日本酒を世界へ、政府が輸出促進プロジェクト立ち上げへ
5月11日(ブルームバーグ):日本酒を世界の食卓へ-。政府は国内需要が低迷している日本酒の輸出拡大へ向けたプロジェクトを立ち上げる。国内の販売数量が過去10年間で3割強減少する一方で、輸出金額は2011年に過去最大を記録。ワインなどに比べ世界的認知度は低いものの、幅広い「食」に合い、各国の市場でも受け入れられると判断。海外での広報活動や輸出環境の整備へ関係省庁が連携して動き出す。
古川元久国家戦略担当相は11日午前の閣議後会見で、「オールジャパンで官・民が連携し、日本酒の魅力の認知度の向上と輸出促進に取り組む時が到来した」と述べ、日本酒の海外展開支援を正式表明した。プロジェクト名は「ENJOY JAPANESE KOKUSHU(国酒を楽しもう)」。国家戦略室に有識者6人を集めた推進協議会を設置して提言を策定。酒類産業を所管する安住淳財務相とも連携して具体化する。
日本では長引く景気低迷やデフレによってアルコール離れが進んでおり、なかでも日本酒の販売量の減少は突出している。国税庁によると1970年代から80年代にかけて150-160万キロリットルで推移していた販売量は2009年度には63.2万キロリットルと半分以下に減少。約10年前(00年度97.7万キロリットル)に比べても35%減に落ち込んだ。
さらに、昨年3月の東日本大震災は酒蔵の多い岩手や宮城、福島の各県を直撃。被災地の酒造メーカーの4割が被害を受けた。被災3県を除いた10年度の販売量は55.8万キロリットル。被災地支援で需要は回復基調にあるが、東京商工リサーチによると、10年度の全国の日本酒メーカー523社の売上高は前年度比3.8%減となり、7割が減収したと指摘。倒産や廃業も相次いでいる。
フランスに照準一方で、輸出は好調だ。財務省の貿易統計によると、11年の日本酒の輸出金額は日本食ブームなどを追い風に87億7601万円と2年連続で過去最高を更新。うち米国向けが32億4083万円と3割超を占め、香港、韓国と続く。しかし、 ワインの輸入量は1066億8652万円と比べ物にならない。政府は「国酒」でもある日本酒の完成度はワインにも匹敵するとし、海外への大幅な輸出増だけでなく、国内需要の底上げも目論む。
古川担当相によると、本人は「下戸」。今年1月に出席したダボス会議の日本文化を紹介するイベントで提供した日本酒に人だかりができていたのを目にしてヒントを得たという。同相は「フランスは国策としてワインを大々的に国際展開し、大きな輸出産業となっている。世界中でワインの横に日本酒が並ぶような状況を作っていきたい」と強調。外国人観光客の酒蔵めぐりなど複合的な効果もあるとアピールする。
旭酒造(山口県岩国市)の桜井博志社長は、販売量が低迷する国内市場は「人口が減りさらに縮小する」と数年前から海外市場への展開にシフトを始めた。現在、米国や台湾を中心に16カ国に輸出している。中でも力を入れているのはフランスだ。桜井社長は「フランスは世界の食市場の中心。同国で売れなければ他国でも認められない」とし、5年前から輸出を始めた。将来的には現在1割程度の海外での売り上げを5割程度に引き上げたいと意欲を示す。
暗中模索旭酒造のような成功例はまだ少ない。酒造メーカーの9割強は中小企業。海外に拠点がなく、輸出手続きや販路開拓など暗中模索が続いている。国によっては日本酒に対し高い関税が設定されたり、震災後に輸入規制を導入したりと、政府レべルでの交渉が必要な難題も控える。酒造メーカーの間では政府を挙げた広報活動だけでなく、これらの輸出障壁の改善に期待が集まる。
政府は、日本酒も含む農林水産物の輸出拡大に向けた官民ファンド創設に向けた関連法案も提出し、今国会での成立を目指している。国からの出資200億円(財投資金)と貸し付け100億円をもとに設立し、輸出促進に取り組む事業者を支援するスキームだ。日本酒の分野では、販売ルートの確保や輸出手続きの負担軽減をバックアップする事業会社に出資する案も検討中だ。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 下土井京子 kshimodoi@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/05/11 12:36 JST