マツダに広島カープは必要か、球宴スポンサーも継続
4月9日(ブルームバーグ):業績不振が続き、過去最大の増資に踏み切ったマツダ は今季もプロ野球・オールスターゲームの冠スポンサーを続ける。地元プロ野球チーム、広島東洋カープの筆頭株主でもある。プロ野球のスポンサー企業は時代の流れとともに変化してきたが、マツダの判断をどうみるか、市場関係者の声は分かれている。
今年もオールスターゲームが7月に開催される。マツダは3月19日、5年連続で冠スポンサーになると発表した。発表資料では「国内で高い注目度を誇るスポーツイベント」に協賛することはマツダの車や技術に関心をもってもらう機会になり、厳しい経営環境下だが、今年もバックアップするとした。
「タイミングとしてはよくない」-。増資発表の翌月に球宴への協賛継続を表明したことについて、独アリアンツの日本の資産運用部 門であるRCMジャパンの寺尾和之取締役チーフ・インベストメント・オフィサーは「スポンサー費用は金額的には大きくないだろうが、姿勢の問題。一事が万事で他のところのコスト意識も甘くなっているのではないかとみられる」と指摘した。
マツダ広報担当の新田梢氏は電話取材に対し、スポンサー費用を公表していないと述べた。カープは日本シリーズで過去3度優勝、1987年に当時の連続試合出場世界記録を更新した衣笠祥雄選手らを輩出、マツダはその球団株式の約34%を保有する筆頭株主だ。
新田氏は、球団は独立採算で運営され、経営にかかわってないという。マツダはカープのホームグラウンド「MAZDA ZOOM-ZOOM スタジアム広島」(新広島市民球場)のネーミングライツ(命名権)として2014年まで年3億1500万円を広島市に支払う契約も結んでいる。
4期連続の赤字国内生産の輸出比率が約8割と円高の影響が大きいマツダは2月に11年度の純損失予想を従来の190億円から1000億円に引き下げた。純損益の赤字は4期連続となる。その後、成長が見込める新興国など海外展開や財務基盤の強化のため、手取り概算1442億円の公募増資や劣後ローンで700億円の借り入れを実施した。
「資本増強をやったぐらいだから、場合によっては広島カープを手放すぐらいのことをしないといけないのではないか」と立花証券の平野憲一執行役員は指摘する。「地元との関係など難しいことがあるのも理解できるが、財務内容は非常に厳しい」と述べ、これまでそうしてきたという理由で見直さないことは許されないだろうと語った。
富国生命投資顧問の桜井祐記社長はオールスター協賛について、金額が少なく、広告効果も考えると続けることは理解できるとした上で、マツダは広島市民に応援してもらって成り立っている会社であり、「カープファンは熱狂的で経済合理性だけでは判断できない」と地元に納得してもらえる買い手を探すのは難しく、「いま無理に売るのは得策ではないし、時間がかかるだろう」と述べた。
産業の栄枯盛衰で球団オーナーも変遷日本のプロ野球チームは伝統的に大手企業が所有・運営することが多く、産業の栄枯盛衰につれて買収や合併が繰り返されてきた。古くは東映フライヤーズや大映スターズなど映画配給会社が保有していた時代があり、80年代後半以降は阪急ブレーブス、南海ホークスなど電鉄会社が球団経営から撤退するケースが相次いだ。
最近ではソフトバンク や楽天 などIT関連企業の参入が増えている。ディー・エヌ・エー(DeNA )は昨年、TBSホールディングスから横浜ベイスターズ株式の約67%を取得すると発表、株式取得費用は65億円だった。自動車メーカーで球団を保有するのはマツダだけだ。
熱烈な巨人ファンだったが最近は野球を見なくなったというRCMジャパンの寺尾氏は、プロ野球人気そのものが落ちているといわれる中、「経済合理的に判断するなら、野球による広告の費用対効果は薄く、球団は売却するというのが合理的な考え方」と指摘。一方、「現実問題としては、広島に本社を置く企業として支援をやめるのはなかなかできないのではないか」と語った。
危機感はまだマツダがオールスター協賛を見直さなかったのは「聖域なきコストダウンというところまでいっていないという証左」と話すのは、ベイビュー・アセット・マネジメントの高松一郎ファンドマネジャーだ。高松氏は「増資と最近の円安傾向で一息ついたというところではないか」と指摘した上で、「本当につぶれるというほどの危機感はまだないということだろう」と述べた。
10年度の有価証券報告書によると、マツダは広島カープ以外にJリーグ・サンフレッチェ広島の株式約22%を保有している。病院・寮などの福利厚生施設も保有し、その帳簿価額は205億円となっている。
マツダ広報の新田氏は、こうした資産や支出は地域貢献や広告宣伝などさまざまな目的があると説明した。広島カープなど株式を保有している資産の中には毎年、安定的な配当をもたらしているものもあり、「単純にお金が出ていくというものだけではない」という。売却の予定があるかについてはコメントを控えた。
三菱自は本業に経営資源を集中リコール問題の影響で経営が悪化した三菱自動車 は、04年と05年に総額7800億円規模の増資を実施した。09年3月には運営していた三菱水島病院を閉鎖。三菱自・広報担当の稲田開氏は「コアビジネスの自動車事業への集中」が目的だったと話した。
マツダの連結決算で販売・一般管理費の対売上高比率は、90年代半ばに10%台前半で推移していたが、米フォード ・モーターが持ち株比率を33.4%に引き上げた96年ころから徐々に上昇。その後は23-24%台で推移し、フォードが持ち株比率を10%台に引き下げた08年度ころから徐々に下がったが、10年度でも約19%と日本の主な自動車メーカーではホンダ 、スズキ に次いで高かった。
マツダは13年度の定期採用で技術系、事務系、技能系の計145人を計画し、医務系などは未定と発表。12年度入社見込みで医務系などを除く計465人と比べ約7割減となる。米国駐在のマツダ広報担当、ジェレミー・バーンズ氏は3月、米国事業の従業員を対象に早期退職案を提示する計画であり、応じる従業員が少ない場合は強制的な人員削減に踏み切る可能性があると述べた。
人口約285万人の地方都市である広島県に基盤を置くマツダは、歴史的に地元自治体と密接な関係を築いてきた。
地元と共存関係マツダのウェブサイトによると、広島に原爆が投下された1945年8月から翌年にかけてマツダが建物の一部を広島県に貸与し、県庁のすべての部署が移されていた時期があった。県はいまもマツダ車を公用車に採用するなど野球以外でも地元と共存関係を築いている。
広島県出身で大阪市在住の会社員、郷里を離れて10年になるいまもカープファンという久保紗綾加さん(28)は、子どものころに父の知人のカープの選手に遊んでもらったことを覚えている。カープの魅力は都市部のチームと比べて市民に身近な存在である点だと指摘した上で、「地元市民の8割以上は熱烈なカープファン。カープが売却されて広島からいなくなることなど考えられないが、もしそうなったらさびしいと思う」と話した。
マツダの株価 は今年、2月17日に一時170円まで上昇したが、巨額増資を検討していることが明らかになり、その直後に急落した。4月6日の株価終値は前日比0.7%安の139円。
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更新日時: 2012/04/09 07:00 JST