Updated: Tokyo  2013/05/24 02:56  |  New York  2013/05/23 13:56  |  London  2013/05/23 18:56
 

【コラム】ウォール街の良心ゴーマン氏はわが道を行く

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  4月16日(ブルームバーグ):金融危機以降、ウォール街の指導力不足が顕著だ。

金融業界の行動がなぜ米経済を困難に陥れたのか、資本市場に対する国民の信頼が戻るという希望が持てるようになるためになぜ業界の行動が変わらなければならないのかを米国民に説明するウォール街の経営幹部はどこにいるのだろうか。市場への信頼が戻らなければ、早期の景気回復などまず、望めないだろう。

そのような時代の要請に応える代わりに、ウォール街の最高幹部とされる人々、ゴールドマン ・サックス・グループのロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)やJPモルガン ・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、危機に至る過程での弁解の余地のない自身の行動を擁護したり(ブランクファイン氏の場合)、新規制がいかに収益力を阻害するかの不満を唱えたり(ダイモン氏の場合)するのに忙しく、ウォール街のビジネス手法を根本的に変革することを考える時間などないがごときである。これまで彼らが示したのはリーダーシップの正反対、つまりあからさまな利己主義だ。

幸いなことに、アリストテレスが教えてくれたように自然は真空を嫌う。ウォール街のリーダーシップの空白にそっと入り込んできたのは、オーストラリア生まれのジェームズ・ゴーマン氏(53)だ。元マッキンゼーのコンサルタントでメリルリンチの元幹部。2010年にモルガン・スタンレー のCEOとなり、今年初めから会長兼CEOを務めている。その控えめなやり方で、ゴーマン氏は表舞台に軽快に登場してきた。

新聞を読め

同氏は1月にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)年次総会で、ブルームバーグテレビジョンのエリック・シャツカー氏の求めに応じ、なぜモルガン・スタンレーが報酬を返還させることを可能にする仕組みや繰り延べ支払いを制度化し、現金による報酬支払いを年12万5000ドル(約1000万円)に制限することで業界の先頭に立ったのかを説明。自身の決定の論法を理解できない従業員には次のように伝えると語った。「世間知らずはまず新聞を読め。第2に、自分の幸福度の全体のレベルを1年の報酬で判断する人間は仕事以前の問題を抱えている。第3に、本当に不幸せなら会社をやめればいい。人生はいやなことをするには短過ぎる」。

同氏はさらにこう付け加えた。「世界は変わった。銀行業界は根本的な変化に見舞われた。われわれは適応し直さなければならない」。

その通りだ。ブランクファイン氏やダイモン氏と異なり、ゴーマン氏は真のリーダーシップを理解している。それは世界を現実にあるがままに認識し、それに対処することであって、失われてしまったものを求め続けることではない。

遺伝子

ゴーマン氏は先週、「チャーリー・ローズ」ショーに出演した際にこの主題に再び触れた。モルガン・スタンレーにとって重要なのは、顧客の問題解決を支援することがであり、金銭的に高得点を上げることではないと同氏は述べた。

「プロのサービス提供企業にとって最も重要なのは、それぞれの企業を特別にしているのが何かを求めて自らの遺伝子を探ることだ」と同氏は言う。「モルガン・スタンレーの特別さは並外れて複雑な問題に対応し、難しい状況にある顧客が解決法を見つけるのを助けることができる人材の質の高さだ。従って、私がすべきことはこの原点に当社を回帰させることだ。この原点を増幅させ組織がそれとともに動くようにすることだ」と説明した。たしかに、この発言には会社の説明資料から取ってきたような部分も多いにあるが、真実の要素もある。

ゴーマン氏はモルガン・スタンレーの自己勘定取引の日々は終わったと言う。「あれはいわば、既定のコースを外れたものだった」として、多数の企業が自己勘定の取引で巨額の利益を上げたものの、「モルガン・スタンレーは絶えず顧客にサービスを提供することで金を稼いできた。それが当社の存在理由だ。これが当社のDNA(遺伝子)の中核だ」と付け加えた。

間違い

ゴーマン氏はタイミングの悪い自己勘定取引で2007年に90億ドルの損失を出したとされたモルガン・スタンレーのトレーダー、ハワード・L・ハブラー氏には言及しなかったものの、「われわれは他社がうらやましくなった。多くの企業が他社をうらやんだ。これは経営戦略上、問題だ。企業は自社の得意なことに専念しなければいけない。他社が得意なことを自分も得意だとは限らない。われわれは他社の得意なことをやろうとしてしまった」とモルガン・スタンレーの間違いを認めた。

ゴーマン氏はまた、今は企業に自己勘定取引を禁じるか、膨大な資本準備を義務付けてそのような活動に経済的な妙味がなくなるような規制の強化を受け入れるべきときだとの考えも表明。自身は安定して一貫した利益の流れを重視する経営者だとも述べた。

「投資家が最終的に求めるのは確実性だ」と同氏は言う。「投資家は金融機関の戦略を知っておくことを望む。なぜ金融機関がその戦略で成功すると考えているかが分かり、安定したリターンが得られることを望む。自己勘定取引の事業は非常に不安定だ。投資家はそういう事業を考えに入れない。次の四半期も同じ結果が出せるかどうか分からないからだ」とゴーマン氏は説明した。

スミスバーニー

ゴーマン氏はウェルスマネジメント事業に大きく賭けた。モルガン・スタンレーは09年1月に証券会社スミスバーニーの持ち分をシティグループから買い取って保有比率を51%にした。関係者によれば、残りも買い取る方向で交渉している。

顧客の問題解決支援を事業の中心に据え直したゴーマン氏の戦略の成果は今のところ、業績や株価 には表れてはいない。しかし、間違いを認め、新たな規制を受け入れ、かつてモルガン・スタンレーの得意としていた対顧客業務に同社を復帰させたことは近く、成果をもたらすに違いない。

ウォール街で極めて明白になったことがあるとすれば、それは顧客とカウンターパーティー(取引相手方)は、食い物にされるのにうんざりしているということだ。失われた信頼を最初に取り戻した企業こそが、未来の勝ち組になるだろう。

(ウィリアム・D・コーハン氏は元バンカーで、「Money andPower: How Goldman Sachs Came to Rule the World(マネー・アンド・パワー:ゴールドマンはどうやって世界の支配者になったか)」の作者。ブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

-Editors: Max Berley, David Henry

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Toby Harshaw tharshaw@bloomberg.net

更新日時: 2012/04/16 14:18 JST

 
 
 
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