生と死の狭間で、進むべきか退くべきか―合従連衡進む携帯業界(解説)

携帯電話端末業界で提携や撤退が相次 いでいる。28日には、ソニーとエリクソンが合弁会社の設立で正式に合意した ほか1週間前には国内1位の松下通信工業と2位のNECが次世代携帯電話端 末の開発を中心に提携すると発表した。また、下位メーカーのパイオニアは、 次世代サービス向けの携帯電話は自主開発しない方針を明らかにしている。

携帯電話端末は、インターネットの閲覧や動画の送受信が可能になるなど、 高機能化が進み、開発コストが増大している。それでも、市場が昨年までのよ うに好調に拡大しているうちは良かったが、今年は成長が急激に鈍ったため、 端末メーカー各社は利益の確保に苦しんでいる。このためアナリストの間では、 今後も業界再編が続くとの見方が多い。

大手でさえ赤字-提携は「単独での製品開発の限界」

携帯電話端末市場は、昨年、最終需要を上回る台数が通信事業者向けに出 荷され、世界的に在庫が積み上がった。この反動で、今年は出荷台数の伸びが 大幅に鈍化している。

一方、需要も、最大市場の欧州で、データ通信サービスの立ち上がりが遅 れているため、メーカーの思惑ほど広がってはいない。日本市場も、既存サー ビス向けが成熟市場となりつつある中で、次世代サービスの本格展開は当初予 定より後倒しになっており、急回復は期待できない状況だ。

こうした環境下で、大手のエリクソンや松下通工などでさえも、大幅赤字 に転落。野村証券金融研究所の宮崎智彦アナリストは、NECと松下電器産業 グループの松下通工の提携は「国内の1位、2位の会社ですら次世代向けは単 独での製品開発に限界が来たことを認めたものだ」と指摘、「まだまだ予想外の (再編の)動きがあるだろう」とみている。同氏は特に国内3位の三菱電機や 同4位のシャープの動向に注目しているという。

INGベアリング証券のアナリスト、リチャード・チュウ氏も「成熟市場 において(業界再編は)当然の流れだ」として、一段と集約が進むと予想する。

下位メーカー、次世代向け端末への早期参入に疑問

トップメーカーが赤字に陥る環境であれば、下位メーカーの状況はさらに 深刻だ。デンソーは、現行サービス向け機種でさえ、今年5月にケンウッドと 京セラに携帯電話端末の生産を委託すると発表した。

現行機種とはいえ、インターネット対応やOS(基本ソフト)を選ばない プログラミング言語「Java(ジャバ)」の搭載など、高機能化が進み、商品 サイクルの短さと合わせて、メーカーの負担は大きい。

ましてや次世代サービス向けは全く新しい通信方式を採用するため、蓄積 のないところから開発を始めなければならない。

そのために必要な巨額の費用や経営資源を投じて、急いで参入することの 意義を問い直すメーカーも増えている。下位メーカーは、技術的に高い壁を乗 り越えて、次世代端末の開発に成功しても、数量効果が享受できず、出荷先で ある通信事業者との価格交渉力もないため、利益確保が一段と難しい。

自主開発をしない方針を固めたパイオニアは、プラズマディスプレー(P DP)やDVD(デジタル多用途ディスク)といった同社の戦略商品に経営資 源を振り向ける一環で、「次世代携帯電話の端末事業は先行投資をして取り組む ものではないと判断した」(広報部の葛原眞氏)。

開発を中止しないまでも、日立国際電気やケンウッドなど、次世代携帯電 話の市場の立ち上がりを確認するまで、製品投入は見合わせるとしているメー カーもある。

ハイテク専門の調査会社、日本ガートナーグループの光山奈保子アナリス トは、「次世代サービスがどの程度受け入れられるか分からない現段階で、多額 の投資をするのは危険だ」と指摘し、メーカーの決断を評価する。

撤退できないメーカー

ただ、大和総研の益子博行アナリストは、携帯電話端末市場でのシェアは 小さくても、他の事業分野とのシナジー(相乗効果)を期待できるため、次世 代携帯電話端末の開発を止められない企業もある、と分析する。

例えばデンソーは自動車関連通信事業、カシオ計算機は携帯情報端末(P DA)事業への、通信技術の応用を狙い、携帯電話端末の開発を続ける方針だ。

富士通と日本無線は、強みとする無線基地局など通信インフラ事業の強化 のため、端末事業を規模は小さくても継続する。ネットワーク全体の相性の問 題で、「インフラ系だけでは分からないこともあり、技術革新の早い端末系を知 らないと、遅れてしまう」(日本無線の池田典弘広報グループ長)からだ。

ただし、両社は今年4月に次世代携帯電話端末の無線技術のソフトウエア およびハードウエアの開発を担う合弁会社を設立済みで、負担軽減を進めてい る。

魅力的な提携先の不足

中堅メーカーには別の悩みがある。IGNベアリング証券のチュウ氏は、 日本の中堅以上のメーカーが事業拡大を図って提携相手を求めても、魅力的な 候補が見当たらなくなっていると指摘する。

海外メーカーの日本メーカーに対する関心は低くない。日本では世界に先 駆けて次世代携帯電話サービスが始まっており、技術面で先行者メリットが得 られる日本メーカーとの提携は、海外メーカーにとってもプラスになる。

さらに、ロンドンのベア・スターンズ・インターナショナルのアナリスト、 チャバン・ボゲイタ氏は「特に欧米で需要が減速しているいま、欧州メーカー は極東を成長市場とみている」と指摘する。

しかし、日本メーカーが欲する海外での有力な販売網を持つ大手メーカー のうち、すでに世界4位の独シーメンスは昨年11月、東芝と次世代携帯電話の 共同開発で合意。同3位のエリクソンはソニーと開発や設計、新ブランドでの 販売などを担う合弁会社の設立を正式に決めている。最大手ノキアと2位のモ トローラは当面、提携には関心がないとみられている。

光山アナリストは今後、大手が次世代端末の開発に取り組み、下位メーカ ーから現行世代のOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受ける関係が増 えることもあろうと予想する。現行サービスで海外と異なる通信方式を採用し た日本では、三洋電機がノキアに、日立国際電気がエリクソンに日本市場向け の端末をOEM供給していたこともある。

世界で大きく勝ち残る企業、小規模ながらも収益を確保する企業はどこか、 国内メーカー同士の提携が奏功するのか、海を越えた組み合わせが強いのか、 勝負はすでに始まっている。

【世界の携帯電話端末市場シェア】(野村証券金融研究所、8月22日現在) 1位 ノキア(フィンランド) 2位 モトローラ(米国) 3位 エリクソン(スウェーデン) 4位 シーメンス(ドイツ) 5位 松下通信工業 6位 アルカテル(フランス) 7位 三菱電機 8位 サムスン電子(韓国) …

11位 NEC

【国内の携帯電話端末市場シェア】(大和総研、2000年) 1位 松下通信工業 2位 NEC 3位 三菱電機 4位 シャープ 5位 ソニー 6位 三洋電機 7位 東芝 8位 京セラ 9位 富士通 10位 日立製作所

東京 鈴木 恭子 Kyoko Suzuki JK --* (03)3201-8868 ksuzuki3@bloomberg.net

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