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アラフォーが支える消費、頼みの綱は乙女心-高級化粧品は裏切らない

  2月23日(ブルームバーグ):「美容効果は価格に比例する」。フリースタイリストの谷内美和子さん(34)は12万6000円もする超高級クリームの愛用者。以前はルイ・ヴィトンやグッチなどのブランド品もよく買っていたが、今はもう手を出さない。買うのは高級化粧品だ。

美和子さんの姉、由美子さん(35)もこのクリームを愛用。これまで化粧品には無頓着だったが、「このごろお肌が曲がり角に来ている」と感じ、効果を雑誌で知って発売直後に百貨店へ走った。このクリームは資生堂の「クレ・ド・ボー ボーテ シネルジック」。昨年9月の発売から3カ月間の売り上げは計画比で10%伸びた。

ユニクロ、マクドナルド、ニトリ。物がなかなか売れないこのご時世、好調なのは低価格品ばかりと思われがちだが、高いのに売れ行きがいいのはスキンケア化粧品だ。雇用や所得への不安から、消費者の節約志向が高まるなか、百貨店は衣料、宝飾品などが売れずに苦しんでいる。にもかかわらず、同じ百貨店で取り扱う高級スキンケア化粧品は「相対的に健闘している」と岡三証券の松村梨加アナリストは語る。

約17年前に発売したコーセーの美容液「コスメデコルテ モイスチュアリポゾーム」(40ml、1万500円)は年々伸びており、「足元は2けた増の売り上げ」(広報室・橋本美佳氏)。昨年9月に発売した花王の最高級シリーズ「エスト エターナルフロー」(1万500円-1万2600円、4品目)も12月までで計画の1.2倍で推移した。

「アラフォー」の切なる思い

こうした背景には、可処分所得の多い40代前後(35-44歳)の「アラフォー」と呼ばれる女性の存在がある。第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「この世代は働いている人が多く、人口も多い。さらに未婚率が高い。結婚をあきらめておらず、美しくいたいと思う人が増えている」と指摘する。同氏によれば、1986年の男女雇用機会均等法施行を契機に女性の社会進出が増えた上、2008年のアラフォー未婚率は20年前と比べ3倍の約15%に上昇した。

  広告代理店勤務の奥田智子さん(37)は先日、カネボウ化粧品の高級ブランド「リサージ」の薬用総合美容クリーム(35グラム、2万円)を購入。「美しさは少なからず仕事にも影響する。男性は肌で実年齢を判断する」と感じており、「高級クリームが1つあれば、あらゆる肌トラブルに対応できる」と満足げだ。

「今、手に入れるのが難しいのは結婚相手ときれいな肌。人の心はお金で買えないから、化粧品に最優先で投資する」ときっぱり言うのは金融機関に勤める佐藤典子さん。仏クラランスの高級保湿クリーム「スープラ ナイト ウェア」(50グラム、1万8900円)を使う40代だ。彼女らはみな、独身のキャリアウーマンである。

化粧品にはゆるむ財布のひも

とはいえ、資生堂の高級クリームは簡単に出せる額ではない。谷内美和子さんの仕事は7、8割がTVコマーシャルに出演するタレントなどのスタイリング。昨春ごろから本数が減ってきており、昨年1年間は「前の年と比べて3割以上減った」(美和子さん)。ラジオ局の広告営業をしている姉の由美子さんも広告収入減でボーナスが減った。

だが、高級クリームはエステサロンに行く費用などを考えると、「日割り計算してみるとそれほど高いとは思わない」と由美子さん。そんな彼女の衣料品購入先はもっぱらアウトレット。百貨店よりも安く買えるのが魅力だ。

妹の美和子さんは最近、雑誌購入や外食の回数が減った。雑誌は図書館などで読み、昼食は弁当持参。友達と持ち寄って家で食べたりすることも多い。美和子さんは「家で作って食べる粗食のほうが体や美容に良いことが分かった。価値観や楽しみが最近変わった気がする」。佐藤さんは「洋服は消耗品だから、安いのと高いのを交ぜて買う。化粧品は毎日直接肌につけるもので成分や品質が大事。だから信頼できるものを選ぶ」といい、高価格に納得している。

市場は高価格と低価格帯に2極化

化粧品市場は5000円以上の高価格帯、2001円から5000円未満の中価格帯、2000円以下の低価格帯の3種類に分けられる。現在は景気悪化で消費者の需要が中価格帯から低価格帯に流れており、花王の尾﨑元規社長は1月下旬の会見で「中価格帯は落ち込んでいるが、高価格帯と低価格帯は好調。市場は2極化が進んでいる」と分析した。

08年12月の全国百貨店売上高は9.4%減。1997年4月に実施された消費税率引き上げに伴う下落を除くと、統計開始以来、単月ベースで過去最大の下げだった。09年1月は9.1%減とやや下げ幅を縮小したものの、11カ月連続前年割れ。衣料は11.9%減、宝飾品などの高額品は19.1%減と大きく落ち込んだ。

  一方、化粧品は統計を取り始めた07年1月から昨年11月まで23カ月連続でプラス。12月は1.7%減で前年を下回ったが、尾崎社長は「ついに売れなくなったとは思わない。傾向が変わったわけでない」と強気だ。

美は1日にしてならず

  景気の悪化により高価格帯の販売も「大きく落ちないにしても、停滞感は多少出る」(第一生命経済研の永浜氏)とみられる。だが、岡三証券の松村氏は「女性心理からみて化粧品は節約しづらい。高齢者によるアンチ・エイジング(しみ、しわ防止など抗加齢)商品のニーズも高く、20代の購入も増えている」と指摘、今後幅広い世代による需要が一層下支えすると読む。

  「化粧品や食べ物は体内に蓄積される。日ごろのケアをしている人としていない人との差は後々ぐーんと出てくる」と美和子さん。「高級化粧品は期待を裏切らない」と力説する。一段と購買意欲が減退するなか、高級化粧品の消費は永遠の乙女たちが持ち続ける飽くなき美への追求心によって支えられている。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 白木 真紀 Maki Shiraki mshiraki1@bloomberg.net