米経済コラム:それでも利益相反はなくならない

数カ月前、わたしは当時、 米証券取引委員会(SEC)の執行部長だったウォーカー氏とたまたま顔を合 わせる機会があった。ジョナサン・リベドという15歳の少年に対するSECの 摘発について取材するため、当時SEC委員長だったレビット氏を訪ねたとき のことだ。

この少年は小型株を購入したうえで、ほかの人もこの株を買うべきだとす るメッセージをインターネット上に掲載。この行為を繰り返すたびに株価を押 し上げ、うまく売り抜けていた。しかし、SECはこの投資手法を違法と判断、 これをやめさせた。

わたしは、少年の行為とウォール街のアナリストが日常的に手掛けている ことが倫理的にどう違うかをレビット氏に尋ねた。満足に答えられなかった同 氏がウォーカー氏を呼んだので、同じ質問を浴びせると、同氏はとたんにうろ たえ出した。ウォール街のアナリストは自分たちが推奨する株式を保有してい ないのだから、こうした論点はおかしいという返事だった。

自主規制

わたしはウォーカー氏をとがめなかった。というのは、彼は質問の意図を 理解していたと思うし、大半のジャーナリストが取材先の株式などの保有を禁 じられていることを考えれば、もっともな言い分に思えた。それにウォール街 には、真実を語る意欲をアナリストから奪うようなもっと深刻な利益相反があ る。大企業に否定的な投資判断をつければ、アナリストの勤務する会社がその 企業から投資銀行業務を獲得し巨額の手数料収入を得ることは困難になる。こ れはすべてのアナリストにとって自明の理だ。

数日前、スイスの金融グループ、クレディ・スイス・グループ傘下の投資 銀行クレディ・スイス・ファースト・ボストン(CSFB)は米大手証券メリ ルリンチに続き、今後アナリストが担当企業の株式を保有することを禁じた。 だが同時に、アナリストに対し、株式公開を手掛けた企業への投資を容認し、 その後で担当者にすることが、「ドット・コム企業への人材流出を阻止するも う1つのインセンティブだった」(CSFBの広報担当ハーモン氏)という実 態も明らかになった。

人材流出

だが、ここで本当に言いたいのは、アナリストが私利私欲を図っていると いうことではない。メリルやCSFBは利益相反と思える部分を解消したと思 わせたいのだろうが、恐らく状況を悪化させただけではないか。

アナリストが他人に推奨する銘柄を自己保有できなくなれば、ウォール街 の分析は現実から一段とかけ離れるだけだ。制度を改善したいなら、アナリス トに実際考えていることを吐き出させ、推奨した銘柄に自分の賞与を投じるこ とを義務付けたうえで、少なくとも1年間はその銘柄を保有し続けるようにす ればいいという賢明な指摘もある。もちろん、実態を伴わずに改善したとみせ かける方法を経営陣が競って模索するような不健全なウォール街では、こんな まともな考えを試す機会は実現しないだろうが。

メリルやCSFBで企業や業界の将来に深い洞察力を持つアナリストは今 後、アナリストを辞めて見返りの得られる職場で働きたくなるだろう。そうな れば、ウォール街の分析の質は当然ながら低下する。

メリルやCSFBの経営陣は、それを知っているはずだ。だから、彼らが この対策に本腰を入れることはないと考えた方がいいだろう。アナリストによ る意見のでっちあげを招くような深刻な利益相反は、総じて解消されない。深 刻な利益相反こそ莫大な利益を生み出す源なのだから。 (マイケル・ルイス)

(ルイス氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストで、同氏の見解は 彼自身のものです)

バークレー Michael Lewis 、 東京 山口 裕子 Yuko Yamaguchi        MK --*(03) 3201-8984、 yuyamaguchi@bloomberg.net

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