能性も出てきそうだ。

ドミナント戦略

一方、業界の雄、セブンイレブンは1974年5月の江東区豊洲店の第1号出 店以来、東京などの首都圏を地盤に店舗規模を拡大。現在は31都道府県で9060 店(今年2月末)を展開している。

全国規模で店舗網を構築することを優先した業界2位のローソンなどと比 べて、セブンイレブンは、狭い地域に店舗を高密度出店する「ドミナント戦略」 を継続している。デフレ経済下の2002年2月期においても、平均日販は66万 1000円を確保、2位グループを大きく引き離している。

セブンイレブンの強さは新店出店の質の高さに起因しているとの見方が一 般的だ。2002年2月期の新店日販は前の期比7000円増の55万8000円と、2位 以下に対して少なくとも5万円以上の差をつけている。

出店時から平均日販が高い店舗は、1年、2年と年月が経過していくなか で売り上げを伸ばしていく傾向が高い。このため他チェーンとの格差がますま す広がっていくという構造になっている。

「企業城下町」の争い

一方、愛知県を中心とした中京圏は日本型コンビニエンスストア発祥の地 でもあり、主要大手チェーンが「地盤」と位置付ける地域でもある。

中京圏のコンビニ展開については、まず、盛田グループのココストア(名 古屋市中区)が71年に、セブンイレブンに3年先がけて、名古屋市藤山台に第 1号店を開店、酒屋を中心にコンビニ店への転換を図り、店舗規模を拡大して いった。

名古屋地盤のスーパー、ユニーは79年からサークルKの展開を開始、もと もと三重県から出発したイオングループ(旧ジャスコ)も、82年にミニストッ プの出店を開始した。

愛知、岐阜、三重の3県で1087万人の人口を擁する中京圏はトヨタ自動車 などの好業績企業が多く、勤労者世帯の可処分所得は全国平均より多い。総務 省の家計調査によると、2001年の東海地方の年間平均可処分所得は47万2682 円で、全国平均の46万4700円を上回っている。

また、モータリゼーション(自動車社会)も進んでおり、大型駐車場を併 設した郊外店舗の既存店売上高はプラス基調で推移してきた。

「特段、驚きではない」

同地区で3割以上のシェアをもちダントツ首位のサークルKでは、セブン イレブン社長の今回の発言について、「ほぼわれわれが想定していた内容で、特 段、驚きではない」(企画室の西尾直見・室長)とコメント。準備には余念がな い様子だ。

しかし、サークルKの動向などに詳しい業界関係者によると、同社は昨秋 以降、取引先などを通じてセブンイレブンの行動を逐一チェック。セブンイレ ブンの社内でさえ秘密裏に進められている愛知県内の工場設立予定地をも事前 に割り出していたもようだ。

また、名古屋市近郊の店舗予定物件の争奪戦をめぐっては「競り合って負 けた事例も一部あったと聞いている」(サークルKの山﨑雅司・商品本部長)と 3月上旬に話しており、開発部を中心に危機感が強かった。

大阪攻め

セブンイレブンの大都市圏への進出戦略をみるうえで、最も典型的な先例 といえるのは、工藤社長が11日にいみじくも指摘した大阪だ。

ローソンの牙城(がじょう)ともいえる大阪圏に対して、セブンイレブン は95年11月、同社の取引先大手わらべや日洋と組んで、摂津市に弁当工場と 共同配送センターを新設した。

11月から12月にかけて堺市、池田市、八尾市、茨木市、大阪市西区、兵庫 県宝塚市に計8店を出店した。大阪中心部の繁華街を避け、幹線道路から1本 なかに入った生活道路沿いや、新興住宅地などから攻めていった。

工藤社長は「大阪でドミナント効果を出すには5年かかった」。本格出店開 始から5年間で大阪200店体制を築いていたことを参考にすると、名古屋圏で は3年間で、少なくとも200店超の店舗体制をつくりあげる計画だと捉えるこ とができよう。

また、既存の物流インフラを利用した静岡や和歌山などからの延伸も考慮 すると、3年後に中京圏で300店以上の店舗を展開している可能性も高い。

国内1万店構想

名古屋で300店体制を築くのとほぼ時を同じくして、セブンイレブンはか ねて標ぼうしてきた国内1万店体制が完成するとみられる。

日本フランチャイズ協会によると、2001年の年間店舗の純増数は過去最低 の1000店にとどまった。セブンイレブンがそのうち458店の純増となっている ため、他の13チェーンはほぼ現状維持か、閉店のほうが多かったと言える。

2001年12月末現在で3万6486店、年間販売額が6兆6779億円(前年比

2.9%)となった国内コンビニ産業。消費者側からも店舗過剰感が指摘されるな か、業界内外で名古屋“陣取り合戦”の行方に対する注目度が高まっている。

セブンイレブンは「1万店は通過点に過ぎない。東京だってまだまだ店を 出していける。来年度(2004年2月期)以降はしばらく年間1000店超の出店を 行っていく」(氏家忠彦・専務)とあくまで強気だ。

参考データ:中京・東海圏の2001年2月期営業状況:(カッコ内は前期比)
出所、隔月誌コンビニ2002年2月号(商業界)

●セブンイレブン
           店舗数           売上高             平均日販
静岡県    344店(+ 7)    830億円(+ 0.6%)     66.8万円(-2.0%)
愛知県       ―               ―                  ―
三重県       ―               ―                  ―
岐阜県       ―               ―                  ―

●サ―クルK
静岡県    304店(+ 6)    529億円(+13.3%)     48.2万円(+10.8%)
愛知県    814店(+15)   1688億円(+13.5%)     57.3万円(+11.8%)
三重県    204店(+ 3)    383億円(+14.6%)     51.9万円 (+11.8%)
岐阜県    226店(+ 6)    416億円(+15.8%)     51.2万円(+12.2%)

●ファミリーマート
静岡県    201店(+ 4)    300億円(- 0.3%)     41.4万円(- 1.7%)
愛知県    349店(+35)    602億円(+ 8.7%)     49.8万円(+ 1.1%)
三重県     95店(+ 6)    158億円(+ 8.1%)     47.2万円 (- 0.5%)
岐阜県     64店(+ 8)    100億円(+ 6.0%)     45.7万円(- 3.5%)

●ローソン
静岡県    180店(- 5)    294億円(+ 2.4%)     44.2万円(+ 1.5%)
愛知県    325店(+ 1)    560億円(+ 2.4%)     47.3万円(+ 2.3%)
三重県     61店(+ 8)     96億円(+20.1%)     46.5万円 (+ 4.6%)
岐阜県     83店(+ 5)    121億円(+ 3.2%)     41.3万円(- 0.4%)

●ミニストップ
静岡県     67店(+31)     81億円(+90.5%)     43.1万円(+ 0.1%)
愛知県    178店(+ 2)    316億円(+ 7.1%)     49.1万円(+ 3.5%)
三重県     44店(+ 6)     74億円(+20.3%)     49.9万円 (+ 3.0%)
岐阜県     58店(+ 9)     89億円(+36.2%)     46.0万円(+ 9.8%)

東京 鷺池 秀樹 Hideki Sagiike --* 03-3201-8293 hsagiike@bloomberg.net Editor:Kaimai

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