LGBTQ+当事者と社員で家族(ファミリー)の多様性について考える
2024年9月5日
家族って何だろう?
2024年のプライド月間を祝うイベントの一つとして、ブルームバーグでは、7月2日、「多様な家族を考える」と題し、社員向けのパネルディスカッションを開催しました。LGBTQ+当事者として子どもを迎えて育てる決断をし、手探りながら家族としての生活をスタートした3名のゲストとともに、「家族の多様性」について考察を深めました。パネリストにお迎えしたのは、コミュニティのリーダーとして著名な東京レインボープライド共同代表 杉山 文野さん、グッド・エイジング・エールズ代表 松中 権さん、虹色ダイバーシティ代表 村木 真紀さんです。人事部の高橋 弦也さんがモデレーターを務め、日本、シンガポールや中国からオンラインを含め社員100人以上が参加しました。企画・運営は、社員有志でつくるコミュニティ、Bloomberg LGBTQ+ & Ally Community (BPROUD) およびBloomberg Working Family Community(BWFC)が共同で担当しました。

家族とはそもそも多様であり、さまざまな形が存在します。しかし現行の社会制度はいわゆる「伝統的な家族モデル」に合わせたものが多く、現実社会の多様性に対応しきれていない側面があります。開会にあたり、BPROUD共同代表のホドフ・ロチャさんは「『家族』がその形態に関わらず『家族』として支援され、温かく受け入れられるような社会を目指すうえで、貴重な示唆を与える機会となるでしょう」とあいさつしました。1時間のセッションを通してパネリストの皆さんのお話から浮かび上がってきたのは、どこの家庭からも聞こえてきそうな、子育てに共通する日々の悩みや笑い、喜びでした。「家族って何だろう?」という普遍的かつ根源的な問いへの議論を通して、参加者はあらためて「家族」という言葉が内包する多様性に向き合うとともに、次世代に何が残せるかについて考えました。
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精子提供を介して、「3人で親になってみた」―文野さんとゴンさんの場合
杉山 文野さん(以下文野さん)は、トランスジェンダーとしてパートナーといつか子どもを育てたいと考えていました。当初は「漠然と」諦めていたものの、あるとき同じくトランスジェンダー男性で子育てをしている方と出会ったのをきっかけに、「できるかどうかわからないけど、やってみよう」と決意、長年の親友であり、「ゲイで、子どもが持ちたくても持てない同様の境遇にある」松中 権さん(以下ゴンさん)と話し合い、精子の提供を受けることになりました。一方ゴンさんのほうも、「精子を提供するなら、責任を持ちたい」という思いがあり、「精子提供だけでなく、子育てにも関われたら」と話は進みました。現在はゴンさん、文野さん、女性パートナーの3人で、3歳 と 5歳になるお子さん2人を育てながら、「絶賛カオスな毎日」を送っています。
「3人で親になる」にあたって、前例が見つからなかった文野さんカップルとゴンさんは、子どもの人権に詳しい弁護士に相談。起こりうるあらゆる可能性について徹底的に検証しました。最終的には、「子どもにとって重要なのは、その人が自分に真剣に向き合ってくれているかどうか。関わる大人の数が多すぎて困ることはない」という専門家の言葉が、支えになったといいます。
ゴンさんは、文野さん、パートナー、お子さん2人が東京に住んでいるときは、保育園の送り迎えを週2、3日担当。今は4人が長野に移住し、ゴンさん自身も仕事の関係で東京と金沢の二拠点生活のため、月に2-3回と会う頻度は減りましたが、その分一緒にいる時間は長くなりました。「2番目のパパ」として、みんなでどこかに行くときには「あっゴンちゃんも!」とお声がかかります。3人でやりとりするファミリーのチャットグループ名は「病めるときも健やかなるときも」。共に子育てに取り組み、良いときも悪いときも一緒に乗り越えていく、という意味が込められています。
しかし、別々に住んでいることで情報共有がうまくいかず、入園式といった重要イベントの日程がゴンさんに伝わるのがぎりぎりになってしまい参加できなかったり、杉山家のルール変更に追いつけず、戸惑うこともあります。例えばあるとき、ゴンさんが子どものスプーンをなめようとしたら、「虫歯菌が移るからダメ」と注意されたことがあったそうです。「それなのに、次行ったときには目の前でそれをやってるんですよ」とゴンさん。「あれ、この前ダメだって言ってたじゃない?」と聞くと、「あ、もうそれ、なしになった。そんなこといってられなくて」「…..」
普段は「ママ、パパ、ゴンちゃん」と呼び分けている上のお子さんですが、ある日ふたりっきりになったとき、ゴンさんのことを「パパ」と呼んだことがあったそうです。「動揺しつつも、『あ、パパっていったね?』と聞くと、『言ってあげた』と。『子どももわかってるんですよね』」と、ゴンさんは笑います。「ひとりの個人として、周りの人とどういう関係を築きたいか、というのも探っているんだろうな」と感慨深げです。
文野さんカップル、ゴンさんのお子さんたちの祖父母はあわせて6人。血のつながりも戸籍上の婚姻関係もないため、祖父母がどのように受け止めるだろうか、ということが心配だった、という文野さん。しかし、生後すぐに実家で3年暮らしたことで、文野さんのご両親はごく自然に「ジジババ」になっていったといいます。またゴンさんの方も、ご両親に「孫」ができるかも、という話を伝えたとき、「こんな顔するんだ、というほどの笑顔」を見せてくれたそうです。祖父母になることをどこかで諦めて、「飲み込んできた言葉があるんだろうな」と感じたと打ち明けてくれました。

「お母さんのパートナーなんだよね」―真紀さんの場合
日頃からLGBTQ+に関わる啓発活動を精力的に行っている村木 真紀さん(以下、真紀さん)。学生時代から「周りにレズビアンカップルで子育て中の人がいたので、選択肢があることは認識していました」 現在は同性パートナーの生殖補助医療によって生まれた小学生のお子さんがいます。また、LGBTQ+で子育て中の先輩が近所にいるため、経験者に聞きながら子育てができるので助かっているそうです。
公園で子どもと遊んでいるとき、「お母さんと一緒でいいわね」と声をかけられると「ちょっとモヤモヤする」という真紀さん。お子さんが保育園、幼稚園時代は、お友だちから「まきまき」と呼ばれて親しまれていましたが、やがて小学校にあがってから「まきまき」とは誰?と友だちの間で話題になったようです。あるとき、お子さんから「まきまきはお母さんのパートナーなんだよね?」とあらためて確認されたことがありました。ただ真紀さんのお子さんは、「小さい頃から英才教育を受けていて、レインボーフラッグも識別できるほど」なので、真紀さんが「そうだよ」と言うと、すんなりと納得してくれたようです。「年齢が上がるに連れて、子どもと友だち関係が変わってきた。今のところはそれほど困ってはいないが、やんちゃな上級生にからかわれたりすることもあって、それがちょっと悔しい」といいます。
真紀さんとパートナー双方のご両親も、お孫さんの誕生を大変喜んでいます。「パートナーの親御さんはすごくかわいがってくれる。そして子どもとは血縁や戸籍上関係がない両親も、私が『孤独な人生を送るのでは』と心配していたようで、『パートナーができた』『子どもができた』ということをシンプルに喜んでくれている」と真紀さんはいいます。また、「完全に親ばかだが、うちの子はかわいい。実家は農家で、収穫した野菜をたくさん食べてくれるのもとてもうれしいポイントのようだ」と目を細めながら話してくれました。

多様な価値観の下で成長する子どもたち
親子で一緒にLGBTQ+関連のイベントに出かける機会も多い真紀さんは、小さい頃からのインプットに手応えを感じています。「ラグビーチームのLGBTQ+イベントでブースを出したところ、子どもがずっと手伝ってくれた。すると自然とほかの子が寄ってくるので、展示について説明をはじめたりして、まるでアクティビストのようで頼もしい。こうして子どもが子どもに教えてくれたら、一番伝わるなと思った」といいます。「人は多様であり、男とか女とかいうよりも、個体差のほうが大きい、ということを周りの子どもたちにも知ってもらいたい」と、自身の主催する団体でも、いつか中高生向けのプログラムを作りたいと考えています。
真紀さんにとっての家族とは、「私、パートナー、子ども、そして双方の両親とご近所の友達家族で作るちょっと大きめのプロジェクトチーム」的な存在。「我が家は戸籍上、パートナーはシングルマザーという扱いで、(家族としての形が)見えにくくなっている。いろいろな家族の形態があるということを知ってもらえるように、学校の教育プログラムに取り込んでほしい」といいます。
一方、文野さんも「子ども時代に多様性に触れることで、子どもの価値観も多様になっていく」とし、「成長とともにさまざまな質問がでてきても、その時々で理解してもらえそうな言葉で説明していきたい」といいます。「(親がトランスジェンダーであることは)学校にも伝えているので、周りの保護者も知っており、普通に受け入れられていると思う。子どもたちが大きくなったときに、「『自分は隠されるような存在』だったのかと思ってほしくない」 という言葉には、多くの参加者が頷いていました。
家族とは何かという問いは、自分以外の他者とどのように折り合いをつけていくかという問いでもあります。文野さんは、「家族とは、血のつながりに関わらず、与えられるものではなく、自分たちで築いていくもの。自分以外はいい意味で全員他者だが、尊重しあい、一番大切にコミュニケーションをとるべき相手」と考えています。そしてゴンさんは、「親が3人で、子どもが2人。この状態が自分にとって『ファミリー』。将来、そこに僕の未来のパートナーが加わる可能性もあり、それがどういう人物なのか二人もしっかりと見ている。一番親密な関係だからこそ、大切に思う気持ちも伝えたいし、リスペクトしあいたい」と話してくれました。

行動すれば変わる社会を目指す
子どもたちにどのような社会を残したいか、という問いに真紀さんは、「毎日戦争のニュースで子どもたちは不安そう。世の中を良くしようと頑張っている大人たちの姿を見せたい」と感じています。また、若いレズビアンの方から相談を受ける機会も増えているといいます。日本で今審議中の第三者の精子・卵子を使った不妊治療のルールなどを定める「生殖補助医療法案」では、対象を法律婚の夫婦に限定しています。生殖年齢を考えた時に、「若いレズビアンカップルにしてみれば、日本で同性婚ができるのを待つのか、精子バンクを使える海外に行くのか「残酷な二者択一」を迫られている」と警鐘を鳴らします。
大人は、次世代を生きる子どもたちにこの社会を繋いでいく責任を担っています。文野さんは、「子どもがいないと幸せになれないと言うつもりは全くないが、LGBTQ+だから、血のつながり、法的なつながりがないからと社会から諦めさせられている人々もいるのではないか。その状況は、変えていきたい」「何かの属性で諦めなくていいように、無駄に立ちはだかる壁は取り除いておいてあげたい」といいます。またゴンさんは、「何もしなければ変わらない。でも行動すれば変わる、変えられるんだと希望が持てるような社会にしたい」と力強く語ってくれました。

探せば情報が見つかる時代、ロールモデルを探して
現在、欧米を中心に世界37の国・地域で同性婚が認められています(2024年3月時点)。日本では法律上認められていないものの、パートナーシップ制度を導入する自治体は着実に増加しており(人口カバー率約85%*)、一般企業でも事実婚のパートナーに対し、配偶者と同等の配慮をする制度が浸透しつつあります。
またここ数年で、日本でもLGBTQ+ファミリーに関するさまざまな情報が入手しやすくなりました。にじいろ家族などのLGBTQ+のファミリーのサポート団体をはじめ、LGBTQ+の経営者が多いことで知られる東京・新宿二丁目エリアの飲食店や、YouTubeの動画などを通じて、子育てに関する情報を発信する当事者の方も多く見られます。「ロールモデルに触れていくことで、『自分はどうしたいか』、イメージも沸いてくるのではないか」と文野さんはいいます。
最後に、BWFCの共同代表であるブライアン・モーランさんが、「LGBTQ+の当事者が、新たに家族を持つことにともなう複雑さを乗り越えるには、勇気が必要です。そして周りのサポートが欠かせません。今回のイベントは、ブルームバーグが当事者の同僚をサポートし、応援するという決意をあらためて示すものです。私たちは今後も、形態を問わず、あらゆる家族を尊重し、歓迎する職場づくりに尽力してまいります」と締めくくりました。パネリストとしてご登壇いただきました皆さまに心より感謝申し上げます。
企業としての取り組み
ブルームバーグは、ダイバーシティとインクルージョンがビジネスの成功をもたらす条件であると考え、日々の業務と同様に重視しており、すべての社員と多様な家族が安心して生活できるよう、さまざまな福利厚生を提供するよう努めています。詳しくはこちらから。
(*引用元:公益社団法人MarriageForAllJapan )