Updated: Tokyo  2013/05/21 20:23  |  New York  2013/05/21 07:23  |  London  2013/05/21 12:23
 

【コラム】政界スターの失脚が物語る中国の誤謬-Wペセック

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  4月19日(ブルームバーグ):殺人や腐敗、ハーバード大学、それにケネディ元大統領のジャクリーン夫人の名前まで取りざたされるスキャンダルはまれだ。今や中国の注目の的となっている薄熙来氏をめぐる騒動はこうした全ての要素を提供した。いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。政治システム全体を永久に変えるかもしれないのだ。

3月15日まで薄氏は重慶市のトップを務め、政界のロックスターだった。中国で強力な権限を行使する共産党政治局常務委員のメンバーになるとみられていた。その薄氏の政治的財産が一瞬にして消えた。「深刻な規律違反」を犯したとされたことに加え、際どい一連のうわさが広がったためだ。

最大の原因は薄氏の妻、谷開来容疑者と、昨年11月殺害された英国人実業家との関係だ。かつて中国のケネディ夫妻とも呼ばれた薄夫妻にとっては驚くような展開となった。谷容疑者はハーバード大生の息子とともに、英国人のニール・ヘイウッド氏と経済的利害をめぐって対立していたと、国営の新華社通信は伝えている。

このスキャンダルをきっかけに、北京ではさまざまなうわさがささやかれている。最も一般的な見方は、薄氏の流星のごとき台頭を阻止しようとする組織的な動きが背景にあるのではないかというものだ。薄氏は社会的平等をトップダウン方針で推進した。毛沢東元国家主席時代の歌やスローガンを活用する薄氏の戦略は個人崇拝を助長するものだとの見方が多かった。薄氏更迭の前日、温家宝首相は政治改革を追求し続けない限り、文化革命の再来につながりかねないと発言していた。

しかし、核心のところは違う。中国の政治制度は旧態依然としているのに、経済は前進している。薄氏の盛衰と、それにまつわる不透明感は、高成長を遂げる中国の誤謬(ごびゅう)を浮き彫りにしている。

手放せない高級品

中国には最新技術を備えた工場、現代的なオフィスビル、6車線の高速道路、高速鉄道のほか、日米もうらやむ国家資産を誇る。新興の富裕層はプラダやルイヴィトンの高級品、高級車のメルセデス・ベンツが手放せない。

しかし政治制度は毛沢東や旧ソ連のスターリン書記長時代のままだ。エジプトやミャンマーで民主主義が根付く一方、中国では密室での協議や裏取引、追放が後を絶たない。こんな不透明な世界がネット文化と衝突しているが、ネットを通じたニュースを抑え込むことは不可能だ。

中国 が思われていたほど統治しやすい国でないことも分かった。温首相は民主主義の進展について希望にあふれた発言をしたが、中国はまだ古代および現代の歴史にとらわれている。間違いを繰り返さないために過去に何が起きたかを知っておく必要がある。国民が話題にすらできない事件の現場となった天安門広場に、今でも毛沢東の写真が飾られていることを忘れてはならない。

強欲さに目が向けられる中で、政治的リスクも否定できない。政府からささやかな給与を受け取り、専業主婦とされる妻を養う薄氏がどうやって豊かな生活を送り、息子を費用の高い英米の学校に留学させることができるだろうか。

格差拡大

政府高官の不正行為が明るみに出ることでエリートと低所得層の格差拡大があらためて注目され、共産党の正統性へのリスクとなるかもしれない。

中国が繁栄し続けるためには家計から国への膨大な所得移転をやめることが必要だ。それで消費者の権限は強まり、超富裕層の権限は弱まる。問題は1%の超富裕層の人たちが改革に反対するかだ。

国会に相当する全国人民代表大会(全人大)の代表のうち資産家上位70人の純資産合計額は昨年、スロバキアの年間国内総生産(GDP)より多かった。これを見れば、中国のモデルがいかに国民を失望させているか、それに共産党の大物が自分たちの収入が減るような改革になぜ抵抗するかが分かる。

超富裕層は政治家であることが多いため、中国は経済の改革と貧富の格差是正に苦労するかもしれない。改革への障害は、社会不安をもたらすハードランディングのリスクを高める。

薄氏の失脚に驚いたり、中国指導部が排他的社会に挑む政治スターの台頭をいかに許容しないかについて語ることもできよう。妻の谷容疑者と死亡した実業家をめぐって想像をめぐらすことも可能だ。ただ今回の事件は、時代遅れの政治制度がこの国の将来を危うくしていることを何よりも雄弁に物語っている。(ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Billionaires Make Killing Amid China Murder Tale: WilliamPesek(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:東証 Willie Pesek wpesek@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Greiff jgreiff@bloomberg.net

更新日時: 2012/04/19 10:40 JST

 
 
 
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