小売業、規制緩和から1年-百貨店、スーパーに恩恵、コンビニは一部

2000年6月の大規模小売店舗立地法(通 称:大店立地法)施行からほぼ1年が経過し、都心部を中心に深夜まで営業を 行うスーパーが増えている。消費者の節約志向が強まるなか、小さくなる小売 市場のパイをめぐって過当な業態間競争を繰り広げているような印象すら受け る。小売業における規制緩和の影響について検証する。

「局地的な影響は出ているが、総体としてみればほとんど影響を受けてい ない」(セブンーイレブン・ジャパンの工藤健社長)―――。

コンビニエンスストア各社の経営首脳は、スーパーの営業時間延長など近 年の規制緩和が収益に与える影響は軽微にすぎないとの見方でほぼ一致してい る。

しかし、一部のコンビニ店では規制緩和のマイナス影響を嘆く声が聞か れる。東京都内の私鉄ターミナル駅前でコンビニ店を経営する70歳代の女性オ ーナーは、向かいに店舗を構える大手スーパーが営業時間を深夜11時まで延長 したため「以前は100万円をゆうに超えていた平均日販(1日売上高)が、今 では半分になった」という。夕食や夜食を求める消費者からすれば、コンビニ でもスーパーでも品揃えはあまり変わらない。便利な店舗に消費者は向う。「こ のままでは酒屋時代から60年以上続けてきたこの店もたたまなければいけな い・・・」

コンビニビジネスでは、商品の仕入れや陳列、販売促進策を本部の指導の もとに行われる。コンビニ店のオーナー個人の創意工夫が生かせる範囲は限定 的。そればかりか、売り上げが大きく落ち込むと店舗移転に応じるよう促され るケースが多いという。「私たち商売人は消費が良い時も悪い時もここでやっ てきたのだから。本部の商品政策や価格政策が顧客ニーズと合っていないこと を棚上げして、移転しろじゃ何も変わらないでしょ、と思ってしまう」(女性オ ーナー)という。

スーパーとの直接対決を避け少しでも競合がゆるやかな地域への移転を急 ぐ本部側と、業界他社や他業態と競合してでも同じ立地で営業し続けたいとい う加盟店側。両者の間には明らかに認識のギャップがある。

規制緩和は半面、スーパー業界に追い風となったようだ。2000年5月末の 大規模小売店法(大店法)の廃止と、同年6月1日の大店立地法導入に伴い、 スーパーの営業時間、年間営業日数、店舗面積などの規制が撤廃された。これ によりスーパーの既存店売り上げが若干増加している。

食品スーパー事業に注力する西友は、東京、埼玉など首都圏の店舗を中心 に営業時間を大幅延長した。これにより既存店の売り上げは1.8%程度押し上げ られたと試算している。また営業日数の増加で同1.7%の増収効果が働いたとい う。

ただ、営業時間の増加が利益の貢献に結びついているかどうかは不明だ。 ジャスコでは「他社もやるから当社もやる――、というような姿勢でやってい るため、機会ロスを防ぐための歯止め効果ぐらいしか出ていない」。イトーヨー カ堂の場合もまた、「営業時間が長いところでも夜9時閉店のため、あまりプラ ス影響は出ていない」と言い、昨年から実施された規制緩和を収益拡大にうま く結びつけられていないのが実情だ。

クレディスイス・ファーストボストン証券の佐々木泰行シニア アナリスト は、大手総合スーパーが規制緩和を収益拡大のチャンスとして充分いかせなか った理由について、「郊外に大型店を構えているような総合スーパーからすれ ば、深夜まで店を空けるメリットが少ない。深夜10、11時にわざわざ車で買い に来てくれるお客さんは少ない」とみている。また、徒歩や自転車で来店する 顧客の多い都市型の店舗にしても、「警備の関係上、食品売場だけ空けておくこ とも難しい」と指摘している。

ただ、店舗運営のノウハウが蓄積されていけば、「安くて良いものを数多く 揃えた食品スーパーに主婦層などが流れるのは自然なこと」(住友商事の切石 哲・取締役消費流通事業本部長)と言い、スーパー業界が深夜時間帯の小売り の主役に踊り出る可能性も高いと予想されている。

百貨店も規制緩和で恩恵を受けた側だ。内閣府が今年4月にまとめた政策 分析リポート「近年の規制改革の経済効果―生産性の分析」によると、94年以 降の5年間で、百貨店とスーパー2業態を合わせた「大規模小売店」の従業員 1人あたり販売額(労働生産性)は年平均0.9%ずつ押し上げられた。スーパー の労働生産性が2割近く落ち込むなか、大規模小売店でプラスを維持できたの は百貨店の人員削減による店舗運営の効率化の影響が大きい。百貨店の1店あ たり従業員数は99年から2000年にかけて6%程度減少。一方、売場面積は3、 4%拡大している。

消費全体が落ち込み百貨店の商品単価も下落しているため売り上げ全体は 若干減少しているが、「営業時間の延長や定休日の削減により首都圏の店舗を 中心に来店客が増えた。婦人靴やアクセサリー、一部宝飾品なども動いている」 (日本百貨店協会)。

2003年9月の酒類販売免許の需給調整規制(商圏人口による店舗数制限) の撤廃など、小売業における規制緩和は今後も断続的に行われていく。営業時 間の長さと免許品の販売で近隣の店舗に差をつけてきたコンビニも、その優位 性が薄まっていくのも必至の状況だ。

そんななか、コンビニ最大手のセブンイレブンがいよいよ銀行業に参入す る。同業界2位のローソンも提携先銀行などと共同でATM(現金自動預け払 い機)運営会社を設立するなど、コンビニ各社はそれぞれ金融ビジネスの立ち 上げを急いでいる。また、電子商取引関連事業や買い物代行業など新しい需要 を取り込むことで、新しい付加価値を創造しようと苦心している。

東京 鷺池秀樹   Hideki Sagiike              HS --* 03-3201-8293 hsagiike@bloomberg.net

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