【日本株週間展望】乱高下、ユーロ懸念と業績綱引き-金融には暗雲
5月14日(ブルームバーグ):5月第3週(17-21日)の日本株相場は、日経平均株価が1万円台半ばで荒い値動きとなりそう。財政問題による通貨ユーロの先安観はぬぐえず、日米金融業界での懸念材料の浮上も気掛かり。国内企業の業績改善に安心感はあるが、決算発表後の長期投資家の売買判断が出そろうにはもう少し時間を要し、海外情勢に一喜一憂せざるを得ない状況だ。
日興コーディアル証券の大西史一国際市場分析部長は、「ギリシャの問題が横に広がらないよう欧州は対応したが、ソブリンリスクへの警戒は強く、しばらくはニュースフローに引きずられる展開」を予想している。
5月2週の日経平均は、前週末比0.9%高の1万462円と2週ぶりに上昇。ギリシャの財政不安問題がほかの欧州連合(EU)諸国に広がることを防ぐため、欧州政策当局と国際通貨基金(IMF)は10日、最大約90兆円規模のユーロ圏諸国への緊急融資の枠組みと債券買い取りプログラムの実施を決めた。日米中央銀行も市場への資金供給に万全を期し、ギリシャに始まるユーロの危機は当面回避されたとして、世界の株式市場は月初の急落ショックから立ち直りを見せた。
ユーロ・円は海外時間6日に、8年超ぶりのユーロ安・円高水準となる1ユーロ=110円台に入った後、10日には122円台までユーロが戻したが、再びじり安傾向。大和総研投資戦略部の野間口毅部長は、「すべての問題は解決しないという懐疑的見方が残っている」と言う。
財政のぜい弱さが懸念されるポルトガルが12日に実施した10年国債の入札は、前回の入札を上回る需要を集め無事通過。セーフティーネットの効果で、19日のギリシャの10年国債償還に対する不安も遠のいた。またポルトガルや、保守党新政権が誕生した英国では財政再建の方針を示唆。市場のソブリンリスクに対する懸念を後退させようと努めるが、財政の引き締めは他方で現在の景気回復の流れに水を差す可能性もあり、投資家もジレンマを抱く。
ウォール街に捜査リスク、邦銀に需給リスク一方、米国や日本の金融業界で不安要素が浮上した。米証券取引委員会(SEC)が先ごろ、住宅ローン関連証券の販売をめぐりゴールドマン・サックス・グループを民事提訴したのに続き、米連邦検察当局がモルガン・スタンレーを投資家を欺いた疑いで捜査している、と米紙ウォールストリート・ジャーナルが報道。オバマ政権によるウォール街締め付けへの懸念が再燃しつつある。
日本では、みずほフィナンシャルグループが国際的な金融規制強化に対応するため、1兆円の公募増資の検討事実が判明した。三井住友フィナンシャルグループには、将来的な増資に備えた株式発行枠拡大への観測、3大金融グループには住宅専門金融会社(住専)の追加処理負担の観測がそれぞれ浮上。立花証券の平野憲一執行役員は、「株式相場全体の需給にも影響するネガティブ材料」と話している。
欧州問題を消化しきれず、さらに日米金融セクターの懸念材料から投資家が浮足立っている状況は、不安定な株価指数の動きに垣間見える。日経平均終値ベースの前日比変動率は、4月月間の1日当たり平均0.9%に対し、5月6日から13日までで1.9%に拡大。ヒストリカルボラティリティの10日移動平均は、ドバイ・ショック直後の昨年11月末から12月上旬以来の高水準だ。
通貨や証券投資への不安心理の裏返しとして、ニューヨークの金先物相場は1オンス=1200ドル台に乗せ史上最高値を更新。英スタンダード・チャータード銀行のアナリスト、ダン・スミス氏は「安全性を求めて資金が流入している。公的債務リスクのほか、将来のインフレの可能性に対しも懸念が広がっている」と指摘する。
今期は4割弱の増益予想ただ日本株に関しては、ほぼ一巡した企業の決算発表で業績の改善が確認されており、一方的な下落を想定する市場参加者は少ないようだ。立花証の平野氏は、現在500円台前半の日経平均採用銘柄の11年3月期予想1株利益(EPS)が600円程度まで上昇すると予想。「景気の右肩上がりは間違いなく、指数が長期移動平均線を継続的に下回ることは考えにくい。ここには強い抵抗線がある」と見ている。日経平均の200日線は、14日時点で1万348円に位置する。
新光総合研究所のまとめによると、東証1部の金融を除く3月本決算企業1191社のうち、7割を超す866社が13日までに決算発表を終了。前期(10年3月期)の経常増益率は前の期に比べ27%増、事前予想の11%増から上振れた。産業別では、素材産業が26%減、非製造業が3.7%減とマイナスの半面、加工産業が240%増と急回復。デジタル家電の販売好調、国内外での自動車販売の回復を受けた電機、輸送用機器、低水準の燃料価格の恩恵を受けた電気・ガスの改善が顕著だ。
11年3月期は、全体で38%増益が見込まれ、産業別では素材100%増、加工48%増、非製造業17%増といずれもプラスを予想。業種では電機、鉄鋼、繊維、機械、水産・農林の増益率が大きい。
日興コーデ証の大西氏は、「日本の場合、株価と同様に企業業績の落ち込みが大きかった分、足元はV字回復の様相。それを織り込む動きが、外国人投資家の動きにも表れている」と指摘。中国の金融引き締めや人民元引き上げに対する警戒感で、昨年好調だったエマージング市場から先進国市場に資金が回帰している面もあり、日本でも「これからアナリストの評価も出てくる。海外が落ち着けば、個別に買われる銘柄は増えよう」との認識を示している。
東京証券取引所によると、外国人投資家は4月月間で日本株を8302億円買い越し、7カ月連続の買い越しだった。
第3週の日本株相場に影響を与えそうな材料は、国内では17日に3月の機械受注と4月の首都圏マンション販売、20日に10年1-3月期の国内総生産(GDP)1次速報値の公表がある。GDPは、ブルームバーグがまとめたエコノミストの事前予想で前期比年率プラス5.5%と、輸出の増加や個人消費、設備投資の改善を受けた高成長が見込まれ、海外勢の目が日本株にあらためて向くきっかけになり得る。
【市場関係者の当面の日本株見通し】 ●中央三井アセットマネジメントの寺岡直輝運用部長 「底固めの展開が予想される。米、欧、中国とそれぞれ悪材料を 抱え、ファンダメンタルズは良好だが外部要因が落ち着かないことか ら、先行きの自信が持てない。特に懸念されるのは、米格付け機関ム ーディーズがギリシャの信用格付けをジャンク級(投機的)に引き下 げた場合、投資家が実際にどのような反応を示すかだ。金融機関の不 良債権化が警戒されれば、日経平均1万円を試す可能性もある。日本 のGDP改善は相場に織り込み済みで、材料視されないだろう」 ●ちばぎんアセットマネジメントの桶矢雅嗣運用部長 「日本株の先行指数的な存在のユーロ・円相場の動向次第だが、 ユーロが一方的に安くなる状況ではなくなりつつあり、株価の下値不 安も小さいと見る。日経平均の200日移動平均線(1万348円)が下 値支持線として機能しそう。ギリシャ財政問題の広がりを阻止するた め、各国・国際機関の緊急危機対策が打ち出され、欧州での当面の資 金繰り不安は遠のいた。財政赤字の削減に向けては、困難に直面する 場面が何度も出てくるだろうが、方向性は見えてきた」 ●日産センチュリー証券ディーリング部長の菊池由文氏 「相場はもみ合いだろう。ギリシャの財政問題をきっかけに急落 したが、すでに200日線まで下げている。スペインに飛び火するなど 相当悪い材料が出ない限り、もう一段下げることはない。しかし、こ れといって買い上がる材料もなく、急落過程で買った投資家からの売 りをこなしながらの上昇は難しい。当面の日経平均は1万300円から 1万800円でのボックス相場ではないか」 ●ミョウジョウ・アセットマネジメントの西範也ファンドマネジャー 「3、4月は循環的な受注回復に上海万博、南アW杯が重なり、 電子部品・部材の購買パニックが起こったが、4月末に少し落ち着い た。韓国や台湾のエレクトロニクス関連企業の設備投資行動が足元で 変容している。投資ゴーサインをいったん保留したり、短期間延期す るニュアンスだが、日本の装置メーカーや部材メーカーからすると、 正式な注文書をもらえない。電機株を中心にアジア株はいったん落ち 着こう。欧州と中国のマクロ指標をどう読むかが焦点」
記事に関する記者の問い合わせ先:東京 院去 信太郎 Shintaro Inkyo sinkyo@bloomberg.net
記事に関するエディターへの問い合わせ先:東京 大久保 義人 Yoshito Okubo yokubo1@bloomberg.net香港 Darren Boey dboey@bloomberg.net
更新日時: 2010/05/14 17:29 JST