【コラム】ゴールドマンの「贖罪」に誰が納得するのか-Mギルバート
11月18日(ブルームバーグ):ロイド・ブランクフェイン最高経営責任者(CEO)が「神の仕事」だと言う業務での失態についての良心の呵責(かしゃく)から逃れるため、ゴールドマン・サックス・グループが幾ら払う気があるのかが明らかになった。信用危機発生に演じた役割の代償として、ゴールドマンが支払うのは5億ドル(約450億円)で済むらしい。
同社は17日、「中小企業1万社イニシアチブ」と銘打ったプログラムを設定すると発表した。企業主を指導する教育機関の支援に2億ドルを、コミュニティ開発グループ向けの融資や慈善事業にさらに3億ドルを出資するという。ゴールドマン筆頭株主であるバークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェット氏もこのイニシアチブに参加する。
一見して気前の良いこの行動については、次のような見方もできる。ゴールドマンは従業員にボーナスを支払うために1-9月で167億ドルを用意した。これは従業員1人当たり52万7190ドルとなる。
この数字に基づけば、ゴールドマンが支援しようとする中小企業1万社は、ゴールドマンの従業員約1000人と同じ価値だということだ。あるいは、ゴールドマン従業員1人は中小企業10社分の貢献を社会にしていると見なされているとも言える。
ゴールドマンが従業員から搾り出すことで知られている著しく高い労働生産性をもってしても、これはなかなか厳しい。1人のバンカーが会社10社に相当する働きをするというような考えこそが、われわれを今回の危機に陥れた元凶ではないだろうか。金融は不当に持ち上げられ、実体経済に対してサービスを提供する手段であることを忘れ、それ自体が目的になってしまった。
もう引っ掛からない
一般の人々はこんな茶番にはもう引っ掛からないだろう。金融業界は何年もの間、自らのリスクテーク活動から注意をそらすために慈善活動をひけらかしてきた。税控除対象の慈善活動などではもう、信用危機のおかげで退職年金基金がすっかり目減りしてしまった国民をなだめることなどできない。今年初めからの相場上昇の後でさえも、世界の主要株式市場の時価総額は45兆ドル弱で、米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン市場崩壊が世界経済を台無しにする前の07年末に付けたピークの約62兆ドルから目減りしている。
ブランクフェインCEOの17日の謝罪の弁は、見掛け倒しの慈善よりも価値があるかもしれない。同CEOは「ディレクターシップ」という雑誌が主催したニューヨークでの会議で、「われわれは明らかに間違ったことに関与した。遺憾に思う理由があり、それについて謝罪する」と述べた。金融機関のCEOたちが、遅過ぎたとはいえ、錬金術のような証券を見境もなく販売した行為を二度と繰り返してはならないということに本当に気付いてくれたなら、結構なことだ。
「今年のCEO」
しかしながら、もし同CEOが同誌によって「今年の最優秀CEO」に選ばれていなかったら、謝罪はもう少し誠意あるもののように響いたことだろう。大金持ちが銀行経営者たちを褒めそやす風潮は、彼らの行動がもたらした事態によって弱まりはしたが、消滅はしなかった。
ブランクフェイン氏の勤務先がゴールドマン以外の会社だったなら、恐らく今ごろは失業していただろう。バンカーは「神の仕事」をしているという同氏が英紙サンデー・タイムズに語った言葉は、何とも不用意な発言だった。
どんなに多くの慈善事業に寄付をしても、ゴールドマンはローリング・ストーン誌のコラムニスト、マット・タイビ氏に今年付けられたあだ名を返上することはできなさそうだ。同氏はゴールドマンについて、「人類の顔にまとわりついた巨大な吸血コウモリダコ。カネの匂いのするあらゆるものに容赦なく吸血触手を伸ばしている」と書いた。ゴールドマンとその同業者らは、形ばかりの善行でニュースの見出しを飾り負のイメージを払拭(ふっしょく)しようとするよりも、じっくりと時間をかけて謙虚さと悔恨の情を示した方がいい。(マーク・ギルバート)
(マーク・ギルバート氏は、ブルームバーグ・ニュースのロンドン支局長でコラムニストです。コラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時: 2009/11/19 10:39 JST